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夏のバカンスは南の島で⑤

「肝試し、ですか?」

「そう。夏の定番でしょ?」


皆さんこんばんわ

とれたて海産物満載の夕食を終え、満腹のお腹を抱えてまったりしていたら、突然イベントをブッ込まれ、困惑中の結愛です。


「すぐそばの裏山におあつらえ向きの廃病院があってね。元々村営の病院で外部から先生派遣してもらってたんだけど、来てくれる人がいなくなって。その内誰か来るだろうっていってるうちに、村も無くなっちゃったから、病院の機材諸々も当時のまま残ってるから、なかなか良い感じだとおもうんだ」


ニコニコ笑顔のアドルフォさんに、みんなで顔を見合わせます。


「それって不法侵入になるんじゃ?」

洸夜君がみんなを代表して聞いてくれました。

ですよね。

よく、廃墟探索動画〜とかしてるの見ますが、たとえ廃墟でも勝手に入るのダメだった気が……。


「大丈夫だ。島内の建物の所有権も当然移してある。自分の家を探検しても怒られる事はないだろう?」

クスリと笑いながら、レオが答えました。


「一応、スタッフと共に日中に確認してあるから危険性もない。迷いそうな場所や危ない所は封鎖してるから、安心して楽しんできてくれ」

「レオ、途中で姿消したと思ったら、そんなことしてたのか?」

さらなる補足に、兄が呆れたような顔をしてますね。


そういえば、レオってアドルフォさんの護衛みたいな立場でもあるって、前に言ってましたから、ここにいるのも半分お仕事みたいなものなのでしょうか?


「あのぉ……、私、お化け苦手なんで、パスしたいんだけど……」

そろりと手を挙げたのは芽衣子ちゃん。


「病院内だけだと距離的に短いから、病院を一周した後裏口から出て、小道を登った先にある社がゴールだ」

そんな芽衣子ちゃんを無視して、レオが淡々と説明を続けます。けど、あえて芽衣子ちゃんの方を見ないようにしてませんか、あれ?


「一応、ルートに沿って足元に誘導灯を置くようにしてるから、迷う心配はないだろう」

 さらに、ざっくりとした見取り図の描かれた地図まで配られた辺りで、美香ちゃんが楽しそうに笑い出した。


「つまり、これもモニターの一部ってわけですね?先輩!」

「そういう事だ。拒否権はないからあきらめろ芽衣子」

ひらひらと地図を振って意地の悪い顔で笑うレオは、完全に悪役ですね。

芽衣子ちゃんが若干涙目です。


「フィールド型のお化け屋敷、みたいなものなのかな?すごいね」

「まぁ、いわゆるオプションツアーの予定だよ。楽しそうでしょう?まだ加工はしてないから、そこまでおどろおどろしい感じじゃないから、どんなに怖くはないよ?」

興味深そうに渡された紙を覗き込む陸人君に、アドルフォさんが答えてます。


「もともとあった病院のままってことですか?」

「そう。まぁ、それだけだと面白くないだろうから、急遽配置を変えたり、小道具を足したりしたけどね」

楽しそうな笑顔に確信しました。

これ、絶対お化け役の人がいるやつですよ。

下手な仕掛けよりも、マンパワーの方が、怖いと思うんですけど、気のせいですかね?


「じゃあ、くじ引いてペアと出発順番を決めよう。誰が最初かな?」

 差し出されたのはコップに刺さった木の棒でした。


「ベタですね」

「こうゆうのは様式美だろう」

 思わずこぼれた声に、少しぶぜんとした返事が返ってきました。

「なるほど、レオの趣味ですか」

「さっさと引け」


ついニンマリと笑えば、無言でズイッとコップを差し出されたので、素直に引いておきましょう。

「4番ですね」

「じゃ、僕とだね」

棒の先に描かれた番号を読み上げると、先にひいていたらしい陸人君が声をあげました。


「よろしく」

「はい。頼りにしてます」

にこりと笑いあうと、後ろから衝撃が。


「うぅ~~~。行きたくないよう」

振り返ると、芽衣子ちゃんが張り付いていました。

あらら。はじめる前から涙目ですね。


「何番だったのですか?」

ポンポンと慰めるように頭を撫でながら首を傾げると、呆れた顔の兄が肩をすくめます。

「トップバッターだよ。僕とね」


「兄となら、最悪目をつぶっていれば手を引いてゴールまで連れて行ってくれますよ」

「それは、肝試しの趣旨としてはどうなんだろう?」

苦笑してますが、きっと動けなくなったら運んであげるんでしょうね。

安心安心。


「最初が嫌なら、順番交代しますか?」

ふと思いついて聞いてみたら、高速で首を横に振られてしまいました。

「待ってる時間も怖いし、最後ってなんかいや~~」

まぁ、そうですよね。

お化け屋敷って、中から聞こえてくる悲鳴聞いているだけで怖くなったりしますし。


「結愛ちゃんは、平気なんだ?」

陸人君が意外そうな顔をしていますが、なんでですか?

と、言うか、陸人君だけじゃなくてみんな似たような顔をしてますね。

さすがに、兄や昔を知っている芽衣子ちゃんとレオは別ですが。


「本物の心霊スポットに行こうとは思いませんが、お化け屋敷は意外と好きですよ?脅かしてやろうという心意気を感じますから」

「楽しみ方の視点がおかしい」

首を傾げると、洸夜君が噴き出しました。失礼ですね。


「ちゃんと怖がりますよ?礼儀ですからね!」

さっきのくじではないけれど、様式美は大事です。

そして、お化け屋敷は怖がるために入るのですから、きちんと怖がりますよ?

最近のお化け屋敷は凝っているので本当に怖いですしね。


「前に近所に期間限定のバーチャル型のお化け屋敷行った時も、さんざん大騒ぎした後、外に出たら真剣に検証してたな、そういえば」

「なにそれ?!」

「どうしてそうなるの?」

ぼそりと呟いた夏樹君の言葉に美香ちゃんたちまで笑ってますね。


涙目だった芽衣子ちゃんも、何を思い出したのか笑い出したので良しとしましょう。



読んでくださり、ありがとうございます。


結愛ちゃん、少しずれてます。

怖いんだけど、それも楽しい、て感じですね。

まあ、お化け屋敷の醍醐味だと思うのですよ。

その後、検証しちゃうのはどうかと思いますが。

「お化け屋敷は心理戦だ!」

とかつてカウンセリングを受けていた先生の教え(笑)を忠実に受け継いだ結果です。

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