アルヴ、女の子を助ける
主人公、前世の記憶があるので今回は大人っぽく書いてみました。
「うーん、もうそろそろやめにしようかな。時間がないや」
今まで書いていた魔法陣を消し、秘密基地から出て行く。外は夕方よりちょっと早い程度だった。
「;クローズ;、;自動撃退;」
と言ってそこから出る。街道(街に行くまでの道)を一度通るのだが、そこで胸糞悪くなるような物を見た。おそらく奴隷商と思われる男が少女を追い回しており少女は泣いていた。
「うっへっへっへ、儲かるぜぇ〜」
「いやっいやああぁぁぁぁ!」
まあ、そんな光景を見て男の方にとてつもない殺意が湧いた。か弱い少女をその汚い身なり(ブサメン)で追いかけ回しているのだ。そりゃそうだろう。アルヴは少女を受け止め、男を睨む。
「おうおう、わざわざ捕まえてくれてありっ…」
「お前…」
その耳障りな声を聞いた瞬間、アルヴは1割の半分程度の魔力を解放した。
「殺すぞ」
それは宣告だった。死ぬ、とわかった奴隷商は逃げ出そうとしたが、
「"ガーデン"捕獲、処刑モード」
敷き詰められた床がぐにゃぐにゃと変形し、岩の薔薇が伸びてきて男の足を掴み、空中に逆さ吊りにする。そして、男の体に棘が刺さり動けなくなる。
「なあ、気分はどうだぁ?面白いオブジェにしてやろうか?」
「ひっ、ひぃっ!」
「ま、いっか。やっちゃえ、;ニブルフレイム;発動」
それは青い炎。高音では無く、氷よりも冷たい。しかし、炎のようにそれは揺らめき侵食する速さも炎と同じだ。そんな熱いはずの炎が自分の体を凍らせ、腐食させていく光景に奴隷商は声を出すことも無く死んだ。
「ふう、被害をちょっと出しすぎたかな?威圧は成功したけど」
「あっ、あの」
「あ、そうか。キレてたり感情が高ぶると魔力はすごい量になるのかな」
「あっあのぉ!」
「あ、ごめんちょっと待って、じゃないや。どうし…ゴフッ」
「ど、どうしたの?」
「いやっ、なんでもない。ちょっと…」
追いかけられていた彼女は俗に言う獣人族、しかも狼の獣人だった。特徴は耳と尻尾である。それ以外のところには影響が無く、人間と同じである。全体的に色は白く、もふもふとしたくなる。
「大丈夫ですか?」
フルフルと震えながら涙を浮かべてそう言うため、アルヴはノックアウトされた。
「ぐふぁっ!…うん、大丈夫。そういえばお母さんは?」
そう聞くと涙を大量に流し、涙ながらに話す。
「お、お母さんは、ひぐっ、捕まって、ころさ…」
「うん、もういいよ。大丈夫、もう大丈夫だから。一緒においで」
殺された、その言葉が出る前に、少女を抱いて頭を撫でる。
「ひぐっ、うわああぁぁぁぁん!」
そして、大泣きをし始めた頃、アルヴは内心凄い腸が煮えくり返っていた。
「(よし決めた、悪どい奴隷商を潰す)」
少女を抱え、家に帰る。まず真っ先に母様が飛んできた。
「アルヴっ!だい…」
「母様、この子一緒にいてもいいですよね?」
言葉を遮り、許可を無理やり取る。
「え、えぇ、アルヴが女の子を連れてくるとは思わなかったけれど。いいんじゃないかしら」
基本的に緩いので大丈夫だった。その時メイドのカティが、
「ど、奴隷ですか?」
と心配そうに聞くので、
「母親を殺された、ただの女の子です」
「………」
「………」
「母様、カティさん、僕はちょっと疲れたので部屋で休んできます。後は、その子のことよろしくお願いします」
ぺこりと頭を下げ、部屋に帰っていった。
「え、えと、よろしくお願いします」
可愛らしい声が響く。
「はぁ、アルヴったら…カティ、アルヴが可愛がっていた女の子よ。この子、可愛くなりそうね、私の小さい頃の服でも着せようかしら?」
撫でながらカティに話しかける。
「そうですね、似合うでしょう。お風呂に入れてきます」
「ええ、いってらっしゃい」
女の子を連れて浴場に行く。自分はアルヴの所に行こうと思い、部屋に行くと、
「アルヴ〜?入るわよ〜」
もぬけの殻だった。
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「絶対にぶち殺す、それにしてもまだ奴隷制度が残っていたとは…」
アルヴは暗くなった夜の中、屋根を走っていた。
「おそらく、ここだな」
そこは酒場だった。
「おいおい、ガキはかえ…」
「マスター、13番の席空いてるか?」
その言葉にピクリと反応する。
「生憎だが空いていない、どうした?」
「13番の席自体が無いよ」
そう言うと、
「わかった、何が聞きたい?」
これは一種の暗号であり、マスターはそれを知っていたアルヴに不思議な子だ、と思わせた。
「…ここら一体にある奴隷商の店、悪い評判を聞く所、それと密猟者、だ」
子供ではないのではないか?という言葉遣いにマスターは驚いたが、地図をだし、
「ここと、ここだな。最近金の動きが怪しい。それと密猟者は冒険者のクラン、『夜道の徘徊者』だな。捕まえている所を見た情報提供者がいた」
「ありがとう、では」
カウンターの上に金貨3枚を置き、出て行った。マスターは
「一体何者だ…、あの体躯であんな殺気を出すなんてなぁ…」
気になったが調べて死にたくはないので考えるのをやめた。
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アルヴは地図を見て、笑う。口元には三日月ができていた。
「絶対に、殺す、苦しむ方法で…」
奴隷商達は自分達に起こる悲劇を知らなかった、まさか自分達が殺されるとは思いもしなかった…。