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あれから。②

兄視点。短いですが。

夏休みに入った。


あの日から2ヶ月近くの時間が流れ、少しずつゆあの様子も落ち着いてきた。

帰ってきたばかりの頃は、ほんの少しの時間も1人でいることが出来ないようで、常に誰かにピタリと張り付いていたけれど……。


暗闇も不安になるらしく、夕暮れになる前からいそいそと電気をつけ、夜寝る時も消すのを嫌がった。

そうしていても悪夢に襲われるらしく、寝ながらしくしく泣いたりうなされている様子はとても可哀想で、改めて犯人に殺意が湧いた。

もし、それでゆあの不安が晴れるなら、目の前で完膚なきまでに叩きのめしてやるのに。


寝ながら泣いているゆあを抱きしめ、「そばにいるよ」「大丈夫だよ」と囁けばぎゅっとしがみついてくる。

そうして、ようやく涙が止まるゆあにホッとして眠りにつくのが僕の日課だった。



心配で学校を休む僕に、ゆあは困ったように「行っていい」と言ったけど、その瞳の奥が不安そうに揺らがなくなるまで、僕は頑なに学校に行くことを拒否した。


ゆあは、頑張り屋さんだから、自分が辛くても周りのためなら我慢しようとしてしまう。

だから、僕が気付いてあげなきゃいけないんだ。



警察の方から紹介されたカウンセリングに通うようになって、ゆあは目に見えて落ち着いてきた。

言動はかなり変だけど、その裏で気づかれないように観察している冷静な目を見て、この人ならゆあを任せて大丈夫だと思えた。

現に、外に出るのが辛そうだったゆあが、カウンセリングに行く時だけは、最初から足取りが軽かった。



それに合わせて、僕は道場に通い本格的に護身術を習うようになった。

若槻さんに紹介されたそこは、忍術の流れを組む古武術の道場で、攻守ともに優れているのが気に入っている。

年齢ではなく、ちゃんと個人のレベルを見て、難易度を決めているのにも好感が持てた。


言葉少なく、表情もあまり変わらない道場主はまだ若く、若槻さんの1つ年上の幼馴染だそう。

初日、一緒に来た若槻さんを嫌そうな顔で対応してるのを見て、苦労かけられてたんであろう過去が偲ばれた。



若槻さんとは、あれからも関係が続いている。

と、いうか、突然メールや電話が来ては、事件の概要を話し、僕の意見を聞いてくるのだ。

外部に漏らしていい話じゃないだろうし、そもそも子供の意見とか聞いて良いのか?

疑問をぶつければ「莉央様だし大丈夫」って返ってきて、微妙な顔になってしまった。

まぁ、推理ゲームみたいで楽しいから良いんだけど。



ゆあは夏休み明けには幼稚園に復帰したいと希望を持っているみたいだけど、もう少し待ったほうが良いんじゃ無いかな、と思う。

本人は気付いて無いけど、まだ、ぼぅっと無表情で固まっている時間が結構あるんだ。


カウンセリングの先生に聞いたら、自分の中で情報や感情を処理している時間だろうから、声をかけずにそっとしておくように言われた。

笑顔がふえ、落ち着いてきているように見えても、ゆあの闘いはまだ続いているんだと思う。


見守ることしか出来ないのが正直歯がゆいけど、できるだけ側にいて、伸ばされた手を繋いであげよう。

それくらいしか、僕にできることは無いから。




けど、変な飲み物にハマるのは程々にね。

味覚破壊が心配だよ、ゆあ。


夜中にふと目が覚め、眠れなくなり投稿です。

兄は心配しつつ、意外に冷静にゆあちゃんを観察してます。

そうして、自分に必要なものを着々と蓄え中。

なんか、カウンセリングの本とかも読み漁ってそうですよね、この人。


読んでくださり、ありがとうございました。

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