表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

裸で異世界行きました。

掲載日:2015/07/29

お風呂の引き戸を開けたら、そこは3Dダンジョンでした。

夢だと思う。

良い気分で辺りを見回す。

洞窟風の壁自体が柔らかく光っている。

洞窟の中なのに、暗闇ということもない。

「あるあるある、ないし」

私は笑顔で先を踏み出す。

いつもやってる3DダンジョンRPGにそっくりだ。

私の好きな雰囲気や壁の感じが同じだ。

そのキャラクターも大好きだ。

ダンジョンとキャラクターで総合満点のゲームだった。

「好きだー! ダンジョン!」

どうせ夢の中だ。遠慮なく叫んだ。

一本道が続く。

ゲームの中と同じように、壁の方を見ながら蟹歩きをする。

ゴツゴツした洞窟の感じ。茶色の土がボンヤリ光る感じ。

私は息を荒くしながら壁を撫で回した。

パラパラと表面の土が少し落ちるけど、中は石?なのかな。固い。

蟹歩きで移動しながら壁を丹念に撫で回す。

こんなリアルな夢は二度と見られない。

天井を見上げると私の身長の2倍くらいの高さの天井がある。

ひとつなぎだから天井も同じだけど、天井も触りたかった。

蟹歩きを続けていると、最初の店に着いたみたいだ。

横を見ると壁を半円に大きく切り抜いたみたいな所があった。

カウンターがあって、真っ赤なターバンを巻いた人が立っている。

ということは、

「ここ、初心者の洞窟だぁっー!! うわーい」

手をバタつかせながらカウンターに飛びつく。

「ぎぇあー!! 裸ー!」

カウンターに立っていた雑貨屋のお兄さんはピョーンと飛び上がった。

「薬草くっださーい」

可愛く手を差しだす。

ここ、初心者の洞窟の雑貨屋はお試しで薬草くれるはず。

「まず装備買おうよ」

雑貨屋のお兄さんは目をまん丸にして、ゲームとは違う事を言った。

「えっ、薬草くれないで装備売りつけるの?」

首をかしげる。

「いや、君ね。裸だから丸裸だから。いわゆるスッポンポンだから」

カウンター越しにお兄さんが私の体を指差した。

「まあ、ここへ来るときお風呂入ろうと思ったし。服着てるわけないじゃん」

「ここは初心者の洞窟だよ?!」

私の言葉にお兄さんが喰い気味で身を乗り出す。

「知ってますー」

フグのように頬をふくらませる。

お兄さんがカウンター越しに身を乗り出して、私の頬をつついた。

「女の子なんだから、服を着なさい」

お兄さんがカウンターの棚から革のワンピースを出して、レジ横に置いた。

100ウマー。薬草10個分の値段だ。

「いや。お金持ってないし」

私は腕を組んでそっぽを向く。

ここは譲れない。

ここは私の夢の中だから私の好きなようにする。

「ね、お兄さん。私、雑貨屋のお兄さんが好きなの。ここにサインして」

私は頬っぺたを指差した。

この優しげな雑貨屋のお兄さんは私の好みのキャラクターの一人だった。

真っ赤なターバンと垂れ目がちの優しい顔。

ちょっと長めのウェーブの黒髪。

日に焼けた肌がアラビアンチックだ。

「っと、ときめきそうになった危ない。君はまず服を着なさい」

少し顔を赤くしてお兄さんは咳払いする。

カウンターから出てきて素早く私に服を着せよう、と!

私は素早く避けた。

「100ウマーとるんでしょ?」

「おごりだから着てくれー。この革のワンピースは防御的にもバッチリなんだぞ」

「よっしゃ、おごり」

おごりと聞いて素早くワンピースを被った。

こしの革紐をキュッと締める。

雑貨屋のお兄さんはアイテムポーチも腰につけてくれる。

「このアイテムポーチも?」

「おごりだよ。もう! 君は本当にお金も持ってないし、アイテムポーチも持ってないし、服も着てないし」

ぶつぶつ言いつつ私の身支度を整えてくれる。ゲームをただプレイしてたのでは、こんな優しさわからなかった。

優しい顔がちょっとキリッとなっていてカッコイイ。

「君みたいな子供が洞窟で一人なんて危ない遊びダメだよ」

「私、大学二年生で20歳。ここは私の夢の中だから自由」

「嘘はダメ」

お兄さんはどうやら頭が固いようだ。

ガンとして私の子供扱いを崩さない。

まあ、だから色々くれるかもだし、ラッキー? かな。

「じゃあ、16歳くらいでいいや。永遠のね。あっ、この夢を満喫するから魔法の杖を一番安いやつちょうだい?」

「16歳か。じゃあまあ洞窟探検もいいのかな? 魔法の杖500ウマーです」

お兄さんは笑顔でレジを打つ。

「恋人だし、出世払いで!」

私がとびっきりのスマイルをすると、

「俺と君が? 名前もお互い知らないのに?」

またまたお兄さんが目を丸くする。

「知ってるよ。カイエンでしょ? 私は勇子。本名なんだよ。勇者みたいでしょ」

私の言葉にお兄さんはガクッとうなだれた。

「そうだった。俺の名前くらい皆知ってるか」

私に色々と振り回されるお兄さんは面白かった。だけど、ちょっと可哀想になってくる。

「困らせてごめんね。服とポーチありがとう。素手で魔法唱えるからいいや」

お兄さんの頭を背伸びして撫で撫でしてあげる。

「素手の詠唱なんて上手くいくわけが………」

「スーパーファイヤーストーム!」

ちょうど良いところに現れた魔コウモリに火を放つ。

夢の中だから何でもできる。

私は良い気分でお兄さんを振り返った。

お兄さんは唖然としている。

「何でもできるわ。私の夢の中だもの」

両親死んで頼れる親戚もいなくて。でもお金だけはあって。

そう、お風呂場で消え去ろうと思っていたの。こんな良い夢見られるなんて。はしゃいでしまうのも許してほしい。

笑う私を見て、お兄さんは何故か痛みを堪えるような顔をした。

「ねえ、勇子ちゃん。恋人の俺の為にもダンジョンで死なないで」

「もちろんよ」

私を必要としてくれる人、夢の中に見つけた。

お兄さんが私を抱きしめる。

「店じまいするから、むしろ俺も連れてって」

「もちろんよ。商人と勇者のパーティーね」

私の雰囲気から、お兄さんは何かを感じとったんだろう。

悲しみと愛はとても相性がいい、現実世界の誰かがそう言っていたのを頭の隅で思い出していた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