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下校と囮(偶発)と・・・

暴力・・・になるんでしょうかね?

 学校に登校すると、変人が声をかけてきた。勿論母さんの事でだ。


 変人の口からは母さん以外の話をあまり聞かない気がするぞ。大丈夫なのか? まあ三日前の事を蒸し返されないだけマシだが。


 自分の席につくと、こっちを見ていた麗華ちゃんと目が合った。何か言いたげで、どうしたの、とばかりに首を傾げると、近付いてきて「昨日はありがとう」と言ってきた。


「いえいえ。もう大丈夫?」

「うん。お母さんがしばらくは一人でいちゃ駄目って」

「だろうね。帰りも気をつけなきゃダメだよ?」

「うん。その事なんだけどね・・・」


 言いながら少し恥ずかしそうにもじもじした麗華ちゃん。何これ、可愛過ぎるぅ~。


「一緒に・・・帰ってもらっていい?」


 キター!! 一緒に下校!! フラグたった? たったよね!?(ただいま混乱中)


「勿論! 僕でよければ」


 小さな声で返すと、麗華ちゃんは嬉しそうに笑った。やっぱ良いなぁ、麗華ちゃんの笑顔。これ見る為なら何でもできそうだな~。犯罪は勘弁だケド。


 麗華ちゃんが自分の席に戻ると同時に、やはりというか、隣から刺すような視線。またこれが無視できないほどに突き刺さってくるから、僕は仕方なく変人の方へ向き直った。


「何が言いたいの」

「オトモダチ脱出か?」


 変人がのたまったので、僕は頭に警棒を叩きつけてやった(治ったばかりのタンコブが再びできたのは良い思い出)。




 待ちに待った放課後! 麗華ちゃんと一緒に下校だぜ!


 ただいまテンションだだ上がり中。また覆面男が襲ってきたら警棒のさびにしてくれるわ。


 などと心の中で叫びながら、表面上では静かに麗華ちゃんとお話し中です。他愛ない話だケド、会話できるだけで嬉しいのさ!


 やがて昨日麗華ちゃんが襲われた道に差し掛かる。やはり麗華ちゃんは少しびくびくしながら歩いている。


「昨日一緒にいた刑事さんが見張ってるハズだから、大丈夫だよ」

「うん。ごめんね、付き合わせちゃって」

「良いの良いの。怖いなら毎日付き合うからさ」

「ありがとう。友達はみんな違う方向だから一緒に帰れなくて」

「どういたしまして」


 かく言う僕も家は反対方向。でもそんな事気にしな~い。


 昨日に続いてまたやってきた麗華ちゃんの自宅は僕ん()よりでかい。もう豪邸だよネ! って言いたくなるでかさダヨ。


 聞けば麗華ちゃん、なんと社長令嬢だったんデス! アレだネ、天は二物を与えず、って嘘じゃね? ってな状況だよね~。顔よし、性格よし、成績よしの上にお金持ち。いや~これでもかっていうくらい逆玉優良株だネ。いや、逆玉狙ってるワケじゃないケド。


「それじゃ、また明日」

「あ、うん、ありがとう。また明日」


 満面の笑顔で手を振る姿はホント可愛いよ、うん。この前麗華ちゃんに自分より綺麗だとか美人だとか言われた事はもうすっかり忘れます。クシャクシャ丸めてポイします、ポイ。


 上機嫌で歩いていた僕は、昨日の道に差し掛かっていたが全く恐れていなかった。だから公園を通る方が近道だからとそっちに足を向けてしまったのだ。僕の外見が美少女(!)に見える事をすっかり忘れて。後から考えてみれば安心してたんだろうねぇ。覆面男には見張りがついているハズだって。




「フンフンフ~ン♪」


 鼻歌まで歌いながら公園内を歩く僕。このまま突っ切れば近道近道♪


「フ~ン・・・むぐぅ!?」


 背後で気配を感じた、と思った時には遅かった。突然口を押さえられて、大声を上げられなくなった。そのまま身体を抱え上げられ、抵抗できない僕は公園の茂みの中へ強引に連れて行かれる。後から気付いたんだケド、ここは死角になっていて他からは見えないんだよ。過去二人の少女もここで暴行を受けたんだろーね。


 地面に押し倒され、両腕を頭上で抑え込まれ、ついでに体重をかけて抑え込まれて身動きとれなくなった。口には布まで突っ込まれたよ、おえ。


 見上げると昨日と同じ覆面男が荒い息で僕を見下ろしていた。その手が僕の胸辺りを弄り出す。気持ち悪うぅぅぅぅぅ~!!


