転生聖女の決意
ブックマークありがとうございます!
亀更新ではありますが頑張って完結させますね!
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勇者の噂は旅立っても私の耳に届いた。
勇者の旅は、魔物とそれを率いる魔王の配下と戦いながら過去の勇者が各地に封印したという装備を集めて行くという過酷なものだった。
途中の村で身体を休めようにも
魔王の配下である魔族たちが住まう地が近ければ近いほど魔族や魔物が襲った村や魔族たちを恐れて逃げ去った人々で廃墟と化した村、魔族たちによって支配された村も少なくない数であるだろうと、噂や民たちから聞いたものからでも理解できた。
まさに心身ともに削られる旅であることに想像に難くなかった。
勇者一行の噂を聞く一方、国中の混乱や不安は以前よりも落ち着いていたが、まだ収まり切れていない為にその対応に神殿も王宮も一丸となって民のためにと、騎士を配備したり、神殿の一部を開放して民を受け入れていた。
私の存在もまた民にとっての鎮静剤のようなもので上に立つものとして、いろんな場所に慰問した。
人々の上に立ち、神殿における象徴としての立場は慣れたものとはいえ、大変忙しかった。時折体調を崩しては神官や私の世話をする修道女に無理矢理部屋に放り込まれてそこから指示を出すはめになるなんてこともあった。
そんな中でも私は勇者召喚について自ら神殿にある書架を紐解いて帰還儀式の方法や過去の勇者の歴史を調べていた。
きっと必要になる。今のうちにやっておいた方がいいと思ったのだ。
少しでも早く、由鶴を返してあげたい。そんな気持ちもあった。
そんな日々を過ごしていたある日、勇者が装備を二つ手に入れ、一度城に戻ってくる。という報せが届いた。
その報せに王は勇者一行の凱旋パレードを決行することにした。
民に魔王に対する対応策として、知らしめるため、祭りで不安を払拭させるため、いろんな思惑があってパレードの準備は行われた。
これから王都に戻って来るだろう勇者にはパレードが終わるまで旅の疲れを癒してもらう算段だ。
本当は旅立ちの時にも行われるはずだったけれど、その時は王都中の混乱があまりにも酷かった為に内々に行われて終わった。
だからこそ、このパレードには大きな意味があったのだ。
そして、ユーニスにとってその期間はチャンスだった。
この行事に私が必要なのは、最初と最後だけその日は1日縛られることになるだろうが、それ以外の日は比較的自由だろう。
そして、それは勇者である由鶴にも言えることだった。
ユーニスは会いたくて会いたくなかった、由鶴に面と向かって話して
そうして、答えを出したかった。
ユーニスが由鶴に私のことを話すかどうかを、彼の眼差しの意味を、私の思いを全てに決着をつけたかった。
これは私のただの独り善がりな考えに過ぎず。私は彼のことを全く配慮していないことに気づいていた。
私が告げることを選んだならば、彼がどんなことを思うなんて私には想像がつかない。
それもそうだろう。彼にとって、死んだ幼馴染みが実はこの世界で生まれ変わっていてその幼馴染みが自分をこの世界に連れてきた張本人。
それを教えるということだ。
その時の思いなんて、その時になって見なければ絶対にわからないし、そもそもがそんな体験、通常なら絶対にありえない
もし彼に責められるようなことがあれば甘んじて受ける覚悟だった。
私は自分のために話さないという道は選ばないと決めた。
……そのためにはそれを判断する材料が必要と考えた。ようは布石であり、私にとっての安全装置で……。
決意した今もやはり自分は臆病者だと自嘲する。
それを何にするかを前世の記憶を探って模索した。琴葉と由鶴しか知らなくて、勇者に堂々と渡せるような物が好ましい。
そう考えるがなかなかいいものは思い浮かばなかった。