表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/22

影の正体と未来と・・・

 うーむ・・・。


 自分の部屋(自宅)で一人唸っている僕です。何故って? 最近命音と強司が僕を巡って張り合ってるからです・・・。


 強司の奴、命音がアホだって事に気付いて僕だけを狙い始めたらしい。男には目の毒である(ある意味女もか)命音の胸にも一切未練を残さず、何故か僕だけを。一度訊いてみたら、「アホな女は大っ嫌いなんだよ!!」と本人いる前でこれでもかっ、ってぐらいに叫びやがった。自分棚上げかい。ってか過去に何があった。


 その時から二人の戦いが始まったのデス(俺の意思は・・・)。


 今日も今日とて学校が終わった後に秘密組織に行ったら、後ろから命音、前から強司に抱き付かれて非常に暑苦しかったデス。そのままギャンギャン文句を言い合う二人の方がお似合いじゃね? って言ったらスッゲー嫌な顔された。


 勉強しに行ったハズなのに全く出来なかったっていう・・・ホント邪魔でしかないよネ、アンタら。


 ああ、そうそう。最初は斎藤と名字で呼んでた僕だケド、命音に対抗して名前で呼べっ、て言われたので強司。名字で呼んだら返事しないっていう徹底ぶりだったから仕方なく、な。


 能力のコントロールはまあまあ、って事で訓練はないらしいし、それなりに優秀だと思うんだケド・・・普段の言動がアレなんで、罵詈雑言は控えてマスヨ。


「何とかならんもんか・・・」


 溜息を吐きつつベッドへゴー。今日も疲れた、さっさと寝てストレス発散しよう。


「おやすみ~」


 目を閉じて夢の中へ。疲労のせいでいつもより旅立つのが早かったッス・・・。


 気付けば体育館。もう訓練といえばここしか思い付きません。


 今日は何の練習をしようかな~と考えていると。


「またか・・・」


 違和感登場。だが今回は・・・。


「人・・・?」


 黒い影は人の形をとっていた。透けてはいるものの、完璧に人間だ。


 姿としては、黒い外套と黒いズボン、黒髪黒眼と黒づくめ。身長は結構高いな。そして顔はといえば、


「・・・僕?」


 そう。僕に似ていたのだ。まるで僕が成長して二十歳くらいになったような・・・。


 僕が成長したら母さんみたいになるんじゃないかと思っていたケド、そっくりというほどではない。美少女然としていた風貌は美青年と呼べるほど男らしくなっていた(自分で言ってて複雑だな・・・)。


 呆然と見惚れていると、黒づくめの人物は誰もが骨抜きにされそうな甘い微笑を浮かべ、口を開いた。


「俺の声が聞こえているか?」

「き、聞こえてるケド・・・」


 今までになくハッキリと聞こえた。現実にいる人だと思えるほど生気に満ちた、低い美声。


 ・・・アレか、自分に似てるから最大に美化してるのかな、僕。


「良かった。なかなか繋がらなくて心配していた。これでやっと伝えられる」


 ん? 伝える? 何を?


 首を傾げると、彼はフッと笑い、僕の顔に手を伸ばしてきた。


「昔の俺ってこんな顔してたんだなぁ」


 ・・・やっぱり未来の僕なワケ?


 しみじみと呟く相手の顔を凝視しながら、僕は口元をヒクつかせていた。勿論嬉しさの余り。


 だって成長しても女々しいままだったらどーしよう、ってずっと悩んでたんだぞ!? こんなに男らしくなるなら万々歳だ!!


 固く拳を握って歓喜中。イエーイ!


「ああ、悪い。話を戻すが、俺がお前の夢の中に出てきたのは理由がある」


 フムフム。さっき言ってた伝えられる云々だな。


「とても重大な事だ。心して聞けよ」


 そんなに大変な事なのか?


