お受験です!②
みなさんこんにちは。
ついに受験当日を迎えました、ゆあです。
現在、一緒に来た母達と別れて、子供だけ教室へと誘導されています。
自分の名前が書かれた机に座って待っててくださいね〜って教室の扉から中に押し込まれました。
机の上におっきく名前が書かれた紙が貼られてますね。
机まで連れて行ってもらえないのは、自分の名前くらいは読めるでしょうって事ですかね?
こんな所から試されるとは、お受験、怖!
まぁ、余裕ですけどね。ひらがなですし。
あっさり自分の名前を発見して座ろうとした所で、教室の後ろで泣きそうな顔で立ち尽くしている子を見つけました。
気になって観察してると、その後も、ウロウロと歩き回っては後ろに戻るを繰り返してます。
字が読めてない……感じではありませんね。
紙を見ては無意識に唇が動いてるし。
ふわふわの茶色い髪に同色の大きな瞳。時間が経つごとに顔色が悪くなり、遂には涙が溢れそうになった所で、我慢できなくて立ち上がっちゃいました。
「ね、どうしたの?」
声をかけると、驚いた様に顔を向けられました。
泣くのを我慢していたへの字口が一瞬迷った後、動きました。
「………なまえ、ないんだ」
とたん、どうにかこらえていた涙がポロリと溢れました。
「わたし、倉敷結愛です。あなたは?」
「ぼくは、葉山陸斗」
なまえを聞くにはまず自分から、と、自己紹介しながらハンカチを押し付ければ、キョトンとしながら名前を教えてくれました。
「………ん。じゃぁ、もう一回一緒に探しましょう?」
手を引き、大体の当たりをつけて教室を歩きます。
実は、五十音順になってるので分かりやすいんですよね。
「やっぱり、ないねぇ」
「ぼく、ちゃんとよめるもん。さっきから探すけど無いんだ」
不名誉なレッテルを貼られてなるものか、とばかりに、りくと君が声をあげます。
まぁ、ひらがな読めないだなんて思われたら、嫌ですよね〜。
「うん。分かってる」
そこのプライドは大事、と肯定すれば、驚いた顔をされました。
そうなんですよね。
読めないんだろうって、意地悪そうな顔してる子、何人かいましたしね。だから、なおさら1人で頑張ろうとしてたんでしょうし。
「たぶん案内の人が間違えたんですよ。りくと君の教室、別の場所だとおもいます」
そのまま手を引いて、たまたま他の子を連れてきていた案内係のお姉さんを捕まえました。
驚いていましたが、手にした名簿を確認してもらうと、やっぱり隣の教室と間違えて連れてこられてたみたいです。
ちゃんと席まで案内するシステムに変えたほうが良いんじゃ無いですかね?これ。
なんとなく隣の教室まで一緒に行って、無事りくと君の名前を発見しました。
2人で顔を見合わせてにっこりと笑いあいます。
「ありがとう」
安心した様に自分の名前に手を置いて、りくと君はキチンと頭を下げ、お礼を言ってくれました。礼儀正しい子、ですね。良いところのお坊ちゃんでしょうか?
「どういたしまして」
礼儀正しい子は大好きです。
こっちも笑顔でキチンと頭をさげると、バイバイと手を振って自分の教室に戻りました。
良い事したら気分が良いですね。
ご機嫌で席に座れば、すぐに先生が入ってきました。
近くの子同士でお喋りしていた子達が、慌てて自分の席にキチンと座り直しています。
騒がしかった空気がピシッと引き締まった感じがしました。
なんだかドキドキしますね。
出来るだけ姿勢良く、澄ました顔で先生の話を聞きます。
「みなさん、こんにちは。今日はここに来てくれて、ありがとうございます。
先生の名前は有馬雪乃と言います」
ゆっくりと丁寧な文字で黒板に名前が書かれます。
「今日1日、一緒に過ごすのでよろしくお願いします。先生のお話をよく聞いて、指示に従ってくださいね」
にっこりと優しそうな笑顔で話す女の先生は実際にこの学校で教えている方なのでしょうか?
「では、まずは順番に名前を呼びますから、大きな声でお返事をしてください」
よく通る澄んだ声に名前を呼ばれ、次々に元気の良い声が返事をしていきます。
ピシッと手を挙げて返事を返す様子は、みんな受験対策しっかりしてるんだろうなぁ、と少し微笑ましいですね。
もちろん、私も負けずと元気良く手を挙げましたとも。
さて、最初はペーパーテストですね。
頑張ります!
読んでくださり、ありがとうございました。
受験内容等は一応調べた物をベースに作者のイメージで書いているため基本嘘っぱちです。
こんなんかな〜くらいなので、なま温かく見てくださると嬉しいです……。