転生者たちの宴~男の子も内緒話はするよね
前作でレオ君のフォローをと書いていたので急遽
生まれた時から当たり前のように隣にいた存在に、どんな名前を付けたら正解だったんだろう。
答えを見つける前に唐突にもぎ取られてしまった片翼を、惜しむまま過ごした余生、だったのだと思う。
前世の記憶が戻ったのは幼少期。
自分が死ぬ原因と対面した瞬間だった。
とはいえ、物心つく前から始まった英才教育のたまものか、前世の意識が戻ったからと言ってそれに飲み込まれることもなく、ある意味自分は自分のままだった。
強いてあげるなら、生まれた時から感じていた心のどこかに開いた穴のようなものの理由を知って、「そうだったのか」と納得したくらいだろうか。
とりあえず、死ぬのはごめんなので、フラグ折るために努力して。
そのついでに、どこかで見つけられないかな……なんて、顔もわからない存在を探し求めてた。
ヒントは”攻略対象者”。
自分が、その周辺に生まれたのはきっと偶然ではないはずだ。
もっとも、多少権力を持ったとはいえ、しがない側付きの子供でしかない存在としては、そうそうゲームの舞台である外国にある一学園の内情など調べられるわけもない。
正確には、情報としては拾えた。
セキュリティー強化された学園とはいえ、それ以上の技術をもってすれば攻略はできる。
痕跡を残さないように少し手間取ったけれど、うまく潜り込んで、情報を拾えたと思う。
そして、”攻略対象者”と同姓同名の子供たちがいることが確認できたのは、7つの時だった。
ただ一人”夏八木莉央”の名前だけ、見つけられなかった。
不思議に思って、夏八木周辺の情報を探るが、現当主の前妻に男児が一人いたが離婚し、その後の情報が見つからない。
ゲームストーリー通りなら、腹違いの妹共に4つの頃には父親へ引き取られているはずなのだけど、不思議と離婚後の痕跡は見つからない。
もやっとしていると、二年後にもう一度入り込んだ学園のメインコンピューターに、苗字こそ別だが”莉央”を見つける事が出来た。
基本、途中編入不可のはずの学園へ、3年時に編入していた。
なんと中等部編入試験を受け満点をたたき出した挙句、自主的に持ち込んだとある研究レポートが高く評価されての特例措置だったようだ。
なんだ、そのハイスペック。
とにかく、ゲーム上の攻略対象者は確認できた。
残念ながらヒロインはまだ確認できていないが、そのうち見つかるだろう。
(……これで、サーヤがヒロイン転生してたら面白いんだけどな)
同じように記憶があれば絶望に叫ぶだろうし、記憶がないとしてもきっとストーリー通りのヒロインにはならないだろう。
くすくす笑っていた俺は、その時に感じた違和感をもう少し突き詰めていれば、もう少し早くサーヤと再会できたのにと後に後悔することになる。
修学旅行の異文化交流の一環でやってきていた莉央と交流ができたのは、思わぬ偶然だった。
そして、人に興味のない冷徹人間だった”莉央”の性格が、大分違っていることに驚く。
相変わらず、苗字は”夏八木”ではなく”倉敷”。どうやら母親に引き取られ、母の実家で祖父母と同居しているようだ。妹の“結愛“も一緒のようで、その口調からひどく可愛がっていることが伺え知れた。
同じように興味を示したアドルフォが詳しく話を聞き出そうとしたのだが、興味を前面に押し出し過ぎたせいで警戒されてほとんど教えてもらえなかったけど、それはそれでいやそうな顔が面白いと付きまとっていたのだからアドルフォも対外趣味悪いと思うが、まあしょうがない。
俺が生き残るためにだいぶストーリーを改変したせいか、影のあるキャラクターだったはずのアドルフォがいい意味で馬鹿っぽい陽キャラになってしまったけど、それに関しては後悔していない。
だいたい、今後一族を率いていく当主が陰気だと仕えている人間にも悪影響だと思うのだ。
そうして、運命の日。
日本に来て早々、少し目を離したすきにホテルを脱走したアドルフォの捕獲に行ったその場所に、サーヤはいた。
昔の面影は何もない(まあ、俺もあまり人の事は言えないが)色素の薄い美少女に、しかしそれがサーヤであると、なんでか一目見ただけで確信したんだ。
あまりにも突然で。
思わず取り乱したのは、完全に黒歴史だ。
おかげで、後でアドルフォに死ぬほどからかわれて大変だった。
後で落ち着いて考えてみれば、なんで”結愛”の存在を見逃していたのか不思議なくらいだ。
ただ、無意識に大きらいっだったキャラクターに、サーヤがなってほしくないという思い込みのたまものだったのだと思う。
俺もまだまだだな。
そして、なっていたらおもしろそうだと思っていた”四季原芽衣子”にはなんとサーヤの友人である広野恵梨香が入っていた。
前世では、俺とサーヤの関係が気に入らないらしく、かなり食って掛かられた記憶がある。
それを引きずっているようで、今も目の敵にされてるけど、まあ、気にしない。
小動物に吠え掛かられたところで、実害があるわけでもないしな。
「結局、レオは前世での結愛をどう思ってたんだい?」
なし崩しに巻き込まれた感のある莉央は、それでも妹可愛さゆえに俺たちの前世の関係にも巻き込まれてくれているいいやつだ。
「うん。実は言葉にするのが未だに難しくはあるんだけど……」
ズバリ問いかけられたのは、芽衣子が気絶してなし崩しになった顔合わせの後だった。
せっかく来たのだし、お茶でもと、改めて莉央の部屋に招待されたんだ。
サーヤがいなくなったあの日から、何度も自分に問いかけていた。
結論は出たようで実は出ていない。
ただ一つ言えるのは。
「側にあるのが絶対の、必要不可欠な存在、かな?当然のようにそこにあったから、亡くなった時の事なんて考えたことがなかったんだ」
だされたお茶を一口。
口に含みながら、自分の中を覗き込むようにして言葉にする。
そんな俺に、莉央はなぜかひどく幼く見える仕草でコテンと首を傾げた。
「それは、いまも?」
まっすぐに。
何の含みもなく落ちてきた言葉に、ただ俺は黙って唇を笑みの形にした。
「・・・・・・・そう」
それに何の答えを見出したのか、今度は莉央がひどく酷薄な笑みを浮かべる。
「わかった」
その後、どちらが先に沈黙を破ったのか。
どんな話をして別れたのか。
それは、永遠に秘密だ。
読んでくださりありがとうございました。
これはフォローなのでしょうか?
キャラの生い立ち?レオ君の腹黒さ?
なんか良く分からないものに・・・・・・。
まあ、莉央君の「わかった」は確実にそんなんじゃ大事な妹は任せらんないな、な「わかった」な気はします(笑)