 僕はゴクリと唾を飲み込む。


「村田氏に娘さんがいる事は知っているな?」


 娘さん・・・確か八歳になる、現在意識不明で入院している子だな。


「彼女が意識不明に陥ったのは能力の暴走だ。彼女の能力は『爆発』。幼い身体ではコントロールできなくて、辺り一帯を巻き込んで大爆発を起こし、半径五十mが焼け野原になった。村田氏の機転で死傷者は出なかったけど、それ以来ずっと眠りっぱなしだ」


 ひょえ~。そんな事があったのか。ってかそんな大事(おおごと)、ニュースになってそうなものだケド・・・ああ、報道規制か・・・。


「そしてお前の時代から約五年後。再び彼女の能力は暴走する」


 ナヌ!? また辺りが焼け野原か!?


「お前の考えている通り、焼け野原だ。だが前回とは規模が全く違う。五歳の時の彼女の強さは『強』だったが、今度の強さは測定不能。半径十kmが被害に遭った」

「十km!? そんなに!?」

「ああ。さすがに死傷者はたくさん出た。その中には村田氏や稔、強司も入っている。そのせいで特別警察外部組織は解体、超能力者は皆に恐れられる存在となった」

「・・・・・・」

「今俺がいる時代では超能力者の可能性がある者は容赦なく殺されるか、一生檻の中だ。俺は能力を使って逃げおおせてはいるが、このままでは時間の問題だな」


 そんな・・・そんな未来、悲し過ぎる!!


「どうすればいい? どうすればそんな悲しい未来を防げる!?」

「彼女を起こせ」

「起こす・・・?」

「彼女の力は成長するごとに大きくなっていく。二度目の暴走時、彼女の力は身体に収まりきらないほど大きくなっていた。それまでにコントロールする術を身につけさせるか、もしくは・・・」


 ・・・続きは聞かなくても想像できた。


「殺す・・・か・・・」


 未来の僕の顔が苦痛に喘ぐように歪む。彼にとってそれは受け入れ難い事なのだ。当然僕も同じ顔をしているに違いない。


「他に方法があるのかもしれない。だが俺ではもう何もできない。だから・・・頼む・・・」

 深々と頭を下げる彼。その姿からは焦り、苛立ち、そして悲しみが伝わってきた。

「・・・分かった。なんとかしてみる。他にも方法がないか、探してみる」

「ありがとう!!」

「礼はまだ早いよ。他の方法なんて見つからないかもしれないし、彼女が暴走してしまうかもしれない。まあ、上手く行くよう祈っててよ」

「ああ」


 上げた顔にはあの甘い微笑が戻っていた。だが目は相変わらず暗い色をしている。


「今の僕が、大丈夫だなんて言えない。何が出来るかも分からない。でも・・・せっかく出来た仲間を失いたくないし、今の生活を失くしたくない。だから僕は全力を尽くすよ」


 いつからだろう。今の生活を大事に思い始めたのは。少し前まで夢に逃げ込みたいと思うほど現実にウンザリしていたのに。両親は優しくて大好きだケド、力の事を話せなくてとても辛かったのに。


 だから今の生活は幸せだとハッキリ言える。稔のからかいも、命音のスキンシップも、村田氏の悪戯も、強司のバカさ加減も、全て今の生活になくてはならないもの。まあ・・・たまに行き過ぎる事もあるケドネ・・・。


 つい遠い目をしていると、未来の僕はジッと凝視した後、クスリと笑った。


「うん、お前ならなんとかできそうな気がしてきた。変だな、お前は俺なのに」

「いくら自分でも生きてきた時間が違うんだから考え方が変わってもおかしくないって」

「だな。じゃあ俺はもう行くよ。健闘を祈ってるぜ」


 いや、戦うワケじゃないだろうに・・・。


 未来の僕は綺麗な敬礼をすると、その身体を薄れさせていった。完全に消える直前に見た彼の目は、もう暗い色を宿してはいなかった。


 僕が言うのもなんだケド、頑張れよ・・・。


 その呟きが聞こえたかどうか・・・。僕は覚醒の前兆である景色の揺らぎを感じて確かめる事は出来なかった。




 目を覚ました僕は、カーテンから漏れる光をジッと見ていた。僕の頬が涙で濡れているのに気付いて、苦笑する。


 この涙は彼の悲しみだ。もう二度とこんな涙を流さないよう、僕が頑張らねば。


「よし!」


 勢いよく起き上がり、顔を洗う為に部屋を出た。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