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人形遊びは卒業です⑧

本日2話目です。

真昼の公園でゆあが居なくなった。

僕がアスレチックで遊んでいて目を離した隙だった。


半狂乱になる母の言葉をまとめると、座っている場所から100メートルほど離れたトイレに1人で行かせたそうだ。

座っている場所から入り口は見えていたし、実際中に入っていく様子は見えたらしい。


で、他の母親たちとおしゃべりをしている所に美花ちゃんが「ゆあちゃんまぁだ?」と声をかけてきたそうだ。

その時点で、10分程。

確かに少し遅いかな?と美花ちゃんと共にトイレに向かうが、中には誰も居なかった。


その時点でも、母はどこか近くをふらふらしているんじゃないかと軽く考えていたらしい。

だって、目と鼻の先で、ゆあがトイレに行ったのはたった10分程前のことだ。

しかし、近くをざっと探し、見つからない事で段々不安が増してきた。

他の母親たちも同様だ。


とりあえず、美花ちゃん親子がその場で待機し、僕の友人の夏樹(僕を虐めてくれた愚か者だ。既に和解済みで今ではいい友人(・・)だ)の母親が僕達を呼びに来た。

正確には、コッチに来てないか確認も兼ねてだったみたいだけど。

それと同時に母は公園の管理事務所に走り子供が居なくなった旨を伝えていたらしい。


この時点でゆあがトイレに行って40分が経過していた。


母親達と合流した僕は、直ぐに警察に連絡するように主張した。

それから、カバンに入れていたタブレットを取り出し、あるアプリを立ち上げる。


公園の地図が表示され、点々と光のラインがつく。それを辿って走り出した僕は、直ぐに立ち止まることになった。

1番近くの車道に出たところで、光の点は途絶えていたのだ。


「ゆあは車で運ばれたんだ」

悔しさに唇を噛み締め、僕は誰も居ない道路を睨みつけた。






場所を家に移し、僕たちはリビングに寄り集まっていた。

パニックになっていた母は、今は薬を投与され自室のベッドの中だ。


僕の提示したGPSの痕跡を元に、誘拐の線で捜査を進めるらしい。

電話が来るかもしれないってことで、警察が器具を持ち込み電話に取り付け、数人待機している。


ソファーに座って電話を睨みつける祖父と祖母に挟まるように座っていた僕は、新たに入ってきた警察の中に知った顔を見つけて駆け寄った。


「おじさん。監視カメラ、どうだった?」

それは、夏樹の父親だった。なんと刑事だったそうだ。

ゆあが怪我した時に、夏樹を連れ親子で頭を下げに来てくれた時以来の知り合いだった。

僕をあまり子供扱いしない、貴重な人でもある。


「残念だが、それらしい人物は映っていなかったよ。犬の散歩やジョギングの人達ばかりで、不自然な人物はどこにも……」

眉間に皺を寄せる表情は険しくて、状況は良くないみたいだ。


平和な公園に監視カメラの数は少なく、辛うじて駐車場に数台と大きなウォーキングコースに数台あるだけだった。

さらにゆあが通ったと考えられる道には1台のみ。

車に乗ったとみられる地点は、木々の陰に微かに映る程度だったらしい。


「車は何台か確認できたが、これといって不自然な動きは見られなかった。あそこは一時駐車の場所になっていたようで、常時それなりの台数が出入りしているそうだ。

GPSの誤作動も考えて、他のカメラも検証中だが……」

言葉を濁す相手にため息をつきたくなる気持ちをぐっと堪える。

「僕がそれを見ることは出来ますか?」

「ご家族にも何か気づくことはないか、チェックして貰おうとデーターを持って来てはいるが」

「見せてください」




見せてもらうのはゆあがトイレに行ったとみられる時間から30分。

粗い画像に目をこらす。

散歩の老人、ジョギングしている人。犬を連れた人………。

思ったよりたくさんの人が行き交う中、僕の目は1人の男に吸い付けられた。

「ストップ!」

僕の声にパソコンを操作していた人が慌てて反応する。


「この人、切り出せますか?」

中肉中背。帽子をかぶり、学生のような服装で、大きめのリュックを持っている。

公園を超えた向こう側に私立図書館がある為、学生風の人物が居てもなんら不自然ではない。けど。


「車に乗り込む人物に彼が居ませんか?若しくは、このリュックでも良い」

真剣な僕の表情に戸惑いながらも捜査官が僕の望む映像を探し出してくれた。

木に邪魔されて見えにくいが、男が車に乗り込む姿が確かに確認できた。

カメラの隅に表示された時間を確認し、僕は詰めていた息を吐き出す。


「この男が犯人です。間違いない」

「どういうことだい?」

ざわり、とその場が騒めく。

戸惑ったような表情に再びため息をつきそうになって、どうにか飲み込む。

