プロローグ
初投稿です。稚拙ですが、少しでも楽しんでいただければ幸いです。
初めまして、僕は進堂歩夢。十四歳、花の中学二年生さ!
・・・なんて初っ端からテンション高めに自己紹介をしてみたけども。ぶっちゃけ普段からこんなにテンション高くないからね? いつもはもっとクール! ・・・なはず。
まあ高過ぎて引かれるとアレなんで、ネコでもかぶっときましょうかね。ヨイショ。
で、自己紹介の続きなんだけど、僕には秘密がある事を伝えておこう。「は? 何それ?」って思ったアナタ! 変人を見るような目は止めてください、大変傷つきますから!
・・・え~と、あーそうそう、秘密だったね。それは僕が『夢の中ならスーパーマンになれる』って事なんだ。・・・ああ! 待って、帰んないで僕の話最後まで聞いて~!!
はあ、はあ・・・そうだよね、いきなりこんな事言われてもワケ分かんないよね。なるべく分かりやすく説明するケド・・・僕説明するのって苦手なんだよなぁ。だから分からなかったら遠慮なく質問してくれていいからね。
えっと、みんなはさ、夜ご飯食べてお風呂入って、歯磨きして寝たら夢を見るよね? 僕が言っているのはその夢の事なんだけど・・・。
え? 夜ご飯食べて~のくだりはいらないって? そこはホラ、ノリだよノリ。詳しく説明しないと分からないっていう人もいるかもしれないし。夢を見ない人もいるって? まあ、それは人それぞれだし・・・ってか覚えてないだけで夢を見てるハズなんだケドなぁ・・・。レム睡眠って言って―――
八ッ! これじゃあ話が進まない!
とにかく僕は夢を見るワケなんだよ。んで夢の中って大抵自分の思い通りにならない事が多いよね。楽しい夢を見たいと思っても悲しい夢になったり、あーしたいこーしたいと考えててもその通りにならなかったり・・・。でも僕は思い通りにできるんだ。つまり夢の中では無敵なのだ!
え? 精神科? 何で僕がそんなところに行かなきゃならないんだよ? もうそれは病気じゃないかって? 失礼な! 僕は全くの健康体だよ!
は? 現実を見ろって? そんなの言われなくてもがっつり見てるよ! なんたって夢の世界に飛び込みたいくらい辛~い現実が待ってるんだから!
あ~・・・このまま目が覚めなきゃいいのに・・・なんて考えたのはもう何回目だろう・・・。いや、何十回目か? いやいや、何百回目か・・・?
ハッ! 何その『一球闘魂』って書かれたハリセン!? 意味分かんないよ!?
いや、そんな力強く振りかぶらなくても・・・! ってか風切る音凄くない!?
いやあああぁぁぁ・・・!
ドーン!!
耳に入ってきたのはスパーンって音じゃなく。同時に額に激痛が走ったのでもうそれを気にするどころではなく、しばらく頭を押さえながら悶絶するはめになった。
ようやくの思いで顔を上げると、そこは僕の部屋のベッドの下。何故ベッドの下かと言うと、そこから落ちたからである。額から落ちたもんだから、フローリング仕様の床に打ちつけた痛みはハンパじゃなく痛いワケで・・・。ま、おかげで目がバッチリ覚めたんだけどね・・・。
それにしても変な夢見たなぁ。軽く自己紹介しただけなのにハリセンが・・・。一応夢の中じゃ僕の思い通りにできるハズなんだけどなぁ。
一昨日なんて襲いかかってくる悪漢どもをちぎっては投げ、ちぎっては投げ・・・。まあ、寝る前にしていたゲームの影響でそんな事になったんだケド。
その前はモンスターだったな。襲われそうになっていた姫を助ける勇者みたいな感じ? 剣でバッサバッサと切り捨てていく・・・。
後は愛と勇気が友達だとかいう某国民的アニメキャラクターのように空を飛んでパンチを繰り出したり・・・。
そんな夢の追走をしていたら、目覚まし用の時計が目に入って。
「やばっ! 遅刻する!」
僕は慌てて着替えると、ドタバタと騒がしい音を立てながら階段を下りていった。
「おはよう、歩夢。今日は騒がしいわねぇ」
のんびり話しかけてきたのは母さんだ。進堂美鈴三十四歳、趣味は料理の専業主婦。名前にある『美』の通り、かなり美人なんだ。近所でも結構評判で、僕の秘かな自慢である。でものんびりし過ぎているところが長所と言うか短所と言うか・・・。
僕が寝起きに凄い音を立てても、遅刻しそうになっててものほほんとしてるんだもんねぇ。
「おはよ、母さん。父さんはもう仕事?」
「ええ。先に出かけたわよ。あなたの顔が見れなくて残念そうだったわねぇ」
クスクスと口元に手を当てて笑う姿はとても上品だ。なにせ母さんは資産家のお嬢様だったのだから、動きに品があるのはまあいつもの事だ。だった、と過去形なのは、親に結婚を反対されて、父さんと駆け落ちしたというありふれた展開ながらもなかなかにロマンティックな過去をお持ちだからである。
今年四十歳になる父、進堂巌はその名のように頑固で偏屈、良く言えば一途で、母さんを一目見た時から惚れに惚れこんで猛アタックしたらしい。見事母さんのハートを射止めたのは良いが、その親族から猛反対され、仕事まで追われて大変な目にあったという。
今でも母さんの実家とは絶縁状態で、僕は母方の祖父母の顔すら知らない。
十年以上経っても新婚夫婦並みに仲の良い二人だ。まあ、僕もそれを自慢に思っているのだが。
ただ、父さんは母さんの綺麗な顔にベタ惚れで。おまけに母さんに似た僕にもベタ惚れで。つまり、近所でも有名な子煩悩なのである・・・。
(もし僕の顔が父さんに似てたら、今頃放任主義になってたのではなかろうか・・・)
そう思う事は一度や二度ではない。
とにかく。遅刻しそうだった僕は、母さんが用意してくれた牛乳を一息に飲み、サンドイッチ(中身はたまご)を頬張って玄関へ駆け出した。
「喉に詰めないようにね。いってらっしゃい」
そんな母の声を背中に、鞄を背負って慌ただしく外へ出た。
誤字、脱字、感想などございましたら、是非!!
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