迷子とパートナーと・・・
やっとこさ更新デス・・・
結果。両親の了承が得られました。
いや、結果だからね? 簡単そうに聞こえるケド、実際はかなりの時間を費やして説得しまくりましたよ?
最初は渋りに渋りまくってた父。まあ超能力なんて不確かなもの、そうそう信じられないからね。テレビで報道されてればともかく、それが普通の反応だ(ちなみに村田氏は報道規制までやっているらしいです、スゲー)。
けど僕が軽く宙を浮いてみせると、目を真ん丸にして驚いていた。その後父も母も凄い凄い! とはしゃぎまくって落ち着かせるのに時間がかかった。良くも悪くも変わってるよね、ウチの両親。
まあそんなワケで、危険に関しては善処するとの村田氏の言葉で、両親は心配そうにしながらも了承してくれた。
「良かったな、了承してもらえて」
時間がかかって遅くなってしまい、泊まってはどうかと言う両親を丁重に断り、村田氏は自分の車へ。見送りに出た僕は村田氏の言葉にコクリと頷いた。
「これから心配かけそうですケド・・・」
「何を言う。子供は親に心配かけるものだと決まっている。そんなに気にしなくて良い」
「はい・・・」
頭をクシャクシャと撫でられ、抵抗せず受け入れる。上村がこの人を慕うのも分かるよ。今日、僕の為に必死で説得してくれたしね。
「それじゃ、明日、朝十時に来てくれ。渡す物や他にも説明しなければいけない事がある。入口とパスワードは分かるかい?」
あの塾のエレベーターの事だな。
「あそこ以外にも出入り口はあるんだが、それも追々説明しよう。おやすみ」
村田氏は車に乗り込み、軽快に走らせて帰っていった。
家に戻ると、両親はどこかワクワクしたような目でこちらを見た。な、何だ?
「歩夢、もう一度パパとママに力を見せてくれないか?」
「見たいわねぇ」
・・・好奇心バリバリか? 外見は美女と野獣くらい違うのに(別に父さんが醜いワケではない)似た者同士なんだよなぁ。
僕は仕方なく能力を使って見せた。
今度は某忍者アニメのように壁を歩く(一度やってみたかったんだ、コレ)。歩くたびに二人からおー! と歓声が上がるが、天井に立って逆さまにぶら下がるとさすがに少しオロオロしていた(父さんが。母さんはのほほんとあらあらとか呟いていた)。
更に乞われて浴槽に張ったお湯の上まで歩かされた。僕自身色々と試せて良い経験になったとは思う。でも・・・二人の好奇心は止まるところを知らなかった・・・。
おかげで寝不足です・・・。
翌日、僕は欠伸を噛み殺しながら塾へ向かっていた。勿論あの地下組織に向かう為である。
・・・こう聞くとなんか悪いイメージがあるのは気のせいか?
上村が押していたボタンを思い出しながら、最後に『開』と『閉』を同時に押す。
エレベーターは昨日と同じく下に降りていく。
扉が開いて、長い廊下を歩いていると、周りの視線が・・・ってなワケでもなく、みんなバタバタと忙しそうにしている。これは僕にとっては嬉しい誤算だ。
女ならともかく、男からの視線は浴びたくないからな・・・。
などと遠い目をしながらドアが並ぶ廊下を歩いていると。
バン!
突然目の前のドアが開いた。
あぶね~! もう少しで顔面クラッシュするとこだったぜ!
マジであと一歩進んでいたらぶつかってましたよ・・・。
勢いよく開け過ぎなんだよ! と文句を言ってやろうかと出てきた人物を見上げると、相手はこっちをジーと凝視してやがりました。女ではなく男が!
「いきなりなに―――」
ヒョイ
文句を言おうとしたら、突然身体を持ち上げられました。何故に?
「迷子か? 親についてきてはぐれたのか?」
・・・コロシていいですか?
殺意が湧いたのはホントです。
脇を掴んで持ち上げながら顔を覗き込んでくるのは三十代前半くらいの男。少したれ目でカッコいいと言うほどではないが、笑うと優しそうなおじさんである。
何気に僕を軽々と持ち上げてらっしゃいますが、力持ちですか。
・・・僕の体重が軽いとかじゃない事を願う。
「いや、迷子じゃなくて・・・ってかおろして―――」
「これから村田さんのところに行くから、ついでに放送してもらうか」
迷子センターか、ここは!? ってか迷子じゃねえぇぇぇぇ!!