子供が何を言っているんだと思われてもしょうがない。

僕は確かに子供なんだから。

だけど、僕はゆあの兄で、彼女のことはなんだって知っている。


「ゆあの身長は92センチ体重は13キロ足らずです。あの子を運ぶのにトランクなんて必要ない。手足を折りたためば、このリュクでも十分入るでしょう」

そう、ゆあは同じ歳の子に比べて大分小柄なんだ。本人はとても気にしてた。


「更に男が車に乗り込んだ時間とゆあにつけていたGPSサインが消えた時間がほぼ一致します。この車に電波を妨害する何かがつけられていたと考えれば、不思議でもない」


その場のざわめきが更に大きくなる。

「まさか、そんな小さなリュックに本当に入るのか?」

どこからか聞こえたつぶやきに、今度は本当にため息をついた。

「不思議ならサイズを揃えた人形とリュックで検証でもなんでもして下さい。それよりも、車は東南方向に走り去りました。ナンバーは見えませんが、同型の車が映ってないか近隣の監視カメラのチェックをしていただけませんか?」


どうして大人って目の前の現実を見ることができないんだ?

苛立ちに吐き棄てると、場の空気がピリッと尖ったのを感じた。

子供にバカにされたとでも言いたいのか?

睨み返した僕の肩を宥めるように叩いたのは隣にいた祖父で、声をあげたのは夏樹の父さんだった。


「確かに、彼の言うことは筋が通っている。検証は後で良い。今、小さな女の子が攫われて命の危機に瀕しているかもしれないんだ。可能性があるなら、どんな情報でも追え!手遅れになって冷たい骸を抱きたいのか!」


ビシリと気合の入った声に、険悪になりかけた空気が動き出す。

「莉央君も貴重な意見をありがとう。他に、何か思いつくことはあるかい?」

反して、穏やかな声かけに、僕は無意識に入っていた力が肩から抜けるのを感じた。


そうだ。落ち着こう。

無駄な力が入っていたら頭がしっかりと働かない。

ゆあをこの手に取り戻すんだ。


「ゆあが攫われて車に乗り込むまで15分足らずです。犯人はゆあに付きまとい機会を狙っていたと考えるのが妥当です。これは、計画的犯罪だと思います。

だけど、うちは一般的な家庭……いえ、父親がいない分、収入的にはもっと落ちるでしょう。身代金目当てとは考えられない。

又、子供を攫ってまで晴らそうとするほど恨みを買った覚えもありません。

これはゆあ本人が欲しくての犯行だと思います。」


淡々と話す僕を見る大人たちの目が、唖然としていくのが分かるがそんなこと構っていられない。


自分の思考回路の中に集中していく。

考えろ。犯人はどんな人物だ?何を狙っている?


「ここ近年で子供の行方不明者。見た目の良い10歳以下の女の子で構いません。出来れば未解決のものを。この街を中心に範囲を広げていってください」


「………なぜ?」

問いかけに機械的に答える。


「犯人は計画的で慎重。車の件からも考えて協力者が居て、恐らく金も持っている。

ゆあ本人目当てと仮定して、小児性愛者でしょう。慣れた手口を感じさせる事からコレが初めての犯行とは思えません。必ず似たような犯罪を犯している。

近隣というのは、ゆあは別にアイドルなど目立った活動をしているわけでもない普通の子供です。目をつけるなら、初めは偶然見つけたと考えるのが妥当だ。最近我が家が遠方にでかけたことはありません。という事は日常の行動範囲の中で目をつけられた、と考えるのが自然でしょう」


頭の中に浮かび上がる考えをそのまま口に出していく。

ふと、不自然な沈黙を感じ、いつの間にか閉じていた目を開けば、祖父母を含めて愕然とした表情の大人達がじっと僕を見つめていた。

その視線に肩をすくめてみせる。


「勿論、僕の推論で根拠はありません。 が、性犯罪者は繰り返すと言います。調べてみる価値はあると思います」


伸ばした線のどれか1つでもゆあに繋がれば良い。そのためには可能性の芽はいくつあっても良いはずだ。







気を取り直したらしい大人達がバタバタと動き出すのを確認して、僕は自室へと移動した。

ベッドに腰掛けると、ゆあの笑顔が目に浮かぶ。つい数時間前まで、僕のそばにいたのに。


現時点で出来ることは全てした。

後は……。


「ゆあ。花の秘密に気づいて、なんとか電波が繋がる場所に出してくれ。そうすれば、きっと迎えに行ってやるから」

膝の上に置いたタブレットを握りしめる。


アプリの地図はなんの反応も示さず沈黙したままだ。




視点がお兄ちゃんになってから筆が進む進む(笑)。

まぁ、無理やり感etcはスルーでお願いします。


コレは物語。お兄ちゃんはチートを合言葉で1つm(_ _)m



読んでくださりありがとうございました。

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