永遠の命
原初の人間達。この世に生まれ、創造主より思考を持ち出した者達。彼らは、長い年月を共にした仲間達が、死んでいくのを納得できなかった。
彼らは考えた。なぜ仲間達は死んでしまうのかと。彼らは考えた。どうすれば死なせずに済むのかを。彼らは必死に考えていた。が、答えは見つからなかった。
百年もすると、原初の人間達は皆代替わりをしていた。彼らの孫は命の概念を見つけ出した。これにより、死というものの理解が高まった。ではどうすれば死なせずに済むのか、その答えを彼らは見つけられなかった。
二百年、彼らは考え続けた。なけなしの命を繋ぎながら。そして永遠というものを見つけた。彼らは永遠の命を探し求めた。
五百年も経つと、永遠の命を手にした者が現れた。どうやったのかは誰も知らない。彼が認めた者達だけが知っている。彼は百人程集め、ある儀式を行った。その儀式を成功させた者はたったの十二人だけだった。
彼らは皆、決して死なぬ身体を手に入れた。子どもをつくることも、ご飯を食べることも、寝ることもしなくて良い。ある者は世界を見守り、ある者は戦いに明け暮れ、ある者はこの世の支配を目論んだ。
彼らは人の世が荒んでいると決めつけ、勝手に救済しようとした。しかし彼らのことを受け入れる者はいなかった。だが彼らは力を持っていた。人々はやむを得ず従った。
彼らは満足した。自らが世界を救ったのだと勘違いした。永遠の命を得、何百年も生きた彼らは傲った。我らこそ至高の存在であると信じていた。
彼らは人々に城を創らせた。彼らが住むための城だ。その城は天まで届くほど高くそびえ立ち、彼らの傲慢を表していると言えた。彼らはその城に籠もった。城外には、救世主と呼ばれる彼らの忠実な隷がいた。
救世主達は戦が起こる度に、それを治めた。彼らは自らを王と名乗り、人々の信仰を集めていた。だがそれを面白くないと思う者達がいた。彼らは自らが生み出した救世主達を皆殺しにした。我らこそが絶対者であると。
彼らは自らを神と名乗った。もはや人ではないので、新しい呼び名を考えた。『世界を支える柱』ということで、『柱』と数えるように言った。ここに十三柱の神と名乗る集団が完成した。
ある時、一柱の神が、人間に恋をした。彼はその人間を手に入れた。だがそれは他の神の怒りを買った。彼らはその神を城から追放した。だがその神は後悔していなかった。彼は愛する者を手に入れたのだ。
だが彼はすぐに後悔することになる。何十年と経った。彼の愛する者は死んだ。老いて、しわくちゃになって死んだ。彼の身体は何も変わっていない。若者のままだ。
彼は気づいた。永遠の生とは、同時に永遠の死であると。永遠に生かされ続け、愛する者を無くした孤独の神は、城へ戻りかつての仲間にそれを伝えた。だが彼らは聞き入れない。それどころか、帰ってきた彼を殺してしまった。彼ら神同士ならば、神を殺すことができたのだ。
殺された神は、とても満足そうな顔で死んでいった。
「ありがとう」
そう言って死んでいった。
神々は疑問を抱いた。なぜこいつはこんな安らかに死んだのだと。だが彼らは永遠にそれを知ることはできない。死を恐れ、永遠の命なんてモノに逃げ込んだ彼らには。
彼らは退屈している。死なないから。
彼らは退屈している。死んだように。
一度こういうの書いてみたかった。個人的に満足している。
ちなみに神々的には殺し合いすれば死ねるんだけど、どうしても最後に一柱生き残っちゃうから、その最後の一柱になりたくなくて出来ないでいるって設定。