「・・・胸がない」


 上からポツリと呟きが。当り前だろ! 僕は男だっつーの! 学校の制服だってズボンだろうがよ!


 勿論口は塞がれているので「ん~! ん~!」としか聞こえてないだろうが。


 そのままシャツのボタンを外そうとする手を払い落したくて。能力を使ってやろうか、と思った瞬間、突然身体が軽くなった。同時に目の前の男の姿が消える。ほえ?


 口の布を取り去り、辺りを見回すと、なんと土居氏が覆面男を押さえつけてました。僕が能力使ったワケじゃなかったから何事かと思ったケド、土居氏が男を殴り飛ばしてくれたらしい。腕を捻り上げられている男は苦悶の表情を浮かべている。痛そうだケド、ザマーミロ!


 新たに二人の警官がやってきて、土居氏の代わりに手錠をかけて連れて行った。それを見ていた僕は、心配そうにこっちを見る土居氏に手を振る。


「怪我はないか?」

「大丈夫。土居さんこそ怪我ない?」

「私も大丈夫だよ。でもビックリしたよ。現行犯逮捕を狙っていたとはいえ、歩夢君が襲われるなんてね」

「・・・僕もビックリです」


 ホントビックリだよ。あの男、マジでコロシてやろうか・・・。


 土居氏は僕の服についた土を払って立ち上がらせてくれる。


「村田さんに報告しないとね」


 礼を言おうとしていた僕はその土居氏の言葉にピキリ、と固まった。何故って? 今回の事を笑われるに決まってるからだろ! 特に稔! あいつ絶対に笑う! すっげえ良い笑顔で笑いやがる! くそ~! やっぱ覆面男コロス!


 多少落ち込みながら、土居氏と一緒に村田氏に報告。そして僕の想像通り、村田氏は良い笑顔でサムズアップしやがりました。だから僕は親指を逆さに立てて勢いよく下におろしました・・・大爆笑されました。


 余談。何と村田氏は僕の両親にまで連絡してやがりました。稔に笑われたのは想像していたケド、さすがにここまでは思い付きませんでした。心配してギュウギュウ抱き付かれながら、僕は一つ決意していた。・・・村田氏、半殺しの刑だな。




 能力をフルに使って村田氏をボッコボコにした数日後。僕は夢を見た。


 ん? 村田氏は大丈夫なのかって? 大丈夫だよ。警棒を握って迫る僕に、むしろ嬉々として村田氏を差し出した先輩方がサムズアップで見送ってくれたから。村田氏は仕事が出来るし優しくはあるんだケド、悪戯好きなのが玉に傷なんだなぁ。少しは懲りろ、的な見送りだったヨ。


 ああ、夢の話だったっけ。前に夢の中で感じた違和感。アレがまた現れたんだ。しかも前回よりも大きくなって。黒い影みたいなのが見えるようになって、でも相変わらず透けたままで。聞こえてくる声も少しハッキリしてきたかな。でもまだうまく聞き取れない。


「この・・・き・・・る・・・」

「何? 何が言いたいの?」


 影に向かって声をかけてみるが、反応はない。近付いてみようかと思ったが、前回みたいに目が覚めてしまいそうで出来なかった。


 最初の頃は誰かに相談しようかと思ったが、別に悪意を感じるワケでもなく、嫌な感じもしないのでやめた。何故か誰にも言わない方が良いような気がしたのだ。


 なので少し離れた所からジッと観察。そこから感じるのは、焦りと苛立ち、そして・・・親しみ。


 親しみ? 何じゃそら?


 ワケ分からん、と首を傾げていると、目が覚める前兆である景色の揺らぎが。


「ホント何なんだよ?」


 そんな呟きが口から零れると同時に、僕の意識は覚醒していった。

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