魔術師の第一次転換期〜前編〜
「ふあ…あ、あぁ…」
いつも通りに起き、ベッドから降りる。シュルシュルと蔓を伸ばし、服を取って着替えた。自分の部屋から出て、朝ごはんを食べに行く。
「アルヴ、おはよう」
「おはようございます、母様」
相変わらず頭を撫で撫でするのは変わらない。そして席に着き、
「神の恵みに感謝し、いただきます」
と言って、朝ごはんを食べる。
「アルヴ様、おはようございます」
ぺこりと頭を下げたのはティナだった。
「おはよう、ティナ。もう大丈夫?」
あの奴隷商に襲われてから約2ヶ月がたっている。今までは悪夢にうなされていたらしい。(母を殺されたのだから仕方ないと思う)
「はい!もう大丈夫です」
家族の一員になっている、(婚約したから当たり前なのだが)まだ堅苦しいところが残っている。
「ふふ、微笑ましいわね」
「ひゃいっ、奥様」
「くすっ、ひゃいって、くふふ。可愛いな」
そう言うと顔を真っ赤にして俯いてしまった。
「あんまりいぢめちゃダメよ、純情な子なんだから」
と母様は言った。
ーーーーーーーーーーー
「よしっ、行こうか、ティナ」
「はい、アルヴ様」
薔薇の城を発動させ、それに乗った。今では移動要塞っぽくなっている。(って言っても人2人が乗れる分のスペースしかないけどね。)それに、薔薇の蔓でキャタピラを作り移動している。さながら戦車だな。
「すごいです、アルヴ様は」
「なぁ、アルヴでいいから様はつけないで欲しいな」
「いやっでも」
そう言おうとした口を唇で塞ぐ。10秒くらいの間をずっとキスをしていた。
「な、アルヴって呼んでくれ」
「は、はう、はううう」
ボシュウウウ、と顔から煙が上がってそうなほど顔を真っ赤にしたティナは可愛かった。自分はSっ気があるなぁ、と自覚できる。そんなやりとりをしていると、ガコンと音がして目的地に着いたことがわかった。
「よいしょ、軽いな、ティナ」
「ううう、いぢわるですぅ」
お姫様抱っこをすると恥ずかしいのかそっぽを向いてしまった。
「まあまあ、じゃあ、魔術を薔薇の城に組み込むから待ってて」
「う、うん」
今回組み込むのは『フライト』と、『ジェットスラスト』。浮くのと、飛行機のジェットエンジンと言うようなものだ。魔力ごっそり持ってくけどな。まあ、俺には微々たるものでしかないがな。てか、どんだけあんだよ俺の魔力。
「えーと、'地は繋がりて'のところに'浮遊する'を入れといて、ジェット君は…どこにでも当てはまったし。いいやこれで」
改良が終わり、魔法陣が体に入っていく。もう見慣れた光景だ。
「それじゃ、ティナの魔法特訓と行こうか」
「はい、よろしくお願いします」
「えーと、まずは………」
魔力の流れを統一させるところから始め、集中力を鍛えた。そして、自分と同じようなファイアを浮かべていく練習をしていたところで気付いた。
「ティナ、得意属性わかる?」
「わかりません」
「じゃあ雷使ってみて」
どうやらファイアでの特訓よりもそっちの方が良さそうだ。ファイアの中にチラッと電気がはしっていた。
「雷、ですか?」
「うん、イメージは青白くて球形、そこにギザギザしたのが纏わり付いている。これかな」
「やってみま…」
バヂヂヂヂヂッ!と電気が流れびびった。ファイアの比じゃないな。雷鍛えよう。
「大丈夫ですか!?」
どうやら心配しているが俺にはガーデンがあるので地面に吸収されている。が、
「うぐっ、もうダメかもしれない…」
困らせたくなったので、いぢるわ。
「え、どうしましょう、どうしよう」
「嘘だよ、騙されちゃって」
チュッとキスをすると先程の心配していたティナは、
「バカァァァァ!どうしようかと思ったじゃないですか!?」
「まあ、怒んなってそんな怒ってると」
(可愛い顔が台無しだ)
「っ!………」
ふと、前世での記憶がふっと出てきた。
「どう、したのですか?」
急に涙が出てきた俺に驚いたようだった。
「いや、なんでもないよ。大丈夫」
「そうですか、ならいいよ」
ん?と思ったが気にしなかった。
「じゃあ帰るか」
「はい!」
ガーデンに乗った後、浮遊して家まで帰った。