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進級しました。②

「ゆあちゃ〜〜ん!!」

クラス替えの表を確認して新しい教室へ行くと、愛梨ちゃんが突撃してきました。

どうにか受け止めましたが、バランスを崩しそうになってちょっと慌てました。

1年生の時は同じくらいだった身長がじわじわと差がついて、今では愛梨ちゃんの方が5センチくらい大きいのです。むぅ。


「別のクラスなっちゃったよ〜。やだよぅ〜!」

肩に額をグリグリと押し付けつつ悲しそうな声で叫ぶ愛梨ちゃん。

そうなんですよね。

私は2組、で、愛梨ちゃんは3組だったんです。去年は同じだったので、初めて別のクラスになっちゃいました。


べそをかいている愛梨ちゃんは本当に悲しそうです。新しいクラスに不安なんですね、分かります。

1年、2年とどんどん明るく積極的になっていったから安心してたけど、まだ人見知り残ってたんですね〜。


「愛梨、うるさい。人のクラスきて騒ぐなよ」

ひしっと抱きついていた愛梨ちゃんの体がそんな言葉と共に引き離されました。

「あ、洸夜君。おはようございます」

呆れ顔の洸夜君は相変わらず背が高くて、同じ年なのにお兄ちゃんな感じです。

というか、周りのお兄さんポジに定着してます。


「なによ!洸夜だって、別のクラスのくせに!」

「そ、愛梨と同じ3組。だから、大人しく自分のクラス帰ろうな」

背中をとんっと叩いて促しています。

あ、回収に来たんですか。


「愛梨ちゃん、良かったですね。洸夜君が同じクラスなら心強いでしょう?」

独りじゃないなら安心です。

しかもお兄ちゃんな洸夜君と一緒なら何かとフォローしてくれそうですしね!


「陸斗はちょっと体調崩して今日は休むけど、明日は来るって言ってたから。ゆあはそれまで独りで平気か?」

少し心配そうに確認してくる洸夜君は本当にお兄ちゃんみたいですね。


「私は大丈夫ですけど、陸斗君、風邪ひいちゃったんですか?」

最近ちょっと寒かったからですかね?大丈夫でしょうか?

心配になって尋ねると、洸夜君が苦笑いしました。


「一昨日、爺さんに滝行に引っ張ってかれたんだよ。そりゃぁ〜、風邪くらいひくだろ」

「滝行って、あのお坊さんがするやつ?」

愛梨ちゃんがびっくり顔になってます。

人間って驚くと本当に口がぱかって開くんですねぇ……じゃ、無く。


「………パワフルなお爺様ですね」

思わずつぶやけば、洸夜君は肩をすくめました。

「いまだに現役で会長なんてしてるしな。俺は今回はなんとか逃げたけど、思いつきで色々ぶっこんでくるから油断できないんだよな〜」

心の底から嫌そうな顔にちょっと興味が湧いてきます。


「他にはどんなのがあったんですか?」

思わず訪ねてみれば、苦笑いと共に教えてくれました。

「チョコが食いたいとベルギーに旅立ってみたり、御来光を浴びようって富士山に引っ張って行かれたり。その都度生贄が身内から選ばれるんだけど、基本、みんな自分にいつ指名が来るのかと戦々恐々」


「え〜ベルギーチョコ、良いじゃない」

「滞在時間2時間足らずのベルギー旅行、行きたいなら代わってやるよ」

ちょっと羨ましそうな愛梨ちゃんの声は、即、叩き落とされました。

確かにそれは嫌すぎます。

だって、移動時間の方が長いじゃないですか……。


「なにが嫌って、今回の滝行、連れてかれた大半の人間が具合悪くしてるのに、80近い爺さんがピンピンしてる所だよな」

「………凄いわね」

「………お元気ですねぇ」

思わず3人で遠い目をしてしまいました。

陸斗君、御愁傷様です。


そんな事をやっていたら、始業時間近くなってました。

「やばっ、先生くるぞ」

「ゆあちゃん、また後でね〜!!」

慌ただしく去っていく2人を見送り、さて自分の席はどこかな〜と教室を見渡します。

教室入って直ぐに愛梨ちゃんに飛びつかれてたので、自分の席にすら辿り着けてなかったんですよね……。


「騒がしくて、いやぁ〜ねぇ」

「本当に。お家が知れますわね」

と、どこからかひそひそ声が聞こえました。

内緒話、にしては少し大きな声は、明らかにこちらに聞かせるため、でしょうね。


もう1度くるりと教室を見渡せば、こちらを見てクスクス笑っている女の子3人組発見しました。

茶色の髪をクルクル巻いて大きめのリボンで結んでいる目鼻立のくっきりした派手目の女の子と同じような格好をした2人(髪がまっすぐとかリボンが少し小さいとか)。


いかにもですね〜。

と、いうか、流石にお金持ち学校とはいえ、縦ロールでは無いんですね。残念です。

「ゆあちゃん、こっちおいで」

思わずぽけっと停止していると、誰かにそっと手を引かれました。


「あ、葵ちゃん。おはようございます」

ちょっと心配そうに眉をひそめている女の子は去年、同じクラスの子でした。

「ん、おはよう。……気にしちゃダメだよ?」

そう言って引っ張って行かれた先には、去年同じクラスだった子が数人集まっていました。

どうも、立ち尽くしてるのをショックを受けてとの事と心配かけたみたいです。


「大丈夫ですよ?」

口々に慰めようとしてくれる子達に笑顔を返しながら、ようやくたどり着いた席は日当たりの良さそうな窓際の特等席でした。

ぽかぽかの春の陽気に目を細めながら、少し不穏な空気にため息を押し殺します。


対人スキルあんまり高く無いんですけどね〜。

うん、頑張りましょう。












読んでいただき、ありがとうございました。

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