元勇者ヨバルの愉快なお話
愉快なお話シリーズ第2弾!
いま、物凄く急いでいるので、自己紹介は簡潔にさせて貰おう。
身長172cm、体重58kg。誕生日は10月7日。血液型はB型。家族構成は両親と普通に暮らしている。あ、あと妹がいる。3度飯を食うよりも4度飯を食いたい育ち盛りの高校生だ。ちなみに、趣味は昼寝と読書だ。しかし、運動は苦手ではない。むしろできる方だ。50m走なら6.8は余裕だ。腕力もある。好きなものはゆっくりとした時間。苦手なものは……女性だ。…なにあれ。マジで怖かった。エジプト神話のイシスレベルで良妻賢母じゃないと無理。もう受け付けない。でもイシスもラーを脅迫して息子であるホルスに王位を継がせたんだよな。やっぱ怖え。っと。……話しが逸れた。簡潔な自己紹介だった。ええっと、好きな飲み物は緑茶。好きな食べ物は和菓子……と米だな!和食最高!焼き魚も捨てがたいが……いや、味噌汁も美味いし。もう、パンと干し肉には飽きた。あ、部活は入ってない。なんせ、ゆっくりとした時間を求める俺が部活とかナンセンスだからな!
さて、そろそろ簡潔な自己紹介も終えなければ学校に遅刻してしまう。こうなることを見越して2時間早く家を出たのになんの意味もなくなってしまう。
おっと、危ない。また、召喚陣を踏むところだった。これで12回目か。そろそろ打ち止めにならないかな。
ああ、名前を言ってなかったな。俺の名前は朱野夜春。ちょっと異世界に召喚されやすいだけの普通の高校生だ。
しかし、俺も朝から大変だっただぜ?6時に家を出たのにまだ、学校に着いてない。徒歩30分の距離なのにな。すでに何回召喚魔法を潜り抜けたことか。
危ね!マンホールと見せかけた召喚陣だった。
ほら、あんな感じでどこにでも湧いて出てくるのが召喚魔法ってやつでさ。俺は学校に行くためにこのゴキブリのような召喚魔法たちと戦わなきゃならないんだよ。
ちっ!落下式魔法陣か!こんな、爆撃見たいな真似まで。奴ら学習してやがる。しかし、まだまだだな!寝起きで足元に魔法陣を発生させるほどの突発性がなければ俺を異世界召喚することはできないぜ!
ふう、喉が渇いたな。そこのコンビニで飲み物でも買うか。
って、このコンビニ自動ドアの代わりに召喚魔法陣張ってやがる!なんて、トラップだ。やるな……。危なく召喚されるところだったぜ。
だが、これではコンビニで飲み物を買うことができない!なるほど兵糧攻めというわけか。しかし、俺は負けない!
自販機でジュースを買ってやる!100円は…あるな。よし。ちょうどそこの交差点を曲がったところに自販機があったはずだ。行こう。
うおぁあああうああああ!あっぶねー!召喚系魔法の中でも一、二を争うメジャーさを誇る“転生トラック”じゃねーか!
あれを食らったら確実に死亡してこの平和な日本に帰れなくなる!
しかし、“転生トラック”は1日に48台しか動かせないんだ。よしSNSで“転生トラック”を一つ処理したことを拡散しておこう。
……。
……ん、他の“転生トラック”情報か。
なるほど今日の“転生トラック”はあと24台か。なら安心して交差点を渡れるな!大抵残りの3台は下校時に来るからな!
よし、行こう!ジュースを買いに!
さて、飲み物を買う前に周囲の確認だ。突然上から落下式魔法陣に召喚されちゃたまらないからな。
……よし。360°オールグリーンだ。
さて、飲み物を買うか。何にしようか。ここは無難にスポーツドリンクか?炭酸ってのも手か。よし、炭酸にしよう。
……。
この、オランダからやってきた炭酸にしよう。100円入れて。
ポチッとおおおおおおおおおお!?
よく見たらこれ『SUMMONGINA』じゃねぇか!『SUMMON』とか確実に召喚系の罠だ…危なく押すところだったぜ……
やっぱり、スポーツドリンクにしよう。じゃ、これの名前は…うん。平気だ。
ポチッとな。
……。
何も起こらないな。さてジュースを取り出しぃいいいいいいい!?
取り出し口に召喚魔法だと!?飲み物が取り出せないじゃないか!
