出会い
電車から降りた瞬間、むわっとした熱気と共に、春の空気が俺を出迎えた。
3月23日、午後7時。新生活を歩もうと人混みの多い改札を抜けた。
目の前の風景は、高校までの懐かしい思い出のある我が故郷。
今日からここで再スタートをきる。
駅から歩いて15分。人通りはだんだん少なくなっていく。新幹線では気づかなかったが、雨が降っていたようで、草と雨の混じった匂いが鼻につく。田んぼが多いこの道は水たまりがたくさんできていて、途中、はまってしまった。
多少気分は悪かったが、目的地まであと少しなので我慢をする。
街灯が減り、だんだん明かりが少なくなっていく。足元がみえにくく、不安が胸を支配しながら、歩く、歩く。
この暗い道がなんだか自分の辿ってきた人生のように思える。
ガイドも、照らしてくれる光もなく、ただ延々と道が続く、そんな真っ暗な道。
ちかちかと輝く星の光が恨めしい。いっそ、何もなかったらと、考えていると、突然飛び込んできた大きな光。
顔をあげて確認すると、真っ暗なはずの我が家があった。
小さい頃両親が死に、それからずっと育ててくれた祖父母との家。
俺をいつもニコニコと見守り、大丈夫さぁが口癖の祖母は、俺が高2の時になくなった。
祖父は悲しみを癒そうと、海外旅行に出かけている。
だから必然的に俺しか住む人がいないはずだが、電気がついている。
警察へ通報する準備をし、インターフォンをならした。
ぽんぺーん。
ずいぶん間抜けな (俺が住んでいた頃は普通の音だったはずだが) 呼び出しの音を、ぼーっと聞いていた。
出てきたのは俺より背の低いきれいな男だった。くせ毛なのかパーマなのかわからないちぢれ毛で、大きめの丸めがねをし、きっちりスーツをきていた。