お人形遊びは卒業です①
「………ねえ、美花ちゃん」
「なぁに?ゆあちゃん」
「………おままごと、飽きました」
のっけからすみません。
只今、お姫様の人形片手に、絶賛おままごと中のゆあです。
お友達になった美花ちゃんとは、毎日幼稚園で仲良く遊ぶ仲です。
そう。毎日毎日おままごと。
お人形片手に、今日もお姫様のお茶会に参加中です。
なんで、子供ってこう繰り返しに強いんですかね。
それを抜きにしても、中身アラサー女がおままごとで、お嬢様言葉使いながらお人形を操ってる姿は………痛い。
側からそうは見えなくても、私の心が痛いです。
たまになら、ね。まだ良いんですよ?
付き合いますとも。結構斬新な設定が出てきて、面白かったりしますしね。
だけど、ですね。
1回ハマると子供って、飽きずに何度でも繰り返せる生き物なんですよ。
もう、その集中力たるや素直に感心しますとも。だから、このおままごとループから解放してください。
「お姫さま、嫌だった?メイドさん、する?それとも王子様?」
「いえ、しょうじゃなくて」
一緒に遊んでた他の女の子達も気を使って配役チェンジを申し出てくれますが、問題はそこじゃないんです。
「昨日もその前も、ずぅ〜っとおままごとでした。ソロソロ他の遊びもしたいでしゅ」
遠慮してて言えませんでしたが、今日こそ頑張ります。
何しろ、昨日一昨日と言いましたがこの1週続いてるんですよ。
もう勘弁してください。
私のライフは0です。
「う〜ん、でも鬼ごっことかだと、ゆあちゃん走るの遅いからすぐ捕まって楽しくないでしょ?」
困り顔の美花ちゃん。
おう。おままごとの嵐はまさかの私対応でした。なんか、すみません。
確かに、私、トロいんですよね〜。
小さな手足でちまちまと動く様は可愛いのでしょうが、なんか鈍臭い。
「………じゃぁ、かくれんぼ」
コレなら、足の速さは関係ないし、どうでしょう?
「いいね!やろ!」
無事、皆さんの賛同を得て、どうにかおままごとから脱出です。
「「「じゃぁん、けん、ぽんっ!」」」
「と、いうわけで、ジョギングでしゅ!」
学校から帰ってきた兄を捕まえて、高らかに宣言です。
いくら周りが温かく見守ってくれてるからって、それに甘んじてはいけないと思うのですよ。
このちんまいポヨポヨした体だって、鍛えればもう少し素早く動けるはずです。
て、いうか、中身アラサーな大人としては、ぬ幼児に気を使われるのもかなり辛いので……。
でも、1人で出かけるのは禁止されているので、兄を巻き込むのです。
目指せ、かけっこ1番!まではいかなくても、せめて鬼ごっこでみんなに気を使わせずちゃんと捕まえられるようになりたい!
だれですか、志が低いって言ったのは!
「う〜ん、じゃあ、おうちの周りをちょっとだけ走ってみる?」
「はいっ」
さすが兄は付き合い良いです。
いそいそと靴を履き、いざ出陣!
………で、結論です。
この身体、ダメダメです。
勢い良かったのは最初だけ。
100メートルくらいですでに息切れが始まり、おうちの周りの区画を一周しただけでヘロヘロになりました。
いくらなんでも、体力なさ過ぎでしょう。
ちなみに兄は背後を早歩きくらいで着いてきてました。泣ける。
「ゆあ?大丈夫?」
玄関に座り込んでしまった私を兄がお家の中まで運んでくれました。
「ほら、これ飲んで?」
冷たいりんごジュースを持ってきてくれる優しが痛い。
不甲斐なさに思わずベソをかいた私の頭を、兄が優しく撫でてくれます。
「毎日頑張れば速くなるよ。それとも、もう嫌になった?」
……そうですよね。
千里の道も一歩から。
今日はまだ1歩目なのです。諦めるには早すぎますよね!
「がんばりゅ!」
拳を握りしめて、もう一度高らかに宣言です!
「よかった。じゃあ、明日から少し早起きして頑張ろうね」
ニッコリ笑顔の提案に、ちょっと止まります。
あ……朝なんですね。
そうですよね。
放課後は兄だって忙しいし、今日はたまたま早く帰ってきたから付き合ってもらえましたけど、毎日やろうとすれば、朝が確実ですよね。
……朝、弱いんですけどね。
ちょっとお布団と仲良しすぎてですね。なかなかお別れできないんですよね……。
「ゆあ?」
固まる私に不思議顏の兄。
いや、やります。やりますとも。
体力つけて、みんなと楽しく遊ぶんです。
頑張るぞ、お〜〜!!
次の日から、地獄の特訓が始まりました。
……兄、意外に熱血だったんですね〜(泣)
読んでくださり、ありがとうございました。
朝は近くの公園でクルクルそれぞれのペースで走ってます。ゆあに付き合うと兄、散歩にしかならないので(笑)
小さな児童公園なので別々に走っても目が届いて安心。
ゆあよりも兄のスペックが上がる方が早そうな気もしますけどね〜。