転生したらネグレクトされてました②
虐待描写があります。
苦手な方は引き返して下さい。
押入れの中からこんにちは。
気が付いていたら赤ちゃんから人生やり直ししてるゆあです。
本日1歳になりました。
ちなみにフルネームは倉敷結愛でした。
泡姫とかじゃなくて、マジで良かったです。だってつけそうな母親なんだもん。キラキラしてる読めない名前。
ただでさえネグレクトされてて人生ハードモード気味なのにこれ以上の重しはノーセンキューです。
正確に言えば結愛もぶった切りで読みにくいかもですが、まあ私的にはセーフの範囲内ってことで。
あ、兄の名前もようやく分かりました。
倉敷莉央です。
ちょっと女の子っぽいけど、これもまぁ、ありな範囲じゃないでしょうか?
成長とともにゴツくなったら微妙ですが、我が兄はこのまま美青年になっていきそうな未来がヒシヒシと感じられるので大丈夫でしょう。
随分判明が遅かったなって思うでしょ?
しょうがないんです。名前って呼んでもらわないと分からないじゃないですか。
母親、なかなか兄の事名前で呼んでくれなくって。
「ねえ」とか、「ちょっと」とか。
本当にあの人、母親失格だと思います。
自分でつけた名前くらいちゃんと呼べと、小一時間ほど説教してやりたい。
ちなみに、ハイハイで自力移動出来るようになって、たまたま見つけた保健所からのお知らせで名前は判明しました。泣ける。
そうそう、自力移動!出来るようになりました!!
3ヶ月の寝返りを皮切りに5ヶ月でハイハイ、7ヶ月で掴まり立ち、そして9ヶ月には歩きましたよ。
日々、血の滲むような特訓の成果です。
なかなかのハイペースだと思いませんか?
私、頑張りました。
現在、自主的にトイレトレーニングしてます。だいぶ失敗も減りましたよ。
モコモコの紙パンツを脱ぐのに手間取っちゃうんですよね。
まだ、うまく指先などの末端が動かないから大変なんです。
早く普通のおパンツ欲しいです。
しかし、お腹減りました。
「に〜、みゆく」
私を膝の間に抱えるように抱っこしてくれていた兄に小さな声で主張してみると「しぃ〜」と言いながらも哺乳瓶を渡されました。
ちゃんと保温用の袋に入っていたらしくほんのり温かく、うまうまです。
薄暗い押入れの中は、狭いながらどうにか子供2人がくっついて寝れるくらいはあり、下には布団が敷き詰めてあります。
飲み物やパンなどの軽食もあるので、意外と居心地は良く、ちょっと秘密基地ゴッコをしてる気分です。
まぁ、自主的に入り込んでるわけではないし、動いたり、大きな声で喋るのも禁止されてるので、楽しいかと言われれば微妙なんですけどね。
そう。
現在兄とわたしは押入れの中に閉じ込められてるのです。
耳をすませば、母親の声と知らない男の声がリビングの方から聞こえます。
今彼とお家デートだそうですよ?
今彼には私達の存在は秘密らしく、押入れの中に隠されました。
夜に赤ちゃんと幼児を外に出すわけにもいかないし、妥当な線でしょう。
あ、ちなみに我が家の間取りはちょっと広めの1LDKです。
今はリビングで夜ごはん食べてるけど、そのうちベッドへなだれ込んでくるのは明白です。
人様のアッハンウッフンな声なんて聞きたくないので、お腹が満たされたらサッサと寝るに限ります。
幸い眠りが深いタチなので、一度寝たら多少のことでは起きません。過去で実践済みなので安心です。毎回気づいたら朝でしたとも。
あ、ちなみに毎回のように男の人が違います。顔は見たことないけど、声でですね?
結構大変なんですけどね。
お家デートされると。
何しろ夕方から始まってお酒飲んでの夜の運動となると、次の朝はかなり遅くまで寝てますから。
半日近く押入れの中でジッとしとくとか、どんな無理ゲーですか。普通の赤ちゃんなら泣きますよ?即アウトです。
しかし、我が家にその不自然さを気付く人間は居ません。
母親はコッチに興味ないし、兄は世間を知らない幼児ですしね。
幼児に諌められて大人しく理解する0歳児(しかも会話もできるよ!)とか、はたから見たらきっと不気味なんだろうな……。
だけど、普通の赤ちゃんならきっといろいろ即アウトだったと思うので、多分これで良いんです。
少なくとも兄はいっぱい褒めてくれるので満足です。
しかし、まさか1歳の誕生日が押入れの中とは……。
ケーキ用意しろとまでは言いませんが、なんだかなぁ、ですよ。
まぁ、成長と共に出来ることが増えてくるのでOKです。
兄に面倒ばかりかけてらんないですからね。
「飲んだ?パンも食べる?」
空になった哺乳瓶を手で転がしながら考え事してたら、兄が小さな声で耳元で囁いてきました。
まだ、隣にいるし、お酒も入ってるだろうからそんなに警戒しなくても大丈夫だとは思うんですけどね。
兄は押入れの中に入れられたら、殆ど身動きしようとしなし、わたしが動くのもイヤがります。………怖がる、が正しいのかな?
母親が昔からこういう事をしていたのなら、わたしと違って本当に幼かった兄は、もしかしたら騒いだりしてひどい目にあった事があるのかもしれません。
胸が痛みます。
「ん〜ん、ににのよ?」
首を振っていらないと伝え、食べるように促します。
前世でも結婚してなかったし、身近に子供いなかったから良くわかんないけど、兄は歳の割に小柄だと思うんです。
何しろあの人、男にご飯作るとき以外、基本料理しないからね。
食事はパンかレトルトかお弁当の3択。栄養偏っちゃいます。
わたしは今の所粉ミルクで栄養補充出来てるから良いんですが、兄が、ねぇ。
早くもっと大きくなってご飯作ってあげたいな。過去のわたしの数少ない特技が料理だったんですよね。
バランスのとれた食生活は人間としてとっても大事だと思うんです。
まだまだ小さな手をニギニギして確認。
待っててね、兄よ。
あとすこし大きくなったら、美味しいご飯を作って見せるからね!
ファイト、お〜!
と拳を振り上げたら兄から「大人しくしてよ」と諌められました。
すみません。
読んでくださり、ありがとうございました。