抱っこされたまま運ばれそうなのでジタバタ暴れる、暴れる。が、相手はビクともしません。むしろ宥めるように頭を撫でられてしまった・・・。
もう好きにして・・・。
疲れてしまった僕はグッタリ状態で運ばれましたよ、ハイ。
「失礼します」
あの秘密基地っぽい扉を開けて、男が入っていく。勿論腕には僕。おかげで視線が痛い~。さっきまでの幸福を返せ~。
書類を真剣な表情で見ていた村田氏がこっちに気付いて視線を向けた。
あ、吹き出した。でも笑う事はしないでくれたよ、優しいネ。肩が震えてるのはこの際無視しよう、うん。
「おはよう、土居君。君の子供は女の子、しかもまだ五歳じゃなかったかな?」
・・・わざとらしい、とこの場にいる皆が思った事だろう。いや、この僕を抱き上げている土居とかいう男は思わなかったみたいだ。
「いえいえ、この子は私の子じゃありませんよ。どうやら迷子みたいで、廊下をうろついていました」
だから迷子じゃねーって!! しかもうろついてたワケじゃねーっつの!!
・・・村田氏よ、堪えようとして口の隙間から空気が漏れておるぞ。
「館内放送で親を呼んでもらえますか?」
あ、向こうにいた人達が壁を叩きだした。我慢が限界に達したようだ。まあ僕を抱き上げてる男はいまだに気付いていないのだが。
「ああ、名前を訊いていなかったね。君の名前は何ていうのかな?」
・・・そろそろ誰か止めてくれよ。っていうかこの場で止められるの村田氏しかいないだろ。
と目で村田氏に訴えると、向こうもやっと止める気になったらしい。
「土居君、その子は迷子じゃないよ。今朝早くに通達があったはずなんだが・・・」
「通達と言いますと、超能力者のパートナーの件ですか?」
「そう。昨日入ったばかりでまだ知らない事はたくさんあるからね。ベテランである君が色々教えてあげてほしいんだ」
「分かりました。それでそのパートナーはどこに?」
「そこ」
「は?」
村田氏が指し示したのは勿論僕。迷子だと思っていた子供がパートナーだと聞かされて、ポカンと間抜け面になる土居氏。
僕は不機嫌さを隠さずに、村田氏を睨んだ。
「もっと早く止めてほしかったんデスが?」
声が刺々しくなるのも無理ないよね? ってか向こうにいる人達、いつまで笑ってんだ。もうお腹抱えて声をあげて笑ってやがりますよ、ケッ。
「すまなかった。笑いを抑えるのに必死でね。まさか迷子に間違われるとは・・・ククッ」
・・・能力で記憶を消すとか出来るんだろうか?
そんな不穏な事を考えている事に気付いたのか、村田氏が咳払い。
「そんな事より、互いに自己紹介をしてくれるか? もう仲良くなってるようだし」
・・・やっぱり消してやる。
頭の隅で決意しつつ、僕は土居氏に向き直・・・ろうとしていまだ抱き上げられている事に気付いた。
「・・・下ろしてもらえますか」
「あ、ああ」
慌てて僕を下ろす土居氏。一応悪気はなかったんだろうし、この人は許してあげよう。
「僕は進堂歩夢といいます。中学二年生です」
手を差し出すとすぐに握手してくれる。僕が超能力者だと知っていても躊躇わずに握手してくれた彼に好感を持った。
「土居利通です。先程は失礼をいたしました」
そう言って頭を下げる彼。何故に敬語?
首を傾げると村田氏が教えてくれた。
「土居君は警部だからね。一応歩夢君の方が上司、という事になる」
ああ、そう言えば警視とほぼ同じ権限が与えられる、って言ってたっけ。
「でも僕は年下で、経験も何もないですから、敬語は使わなくて良いです」
「そういうわけには・・・」
「子供に敬語を使っていたら、何も知らない人から見たら変に思われますよ」
僕がそう言うと、土居氏は分かったと頷いてくれた。
一回り以上も年上の人から敬語で話されるのってちょっと気持ち悪いしな。
互いに紹介が終わると、僕と土居氏は村田氏に向き直る。
村田氏はよし、と頷くと僕に小さな箱を差し出した。
開けると中には警察手帳と警棒(僕が持っていた物より丈夫な奴)、サイキックリングが入っていた。昨日の今日でよく準備できたな~。
「サイキックリングは君しか外せないように調整してある。超能力がない人に付けても効果はないから、ずっと持っていると良い」
「ありがとうございます」
手帳はポケットへ。警棒とリングは一緒に入っていたベルトに繋ぐ。このベルト、腰に装着して服を着ると外からは見えなくなる。動きを阻害する事もないし、結構便利なベルトだ。
「早速仕事にかかってもらうよ。経験を積むのは大事だしね。詳しい事は土居君から聞いてくれ」
「はい」
村田氏に軽く敬礼され、土居氏はピシッと綺麗な敬礼を、僕はぎこちない(見よう見まねだからな)敬礼を返す。
土居氏の案内で、僕は駐車場に向かうべく部屋を出た。
・・・笑い過ぎてグッタリしている人達を睨みながら。