どうしても、俺を召喚したいようだな……!だが!負けないぞ!俺は無事に登校して見せる!1週間前の俺とは違うんだ!
まあ、飲み物は諦めよう。仕方ない。
ん!?もうホームルームの20分前じゃないか!!ここからだと普通に歩いても5分もかかってしまう!
どうすれば良いんだ!異世界召喚されやすい俺は普通の人の5倍の時間がかかるというのに!
自転車は昨日召喚されてしまってないから今日は歩きなのに!スケボーも、ローラースケートも全て召喚されてしまったんだ!
……バスか?
いやダメだ!しかもバス乗ってみろ!乗客ごと召喚されるに決まってる!
どうする!?使うか!?
召喚された時に覚えた魔法“韋駄天”を使うか!?しかし、“韋駄天”は小回りが効きづらい。召喚魔法に囲まれたらどうすれば良いんだ!
さらに魔法を使ったことで目をつけられ明日からの召喚魔法の量はおそらく2倍……いや、3倍だ!
くっ!“韋駄天”はダメだ。流石にこれ以上魔法が増えたら捌ききれない!
一度使えば“韋駄天”なしではいられなくなる!そしてブレーキが効かなくなったところを“転生トラック”がズドン!だ!
くそ!そんなことになったらいったい何時に起きれば遅刻せずに登校できるというんだ!
……空を仰いでも何も解決しないな。せいぜい落下式召喚魔法を早期発見できるくらいだ。
……“韋駄天”……つかうか……、
ん?空?
フフフ。ハァーッハッハッハッハ!まだ、手はある!
屋根の上を行こう。屋根の上なら万が一にも“転生トラック”も来ないだろう。足元と上に気をつけていれば……イケる!
よし、そうと決まれば登ろう!早速登ろう!
ふっ!はっ!スタッ!
柄にもなくテンションが上がってしまったようだ。効果音を入れてしまった。
さあ、行こう!学校へ!普通の時間を過ごすために!
そのために!俺は!一瞬の風になる!
行くぜ行くぜ行くぜ行くぜ!
足元の魔法陣はジャンプで回避!
降ってくる魔法陣は左右に避ける!
横からの魔法陣は身を捻って躱す!
この程度で、俺の進撃は止められないぜ!
……。
……。
……。
……。
ふう、ギリギリ間に合った。最後の魔法陣斉射はちょっとやばかったな。
しかし、俺はちゃんと登校できた!オレの勝ちだ!
ふふん。この教室の取っ手の冷たさが俺を祝福しているようだぜ……。
「おはよう。夜春」
悠雅か。俺はちゃんと登校したぞ!8種合計89の召喚魔法を潜り抜けたんだ!
「……そうか」
どうした、そんな厨二病患者でも見たような顔をして。
「その通りだよ」
なんだって!?
“厨二病患者”と言えば召喚カモン!な勢いだけでなく遂には自ら召喚魔法を召喚し周りを巻き込む厄介な特殊召喚魔法じゃないか!
「ああ、そうだ。新太がやられた…」
…そうか。すまなかった。友達が召喚されてしまったのか。
「激しい戦いだった。電車ごと召喚されるところを窓をぶち破って飛び出したんだ。そしたら落下地点で厨二病患者が……」
なんて卑劣な……
「俺が助かったのはとっさにその場を飛んでいたカラスを足場にしたからだ。もしあのカラスがいなければ俺も召喚されていた」
なるほど。しかし、召喚されてしまったやつを悔やんでも仕方ない。ほら、ホームルームまで、あと1分だ。教室へ入ろう。
「そうだな」
しかし、俺たちが授業を受けることはなかった。俺と悠雅という最後のメンバーが教室へ入ってしまったために……。
最低最悪の召喚魔法“クラス丸ごと召喚魔法陣”が起動したのだ。
ちくしょー!もうパンと干し肉オンリーの生活は嫌だぁあああ!誰かー!
召喚されても王宮のメイドとかお姫様と確実に王妃とか既婚、非既婚関わらず迫ってくるとかあんな魔窟はもう嫌なんだよぉお!
くそ!俺は純潔を守りきる!そして、来月は無遅刻無欠席に絶対なってやるからなぁぁぁ!
どうでしたか!?面白かったでしょうか!?「面白い」の一言への期待に胸を踊らせる作者ネオン・クリプトがお送りしました!