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調査



「ラキ」

「おー。なんじゃあキャメル戻ってたんか」





ラキがミリの部屋を出ると、目の前の廊下にはキャメルが立っていた。どうやらついさっきまで外に出かけていたようで、その姿は仕事用の黒いコートを着用したままだった。



「アイツの様子はどうだったよ」

「ああ?そんなに心配なら自分で様子でも見に行ったら良いじゃろーが」

「そんなんじゃねえよ、

めんどくせーな」



ラキの言葉に、キャメルは心底鬱陶しそうに顔をしかめた。ラキはお面の下でくつくつと笑った。

2人はそんなやりとりをしながら肩を並べて廊下を歩く。そんな2人とすれ違うメイドや平隊員達は、揃って2人のために道を開けた。


マルシファミリーの殺し屋部隊には階級制度が存在し、階級によって割り当てられる任務の難易度や給料が変わってくる。通常なら、階級はCからB、A、そして特A階級の4段階。しかし、A階級隊員の中でもあの気まぐれなボスであるユチェの目に止まり、尚且つ任務の成功率が90%を越える一握りの優秀な暗殺者のみが特A階級に昇進することが出来るのだ。


そしてこの2人、キャメルとラキは若くして特Aの階級を得た優秀な暗殺者なのだ。





「…で、調査はどうじゃった」

「まず第一に、アイツの言ってることは確からしい。アイツは何ヶ月も前にイムファミリーを飛び出して以来、一切ファミリーには帰ってない」

「アイツ…そんな数ヶ月間もいったいどこおったんじゃ」

「……男んとこだよ」

「ほー!見た目に寄らずなかなかやるのーミリ」

「ま、それも訳有りだったけどな」



2人はエレベーターに乗り込んで地下へ向かった。

地下は特別階級とボス、一握りの認められた人間しか入ることを許されないフロアになっている。そのまま廊下を進んで正面の大きな扉をくぐるとその向こうはテーブルとソファが並んだ会議室になっていた。





「おや、帰ったんですかキャメル」

「おかえりキャメル」



今部屋にいるのはニーナとベルの2人だった。どうやらニーナがベルの勉強を見ているらしい。




「ベル、おまえちょっとあのチビの部屋にでも行ってろ」

「チビじゃなくてミリだろ」

「どっちでも良いっての」

「ベル、解ってやるんじゃキャメルはほら、女の子の名前を呼ぶのが恥ずかしいお年頃じゃろうから」

「あー…」

「って納得してんな!てめえも殺すぞラキ!」



ベルは面白がって笑いながらもそそくさと勉強道具を片付けて部屋を出て行った。

その後ろ姿を見送って、キャメルは外出用のコートを脱ぎ捨ててベルのいなくなったソファへ座った。ラキは隣りへ、そして正面にはニーナが座った。






「――それで?

何か解ったんですか」



気を取り直して、ニーナが尋ねる。

元々キャメルをミリの件で調査に行かせたのはニーナの指示だったのだ。





「ニーナ、おまえアイツ……ミリが誰かに追われてるんじゃないかって言ったよな」

「言いましたね」

「当たりだった。オマエらアビノファミリーって知ってるかよ?」

「アビノ=ルッチじゃろ。元々は町のチンピラ集団だったヤツらをイム=ヨナンが何年か前にまるごと取り混んでファミリーの傘下にしたって」

「それ。ミリがヨナンの家を出て逃げ混んでたのがアビノファミリーだった」

「あ?つまりミリの男ってのは」

「アビノ=ルッチ」

「……あいたー」



ラキが口元を引き攣らせながら額を押さえる。

ニーナの方も腕を組んで何やら考え込んでいるようだった。そして次に口を開いたのは、ニーナだった。




「仕方ないでしょうね。物心つく前からイムファミリーに引き取られて、マフィアのボスの娘となったあの子は言わば箱入り娘のお姫さま。外の世界で自分のファミリーがどんな仕事をしているか……ましてやアビノ=ルッチがどんな人間かなんて理解していたはずもない」

「ヨナンも、ミリがルッチの所にいるならって油断してたらしい。まっさかお姫さまが3階の寝室の窓からベッドシーツで作った縄で飛び出していくなんて誰も思わねーだろうがよ」

「ぶふっ、アイツそんなことしたんか!」



キャメルの言い様にラキは噴き出した。ツボに入ったらしく肩を揺らしながら「さすが」だとか「気に入った」だとか訳の解らないことを呟いているがキャメルは無視して話を進めた。




「そこでお姫さまを逃がしちまったルッチが大慌てでアイツを追ってたわけ。町中のチンピラを使ってな」

「まったくアイツ、よー生きて逃げ伸びたもんじゃの」

「しかしそれも限界でしょう。よりにもよって相手があのアビノ=ルッチとは」




元々が町の不良達を取り仕切るボスのような存在だったルッチは顔が広く、町中の若者達に影響力を持っている男だ。更に不条理な暴力から非合法薬物の売買まで、あらゆる悪事に手を出している。そして何よりも恐ろしいのは彼の頭の良さだといわれている。

今回はたままキャメルに拾われたから良かったものの、そんな幸運は何度も続かないだろう。そしてこのまま、体調が回復してこの屋敷を出て行けばいずれミリはアビノファミリー、もしくはイムファミリーに捕らえられてしまうに違いない。






「……僕としては、嫌いじゃないですけどね彼女。頭も悪くはなさそうですし。それでも敵ファミリーといざこざを起こしてまで匿ってあげる義理は無い」

「それなら俺アイツ貰っても良いかの」

「君が責任持てるならご自由に」

「つーかオマエはどうなんじゃキャメル。元々はオマエが連れて来たんじゃろー」

「…」





そんなラキの問いに、口を開こうとしたキャメル。何か言葉を発したか、発していないか、そんなタイミングで突然バタンと大きな音がして部屋の扉が開いた。

3人が驚いて視線を向けると、そこにいたのはゼイゼイと苦しげに肩で息をするベルだった。




「なにごとですか、ベル」

「た、いへっ…大変、だ…!」

「?」



よほど急いで走ってきたのだろう、3人はベルの息が落ち着くのを待った。

しかしそれよりも早く、ベルが絞りだすように声を上げた。






「ミリがいなくなったんだ…!」








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