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親友が天使すぎる件について。

私の親友は天使だと思う。


いきなり何を言ってるんだとお思いだろうが、コレはまぎれも無い事実だ。

と言っても、流石に背中に羽を背負ってたり頭に輪っかが付いているわけでは無いし、当然空は飛ばない。

そういう意味では彼女はちゃんと人間だ。


ただ、見た目も中身も本当に純粋で綺麗なのだ。



初めて会ったのは幼稚園の教室だった。

私の通っていた幼稚園は3年制の2クラスしかない小規模なものでつまり、年中の教室の中はほとんどみんな顔見知り、だった。

去年別のクラスの子でもなんとなく顔は知ってるものだ。


春休みが終わって新しい教室の中、お友達の顔を見つけてはみんなでおしゃべりに盛り上がる。

そんな中、彼女は教室の隅にポツンと1人で立っていた。


ふわふわの金茶に輝く長い髪。

きめが細かく真っ白な肌は光輝くよう。

くっきり二重の大きな瞳は琥珀色で長い睫毛にびっしりと縁取られている(昔母さんが爪楊枝乗せて遊んでいたっけ)。すっと通った鼻筋にピンク色の唇は少し小さめだけどプルンとしていて果物みたいだと思う。

顔立ちはまるでビスクドールのように整っていて、実際、お人形さんが立っているのかと思ったくらいだ。

そうじゃ無いとわかったのは、大きな瞳が少し潤んでいたのと、何かを探すように偶に辺りを見渡していたからだ。


見慣れない子に気づいた子達は、みんなコッソリとそっちを伺ってはコソコソと話をしてたけど、話しかける勇者は居なかった。

その後、先生が来て、始まった自己紹介で私はやっと彼女の名前を知る。


『くらしき ゆあ』


見た目通りの可愛い名前を持つ彼女は、その綺麗さとトロさでクラスで遠巻きにされ、男の子たちに意地悪されていた。

あまりにも自分たちと違っていたから、どうしていいのかわからなかったんだ。

かくゆう私も、最初は距離感をつかみかねていた1人だったけど、尊い犠牲のもと、仲良くなることができた。


ありがとう、あのとき無駄にゆあに絡んで自爆した男子諸君。

思えば「好きな子ほどいじめちゃう」という子供らしい行動の表れだったんだろうけど。

まぁ、初恋は実らないものらしいよ。


更に、お母さん同士がウマが合ったらしく、休みの日もよく会うようになり、私は無事、ゆあの「親友」というポジションを手に入れた。

お母さん、グッジョブ!


自分より小さな美少女が「みかちゃん!」と追いかけてくれる姿は充分に私の自尊心を満足させてくれた。

私にとってゆあは「親友」で「守ってあげなければいけないお姫様」だった。




それなのに、あの日。

一緒に遊びに行った公園で、ゆあは悪い大人に攫われてしまった。

どうにか無事帰ってきたけど、とても怖い目にあったゆあは、しばらく満足に笑うこともしゃべる事も出来なかった。


いつもニコニコ笑ってたゆあが、無表情でピクリとも動かずベッドに座っている姿を見たとき、とても悲しくて泣いてしまった。


一緒に居たのに。

いつもみたいに、トイレだって一緒に行けば良かった。

側から離れなければ、ゆあは連れて行かれなかったんじゃ無いかな?


それは、初めて感じた「後悔」という感情だった。


泣いて泣いて。

そうして私は決心する。

もう2度と、ゆあの顔から笑顔が消えてしまわないように。


単純な私は、まずは力をつけようとお母さんに頼み込んで、近所の空手道上に通いだした。

実践に重きをおくその道場は、厳しいことでも有名で生傷が絶えなかったけど、どうも私の性根にあっていたらしくメキメキと力をつけた。


両親には「女の子なのに」と多少嘆かれたがまぁ、気にしない。

あれから4年経った今でも楽しく道場通いは続いているし、今では師範から3本に1本は取れるようになった。

ちなみに大きな大会にはゆあが応援に来てくれるため負け知らずである。





セキュリティの関係で小学校からゆあは私立の学校に行ってしまったけれど、私たちの友情は変わらず続いている。

ありがたい。

こんな所でゆあと離れたら五体投地で泣き崩れる自信がある。


まぁ、休みの日はしょっちゅう自宅にお邪魔してるし、お兄さんとの仲も良好だ。

私に抜かりは無い。

この時ほど自分の性別が女で良かったと思うことは無いが。男だったら速やかに排除されていた危険があるのだ。怖すぎ。


ゆあ兄は私と同じかそれ以上に妹を溺愛しているのだ。

だからこそ、お兄さんとは話が合うし仲良くなれたんだけどね。

ゆあがいなかったら多分近づいて無いタイプだし。

美形ってなんか裏がありそうで苦手なんだよね……。





そうして、本日は久しぶりにゆあと2人で(・・・)お出かけなのだ。


最近、空手の大会で休みが連続して潰れてたから、本当に久しぶり。

県外の大会だったから応援にも来てもらえないし、モチベーション下がって大変だった。

直前に電話で応援してもらって持ち直したけどね。


というわけで私はいま癒しに飢えている。


邪魔する奴はぶっ潰す!な覚悟で今日の約束を取り付け、敏感に察知して付いてこようとする悪友共を振り切って待ち合わせ場所(ここ)に1人で立っているのだ。


許せ友よ。

後悔はしていないが、君を殴った拳の痛みは忘れないでおくよ。




で。


「み〜か〜ちゃ〜ん!!」


天使が自転車で颯爽と現れた。




読んでくださりありがとうございました。


と言うわけで、幼稚園からのお友達の美花ちゃん視点(皆さん覚えてましたか?笑)


と、いうか爽やか姉御系空手少女を目指すはずだったんですが……あれぇ?;^_^A

因みに外見的には黒髪ロングのポニーテールでキリッとした和風少女です。

それを踏まえた上で今回の話を読むとギャップで更に楽しめる………かも?


兄の外見に惑わされない貴重な女の子です。

ゆあちゃんが好きすぎる為、他に目が向いてないとも言いますが(笑)


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