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夏のバカンスは南の島で⑧

肝試しで楽しく悲鳴をあげつつ堪能していたら、その様子をみんなに観察されていたようで、なんでかゴール地点で呆れた目を向けられた結愛です。

なんか理不尽を感じるのは私だけでしょうか?


「あれを楽しめる人の神経が分からない」

 ちなみに芽衣子ちゃんは後半で目を回してしまってリタイアしたらしく、目を覚ましたらぷんぷん怒ってました。

まぁ、苦手な人に強制しちゃだめだよね。


「ごめんね、気絶しちゃうほど駄目だとは思わなかったんだよ」

流石に芽衣子ちゃんの様子に反省したようで、アドルフォさんがションボリしてました。

悲鳴上げて怖がるのも、楽しいものだと本気で思ってたんでしょうね。


「おかげでいいデーターが取れた。非常脱出口の必要性や、人によって怖さのレベルが選べるアイデアは面白いし参考にさせてもらう」


 真面目な顔でパチパチとパソコンに何か打ち込んでいる人でなしさんがいますね。

 芽衣子ちゃんが射殺しそうな目で睨んでますが、いいんでしょうか?


とりあえず。言いたいことを言ってみましょう。

データーとか言ってますし、バイトらしいですから、お仕事しないとですよね。


「序盤の聞こえるか聞こえないかの音量で追いかけてくる足音はなかなかいやらしくていい感じでした。でも、ちょっと引っ張りすぎで慣れて怖さが半減してきますね。もう少し早い段階で次の行動に移ったほうがいいです。生温かい風に腐敗臭は怖いというか、単純に気持ち悪く感じる方もいるのでダイレクトに血臭ではどうでしょうか。もしくはオーソドックスに線香の香りでも日本人なら感じるものがあるかもしれませんね。音と光の演出は個人的にはもう少し控えめの方が好きです。あまり騒々しいと、せっかくの廃病院の薄暗い雰囲気が台無しなので。同じ格好の方が次々に不意打ちで出てくるのは単純に怖くていいです。逃げたと思ったら先回り、は王道ですよね。ただ、キャストがゲストに触れてしまうのは、昨今のコンプライアンス的にアウトだと思うので気を付けてください。それと」

「「結愛ストップ!早くて聞き取れないし長い!」」


おや、ダブルで止められてしまいました。

「モニターアルバイトって言うから、感想と意見をせっかくまとめてたのに」

「なんでそんなに両極端なんだよ、お前らは……」


疲れたように肩を落としてため息をつくレオの姿に、なんだかサラリーマンの悲哀を感じます。

そういえば、昼間に私たちが遊んでいる間も、これの調整のためにちょこちょこ抜けていたんでしたっけ。


「とりあえず、遅い時間になったしそろそろ解散しようか。昼間はたっぷり海でも遊んだし、今日は疲れただろう?」


パン、と手を叩くとアドルフォさんが解散を口にしました。

確かに、なんだか頭がぼんやりしますね。


興奮してて忘れてましたが、ソロソロ12時近いです。

お家なら、もうとっくに寝てる時間ですね。


自覚したらとたんに眠気がこみ上げてきて、クワッとあくびがでました。


「そうだね。明日も予定が詰まってるみたいだし今日は解散しよう」

兄の一声でみんなぞろぞろと部屋を出ました。


宿まで大した距離ではないのですが、社の外には車が待機していたので、ありがたく使わせてもらいましょう。


ゆっくりと山道を下っていく車の中でもう一つあくびを落としたのが、私の本日最後の記憶でした。







パチリと目が覚めました。


昨晩はどうやら車の中で寝落ちしてしまったようですが、おそらく兄が運んでくれたでしょうから無問題(もうまんたい)です。 


カーテンの隙間から光が射してますね。

時計を見ると、いつも起きる時間(5時)でした。

ねむるのが多少遅くなっても、人間の体はいつもの行動をとろうとするのですね。


大きなベッドには私以外の3人も並んで転がっています。

大の字になっている美香ちゃん。愛梨ちゃんはまっすぐ上を向いて一文字。反対に横向きに小さく丸まっているのが芽衣子ちゃん。

寝姿にもそれぞれ個性が出て、面白いですね。


そうッとみんなを起こさないようにベッドを抜け出すと、静かに洗面所に移動します。

静かに朝の身支度を整えたら、用意していた服を着てこっそり部屋を出ました。


せっかくいつもの時間に起きたのですから、いつも通り朝のジョギングにでかけようと思います。


キッチンの方ではすでにスタッフの方が朝食の用意を始めていたので、一声かけたら、お勧めのジョギングコースを教えてもらいました。


なんと昨晩肝試しのゴールに使ったお社は中宮にあたるらしく、横の道を登っていくと頂上には上宮があるそうです。


そこは海から朝日が昇る様子が見える絶景スポットになっているそうで、今からならちょうど間に合うのではないかとの事。


これは行くしかありません。


外に出たら、空が曙に染まっている所で、急いで出発します。


同じ道でも夜と朝焼けの中ではずいぶんと雰囲気が違いますね。

廃病院を飾っていた鬱蒼とした蔦も、朝の光の中で見ると生き生きとした緑が美しいです。


「素敵な朝ですね」

軽く汗ばむ程度のスピードで順調に走り続けます。


幼い頃に始めたジョギングは、今ではなかなかのスピードで走れるようになりました。

継続は力なり、ですね。


そのうちフルマラソンに挑戦してみるか、なんて兄と笑っていたりします。


緑の中に作られた、ゆるやかな坂を上ると頂上に到着しました。

ポカリと開いた土地に、小さなお社が一つ。


そして、そこから見えた大自然の風景に息をのみました。


何処までも続く海原。

その水平線の向こうから、太陽がジワリと顔を出しました。


夜から朝へ。

鮮やかに変わっていくその美しさをどんな言葉で表したらいいのか……。


私の貧相な語彙力ではとても描き切れそうになくて、ただただ息をするのも忘れて見惚れました。


「あぁ、夜が明けました」

 どれくらいの間見惚れていたのか。

 やがて上った太陽が明るく世界を照らし始めたころ、私はようやく動くことを思いだしました。


「明日はぜひみんなを誘いましょう」

一人で見るにはあまりにも勿体ない自然の美しいショー。

この感動をぜひみんなで分かち合う事を決意して踵を返したところで、お社が目に入りました。


中宮に比べてチョコンと小さなお社。

そういえば、朝日に間に合う事に夢中で、まだ手を合わせていませんでした。


「これはいけません。ご挨拶をしなければ」

敷地に入らせていただいたのに、ご挨拶もしないとか失礼にもほどがあるでしょう。


私は、お社に手を合わせるべく、いそいそと足を進めるのでした。

読んでくださり、ありがとうございました。


結愛ちゃんの肝試し解説が描いててちょっと楽しかったです。

きっと息継ぎなしでワーッと話したに違いありません(笑)

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