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きみに巡り会えた幸せ②

ヒロイン(笑)視点、9/6に差し替えました第2弾。

作者の独りよがりに付き合わせてしまい、申し訳ないです。

「…………マジで?」


ポツリと唇をついてでた言葉は、次々に隣をすり抜けていく高校生達のざわめきに虚しくかき消された。





四季原芽衣子しきばるめいこ。

それが、私の名前。

17年間生きてきて、それに違和感を感じたことはなかった。


だけど。


物心つく頃には母1人子1人の母子家庭生活が唐突に終わりを告げ、どうやってゲットしたのか不明なほどハイスペックな父親が出来て。

さらに言えば、その父親が有名な私立校の理事長をやっていて「ぜひ、僕の学校に通ってくれないか?」と懇願されて。


高校3年という普通ならあり得ない時期の転校も、母親がようやく掴んだ幸せの後押しになるならと、親孝行のつもりで引き受けた。



今なら、声を大にしてあの時の自分を止める。



例え、頭の出来がそこそこ良くて途中転校というリスクを背負ったとしても希望大学に入学できる目処が立っていたからって。

例え、夢だった「良い職に就いて母親に楽させてあげる」って目標が必要なくなり、少々気が抜けていたからって。


そんな無茶振り受け入れるなって。



なぜなら。



転入初日の4月吉日。


桜の舞い散る校門に激しいデジャブを感じた瞬間襲ってきた酷い頭痛。

そして、それとともに蘇る前世の記憶達。


覚えてる。

大好きだったゲームのオープニング。

バックミュージックの幻聴までが聞こえてきそうなほど、そのままの光景に、私は悲鳴をあげた。


「なにこれ!乙女ゲー転生とか、聞いてないんだけど!?!」


そうして、そのまま脳ミソのキャパオーバーでぶっ倒れる寸前、見目麗しいイケメンの驚く顔を見た気がした。






さて、無常にも目が覚めて。

直面した現実から逃げるわけにもいかず確認作業。


まずは、脳内整理。


うん。

四季原芽衣子としての17年もちゃんと思い出せる。

思い出に付随する感情も、ちゃんとある。


そして、前世の記憶、も、しっかりあるなぁ。


さすが、ヒロインスペックの優秀な頭脳。

あんな、ドロドロの感情まで、ちゃんと飲み込んで受け入れたみたい。

残念ながら、前世の記憶が濃すぎたせいか6対4くらいで前世の意識が微妙に強いみたいだけど………。


なんか、ごめんなさい。


あ、でも、ちゃんと今世の母親のことを大切には思ってるし、お義父さんとも幸せになってもらいたいって、心から思ってる。


ので、引きこもるのは今回は無しの方向で。


だって、再婚直後に娘が引きこもりって、どう考えても心象よろしくないでしょう。

母さん、責任感じて離婚しちゃいそうだし。

それは、非常に困る。


でも、乙女ゲームのヒロインも………ねぇ。

そもそも、人と関わるの苦手だし、男の人嫌いだし。

愛着のあるゲームではあったけど、それを実体験したいかといえば、…………無いなぁ。


そもそも、あのゲームが好きだったのは、CGを多用した映像の美麗さもあるが、主人公の女の子の性格がどこか彼女を彷彿とさせたからだ。


そういう意味では、彼女の居なくなった後の数少ない慰めの1つではあった。

もともと好きだったけど、さらに執拗に周回しまくったせいで、どのルートもコンプリートしてるどころか記憶にしっかりと残ってる。


芽衣子と同化してしまった今だからこそ言えるが、かなり病的だった。

我が記憶ながらドン引きするレベルで。





「………どうしよう、かなぁ」


パソコンの前に座り込んだまま、ため息が溢れる。

画面の中では、見目麗しい生徒会の皆様がニッコリと非常に見覚えのある笑顔を浮かべていた。

2次元を3次元に持ってきたらこんな感じだわ、ねえ。


あ、盗撮とかじゃ無いよ?

学園のホームページにガッツリ、アップされてただけで。

こんな生徒がいるって知ったら、世の女の子達は頑張って勉強して少ない席を取り合うことだろう。

この少子化社会の中、学園側はよく分かっていらっしゃる。


『分かってるなら、助けてあげたらいいじゃない』

心のどこかから湧き上がる想い、に、キュッと眉をしかめる。主に、反感の意味で。


「………だって、めんどくさいし」

人の人生の転機に関わるなんて、絶対に面倒ごともセットになってくるに決まってる。


『でも、「彼女」だったら、きっと………』

そこを突かれると、痛い。

私の眉がへにょりと下がる。

それは、昔からの私の判断基準の1つではあった。


けど。

芽衣子と同化していなければ、決して実行に移すなんてしなかったと思う。


だって、基本、身内以外はどうでもいい人だったし、「キャラクター」としてはよく知っていたけれど、現実の彼らは、まだ、会ってもいない人達だったから。


『芽衣子りょうしん』の声に耐えられず、諸手を挙げて降参したのはすぐの事。


「分かったよ!やるだけ、やってはみるから。でも、結果は期待しないでよ?!」





そうして、自分なりに頑張ってみたんだけれども。


「ダメじゃん、わたし」


人気のない裏庭で、がっくりと項垂れる。

自分の引きこもりの原因甘くみてた。

もともと欠如してたコミュニケーション能力は、引きこもっているうちにさらに退化していたようで。


まだ、メールや電話でのやり取りなら問題ないんだよ。だけど、面と向かってなんて……。

しかも相手は攻略対象者イケメン………。


固まる。赤くなる。吃る。滲む視界に、全力ダッシュでもした後のようにドコドコと胸を打つ鼓動。

こんなんで、会話が出来るわけはない。


それでも逃げ出さないでいられたのは、確実に『芽衣子』パーツのおかげだ。

なんで、私が主で統合しちゃったの?!

どう考えてもあっちの方がメインの方がまともに生きていけたはずなのに!!


恨み言はついて出るけど、自分に恨み言ぶつけたって虚しいだけだ。




それでも、頑張ったなりに情報は集まるもので。

「なんか、みんなトラウマ持ってなくない?」

1週間もあがけば、攻略対象者達の性格が、なんだかゲームとは違っていることが分かってくる。


そもそも、環境自体が違ってるキャラもいるし。

自分のミスで殺してしまう幼馴染が生き延びてたり、父方に引き取られてるはずが、母方の祖父母宅でのんびり仲良く暮らしてたり。


「…………これは、頑張って大元の1つに突撃してみようかな?」


どうにも残る違和感に、私なりの博打行為を決意した。

あの時の決断を下した自分を今後とも私は褒め称え続けるだろう。


何故なら。




「あなた、エリーだよね?広野恵梨香」




顔が違う。声が違う。


でも、同じ発音で、同じ笑顔で、私を呼んでくれる「彼女」にもう一度巡り会えた、から。


最後の願いが、叶ったから。









「もう一度だけでも、名前を呼んで」








読んでくださり、ありがとうございました。


差し替え前のものとは、だいぶ別人、でしょうか?

あまり変わらない?あれ?


現世でヤンデレ臭が薄いのは、真っ当に生きた17年分の記憶もあるからです。

前の人生と今の人生は別物だとちゃんと認識しているので。

でも、性格はチョット違います、みたいな。


「ビクビク」モードが終了して友人認定した後の性格は、前世の記憶が戻る前の芽衣子ちゃんなまんまなので、家族は気づいておりません(笑

家族に「ビクビク」する必要はないですから。


と、いう設定。



まぁ、今後は(莉央君にビクビクしつつ)仲良くやっていくことでしょう。

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