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気晴らしと告白(?)と・・・

 午後の授業なんて全く頭に入らなかった。兄友に襲われかけたショックもあるが、見事に決まったあの背負い投げ・・・。


 ありえねーだろ、アレ。


 などとウンウン悩んでいたために先生の話なんてそっちのけだった。


 変人は打った頭を冷やすために保健室に行ったからだが。


 結局昼休みの事はなかった事として変人とは暗黙のうちに通じてた。


 ってなワケで、キッパリ忘れよう、うん。


 ・・・やっぱりそう簡単には忘れられないか。


 翌日、僕は電車で三駅乗ったところにある商店街に来ていた。今日は学校は休みで、まあ気晴らしに来てみたのだ。


 だっていまだに兄友のどアップが頭から離れないんだもん。おかげで嫌悪感のあまり吐きそうになるし頭痛はするしでホントまいった・・・。


 しかもそれを見た母さんが心配して看病しようとするし、父さんなんか病院に連れて行こうとするしな。いや、病気じゃないからそこまで大袈裟にしなくてもいいんだけどな~。


 あ、両親にはちゃんと感謝してるよ? 愛されてるなぁ、って実感できて嬉しいし。


 でもさすがに二人に付きまとわれるのはちょっと鬱陶しい。だからこうやって外出中なのだ。


「一応お土産は買ってあげようかな」


 ちょっとした物でも喜ぶ喜ぶ。そんな両親が大好きです! ・・・口では言わないケド。


 さて、まずは服でも見ようかな。近くに僕が贔屓にしている古着屋さんがある。安いし良い物があるので来るたびについつい買ってしまうんだよな。というワケでレッツゴー!




 ・・・決まらなかったぜ・・・。


 トボトボと店から出る。


 いつもなら欲しい物が見つかったらすぐに買ってパーッと嬉しい気持ちになるハズなのに! 何でこういう時に限って欲しい物がないんだぁ~!!


 心の中で絶叫です。声に出したら変な目で見られんじゃん。


 せっかく気晴らしに来たんだから、パーッとしたい。どうすっかな~。


 ・・・よし、変人呼ぼう。


 あいつならどうせ暇だろうし、母さん似の僕の呼び出しなら何が何でも来るだろ。


「え~と、あいつの携帯番号は、と」


 携帯電話を取り出し、登録されている番号を表示させる。その時。


「進堂歩夢君」


 名前を呼ばれて振り返った。そこにいたのは僕よりも背が高い男。あの兄友ぐらいあるんじゃなかろうか。だが目の前にいる男は細身で、おまけに兄友よりハンサムだった。


 ・・・兄友基準なのが悲しい・・・。




 ただいま喫茶店にてアイスコーヒーをいただいています。テーブルの向かいには美男子。


 案内された席が奥まったところではあったが、店にいる客達の視線が痛いです・・・。


 隣のテーブルからは見知らぬ女性達(三人)がひそひそと話していらっしゃいます。まあ、声が大きいので丸聞こえですが。


「あの人カッコいいね~。身長高いし、優しそうだし」

「うん。彼女・・が羨ましい~」

「でも彼女・・も可愛いよね。美男美カップルってやつ?」


 ・・・泣いていいですか?


 三人の会話を聞けば誰でも分かると思うケド、美男美女カップルっていうのは僕達の事です。僕は美女・・じゃないのに・・・。今着ている服はちゃんと男服ですヨ。


 あれか、ボーイッシュだとかいうのに見えてんのか、僕は。しかも目の前の男、優しそうに微笑みながらこっちを見てるんです。そりゃ恋人にも見えるってもんだ。


 ・・・連日厄日ですか? そーですか・・・。


 ずっと黙ってアイスコーヒーを飲んでたケド、さすがにこの空間が痛いのでさっさと話してもらおう。


「何で僕の名前を?」


 あ、離れたテーブルについてる男どもが「僕っ子」とか言いやがった。コロス。ってか店の中シーンとし過ぎて会話丸聞こえじゃね?


「有名だからね。学校一の美女だって」


 この男、周りの視線に動じてねーナ。慣れてるのか? ってかそれを知ってるって事は同じ学校の生徒? こんな美形なら女どもが黙ってねーハズ。


「俺は上村稔うえむらみのる。君の一つ上だよ」


 中三か。見えないな。高校生だって言っても通じるぞ。・・・羨ましい。


「最近転校してきたばかりでね。あまり友達がいないから、仲良くしてくれると嬉しい」


 ・・・爽やか青年・・・。なんか毒気を抜かれる相手だな~・・・。


 呆気にとられていると、上村はさらにニッコリ笑って続ける。


「昨日の昼休み、凄かったね」


 ピシッ、と僕の身体が固まった。


「まさかあんなに飛ぶとは思わなかったよ」


 ・・・見てたのか? あれを見てたのか~!? どうしよう、ここは誤魔化すべきか? でも見られてたなら何を言っても誤魔化せない気が・・・どうする? どうする~!?


 固まったまま、内心でグルグル悩んでいると、爽やか青年が一言。


「大事な話があるんだ」

「ほえ?」


 あ、つい間抜けな声が。ってか隣のテーブルから「告白か!?」とか黄色い声援が・・・うるせえ。


「たぶん、君が知りたい事も教えられると思う」


 僕が知りたい事・・・? 昨日の事とか、夢の事とか?


「一緒に来てほしい」


 ついて来いって事か。あー・・・黄色い声が一段とうるせー。


 僕自身夢の事はずっと悩んでたんだ。傍から見てそうは見えなかったとしても、ずっと悩んでた。ずっと夢の中にいたいくらい辛い事があったから受け入れてたんだろうなぁ。


 ってなワケで、僕はコクリと頷きましたとも。えーえー、後悔はしません。例え青年の奢りで会計を済ませて出る時に、店内の客から「頑張れよ」とか「お幸せに」とかいう目で見られても後悔はしません。


 ・・・あれ? 僕ら公認カップル? ありえねえぇぇぇぇ!!

いや、周りから見たら告白・・・(笑)

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