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制裁2


***





「…それじゃあ僕は仕事に戻ります。君もそろそろ先生が来る時間でしょうベル」

「あ、そうだった」



――男がラキの元から逃れたのとほぼ同時刻。

ミリの部屋からベルとニーナも退室しようとしている所だった。




「君も物好きですね。マフィアが一般人の家庭教師をわざわざ呼び寄せてまでお勉強したいなんて」

「やっといて損は無いだろ。それにいくらマフィアだからって馬鹿ばっかじゃ困んじゃん」

「その台詞をキャメルやラキにも言ってやってください」





そんな話をしながらニーナが扉に手をかけて、部屋を出る。

ベルは一度心配そうに後ろのミリを振り返ってから、先ほどとは違い気持ちの良さそうな寝息をたてていることに安堵して部屋を出た。





「……おや?」

「え?」



すると、ニーナが何かに気付いて声を上げる。どうかしたのかとベルもニーナの視線の方向へと目を向けてみると……そこには1人の男がフラフラとよろめきながら歩いていた。

よく見ると負傷しているらしい。




「君、大丈夫ですか?」

「!!…ひいっ」

「どうしたんだよそんなに怯えて」



ニーナの問いに、酷く怯えた反応を見せる男。

そんな彼を不審に思ったベルが男を覗き込むと、男はなんとベルを突き飛ばして駆け出した。

そして何を思ったのか、つい今しがたベルとニーナが出て来た部屋……つまり、ミリが眠っている部屋に飛び込んで中から鍵を閉めてしまった。




「ちょ、おい待てよ!おまえその部屋で何しようと…」

「ベル静かに」

「なんでだよ!」

「ミリが起きてしまうでしょう、眠っていてくれた方が都合が良い。下手に騒いであの男を刺激したらミリは殺されますよ。簡単に、ね」



ベルが、ニーナを見る。

するといつの間にか彼の目は仕事モードへと切り替えられていた。

状況は一切不明だが何かが起きていることは間違いないらしい。








「おーええ所におったお2人さん」

「!」



続いて現れたのは、スーツ姿に何故か狐のお面を被った変人……もとい、ラキである。長い銀色の髪はニーナを真似て1つに結び、肩の所に流している。

顔の半分はお面によって覆われているため見えないがその口元だけはいつも通りの緩い笑みを浮かべていた。





「……ああ、だいたい理解しました。今のはおまえの仕業ですかラキ」

「何がじゃー。俺は今ちょいと鬼ごっこの最中で忙しいのよ」


にしし、とラキは肩を揺らして笑いながら銃をチラつかせる。

ニーナだけでなく、ベルにもこれで理解は追い付いた。先ほどの男は、ラキに制裁を受けていたのだ…と。





「ちなみに今どっちがアイツを先に殺るかキャメルと賭けとるんじゃけどー。なあ、この辺で怪我した裏切り者見てな……ってうお危ねええ!?」

「!!」



ラキが慌てて身を引いた瞬間、つい数秒前までにラキの額があった場所を銀色に光るナイフが横切った。的を失ったナイフはそのまま後ろの壁に突き刺さっていた。


「危ねえじゃろニーナ!いきなりなんじゃあ!?」

「おまえが遊んでるせいで面倒なことになりました反省しろ」

「はあ!?」

「おまえが逃した裏切り者がミリの部屋に立て篭もったんだ!アイツが殺されたらオヤジにオマエのこと殺してもらうかんな馬鹿狐」

「ミリ?なんじゃそれ」

「キャメルが拾ってきた女の子ですよ」

「あー…」





ラキは納得したように唸ると、男が立て篭もった部屋の扉へと手を伸ばしガチャガチャと乱暴に開けようとする…が、もちろんそれしきのことで開くわけがなかった。

そうして面倒くさくなったのだろう、ガンガンッと扉を蹴飛ばし始めた。




「おいっ、ラキ!」

「餓鬼んちょは騙っとれぇ。

…しっかし、まさかニーナまであんな幸薄娘にほだされちまっとるとは思わんかったけどなあ」

「まあ…僕としても想定外でしたよ」

「くくっ、それはそれは俺も絡んでみたかったんじゃけどのー。…残念じゃ」



ラキは戸惑うそぶりも見せずに銃を構えた。

扉ごと鍵を壊すつもりだ。





「オマエは見たくないじゃろうベル。外におれ」

「……ありがとうって言われたんだ、ミリに」

「残念じゃったな」

「元はと言えばラキがヘマしたせいでこんなことになったんじゃねーか!」

「だからこれから尻拭いに行くんじゃろうが。自分で。それで問題ないじゃろう、ニーナ」

「ええ」




躊躇いもなく頷いたニーナに、ベルは悔しそうに唇を噛んだ。


ニーナもラキも、ファミリーの中でボスの下に位置する特A階級の殺し屋だ。今回、ニーナは想定外にもミリを気に入ってしまったためこうしてベルと共に大人しくしてはいるが、本来なら裏切り者の制裁に容赦などしない。




「……その女が死なずに済む方法があれば善処してやるから…まあ、期待せんと待っとれ。な。」



ラキはくしゃくしゃ、とベルの頭をかき回すように撫でた。

ベルが小さく頷くのを見届けると…ラキは銃口を扉に向けて引き金を引いた。










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