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家を追い出されて拾われる

掲載日:2026/04/17

NLでもBLでもGLでも、好きなように解釈して読んで下さい。



「全く、お前はどうしていつもそうなんだ!」


「……うるせぇよ」


「っ!うるさいだと、お前は自分が何をしたのか分かっているのか!」


「……」


 愛ではなく、怒りと熱の籠った掌に顔を叩かれる。


 先生や他の誰かに叩かれるよりも、親に叩かれるのが一番痛い。


 心はもう痛くないが、叩かれた方の頬はヒリヒリと軋む。


(どうして、こんな……) 


 後悔をしても遅いし、悪いのは自分だ。


「……出て行け」


 最低限の荷物を纏めさせられて、家を追い出されてしまった。


 当然だ、自分はそれだけのことをしたのだ。


 同時に、この結果に満足している自分がいる。


 出来損ないの自分の面倒を見てくれた両親には申し訳ないとは思っているが、自分のしたことに後悔は無い。


(これから、どうしよう…)


 一応、手元にはお金がある。すぐに自分で生きれるように独立しろ、と言う両親からの優しさを感じる。


 いや、これを渡すのだから帰って来るなと言われているのかもしれない。


 ともかく、お金があるのは助かる。一先ずは飢えを凌いで、生きることが出来る。


 行く宛も無く、ただうろつきながら見覚えのある通りを歩き続ける。


 これから先のことをすぐに考えられる程、自分は賢くないし、順応出来ない。


 無意味なことばかりを考え、周囲からの視線を知らないフリを続ける。


 もうしばらく歩くと、あまり見覚えの無い場所に来ていた。


(ここは…?)


 何度か来たことはあるが、父の車に乗せられながら通ったことがあるだけで、何となくでしか分からない。


 住む家が無いと困るし、職も探さないといけない。


 ぐぅっ~、とお腹の音が鳴る。


(とりあえず、ご飯を買おう…)


 腹が減ってはどうしようもないので、コンビニに立ち寄る。


(おにぎりは欲しいな、あと飲み物は水で良いかな…)


 中身よりも値段を見て、安めのものを選ぶ。


 多少の余裕があるぐらいは手元にあるとは言え、それでも未来の見えない自分には1円でも使わないでおきたい。


 おにぎりを1つ、水1本を手にレジへと向かう。


「足りるの、それ?」


「…?だ、誰…?」


 すると見知らぬ誰かが話し掛けて来た。


 記憶が探ったが、覚えは無いので多分初対面だ。


「それで足りるの?」

 

「…貴方には関係無いでしょ」


「……分かった、じゃあ好きにしなよ」


(言われなくても、そうさせて貰いますよ…!)


 余計なお世話に少し、イラつきながらレジに商品を通して外に出る。


 家を追い出され堂々と食べれる気にはなれず、路地裏に入り込んで人目が無いことを確認する。


 ここなら誰もいない、親もクラスメイトも先生も、さっきの人も。


「いただきます」


 たかがおにぎり1個に手を合わせて、味わうように、物足りなさを補うように、ゆっくりと食べる。


 一口食べて、水を飲み、また一口食べては水を飲みながら、満たされない空腹感を満たす。


 5分もすれば、おにぎり1個など食べ終わってしまう。


(あと1個ぐらい買っておけば良かったかな…)


 しかし、もう一度行くのは気が引ける。


「やっぱり足りないんでしょ?」


「え…?」


「ほら、これあげるから」


 そう言われ、手渡されたのは揚げ鳥だった。


「で、でも、これ」


「良いから」


 無理矢理渡され、断ることも出来たはずなのに、欲に負けて手が伸びてしまう。


 受け取り、そのまま揚げ鳥にがぶりつく。


(美味しい…!)


 おにぎり1個に5分も掛けたと言うのに、それよりもボリューミーな揚げ鳥は1分もしない内に食べ終わる。


「あっ…」


 夢中で食べた自分を見て、余計なお世話をしてきた人はニヤリと笑う。


「やっぱ、足りなかったじゃん」


「~っ!」


 無駄な食い意地を見られてしまい、思わず顔を逸らす。


「で、あんた誰?」


「…どうして、それを聞くの」


「だって、この辺で見ない顔だし」


「…もう、ここには来ないから。揚げ鳥、ありがとう」


「えっ、ここには来ないって」


 引き留めようとされるが、今は人と関わりたくない。


 お礼だけを言って、早足で立ち去る。


(関わらない方が、良いんだ…)


「待って!」

 

 勢いよく、ガシッ!と肩を掴まれてしまう。


「しつこい!」


 掴んで来た手を払う。


「ここにはもう、来ないってどういう意味だよ」


「……あんたには、何も関係無いだろ」


 構って欲しくない、誰かと一緒に居るのが怖い。


 嫌な記憶に蓋をするように、逃げるように去ろうとすると。


「行く宛が無いなら、うちに来なよ」


「…は?」


「そこそこ広いし、一人で暮らしてる」


「だからって、何で知らないあんたの家に行かなきゃならないのさ」


「……分かった、でも困ったら頼ってよ」



 ― 数時間後 —


 教えられた住所にあるインターホンを鳴らしみる。


「はい、どちら様で―――」


「………」


「入って、お風呂今沸かすから」


 土砂降りの雨に濡れてしまい、お邪魔してしまう。


 自分でも情けないと思うが、家が恋しくなり訪ねてしまった。


 雨に濡れた体を乾かそうにも、近くに銭湯があるのかどうかすら分からず、どこかのお店に入るのも忍びなく。


 少し迷った挙句、訪ねることを選んだ。


 沸かされた風呂に入り、何度も入ってきたはずの湯船の気持ち良さが、全身と心に沁み渡る。


 今日一日歩き回った疲れ、追い出され疲弊した心に、この気持ち良さは抗えない。


「やっぱり、行く宛が無かったんだ」


「……ずっと親に迷惑を掛けてきた」


「……そうだったんだ」


 喧嘩もしたし、先生にも何度も注意を受けて、親にも叱られ、挙句追い出されてしまったことを話した。

 

 湯船の温かさで毒気が抜けたからなのか、この人に安心を覚えたのかは分からない。


 ともかく、今日何故こうなってしまったかを話した。


 話をする途中で、引かれるかもしれない。追い出されるかもしれない。


 そんなことを考えながらも、口は動き続けた。


「……そういう訳」


 ああ、しまった。また、失敗をしていしまった。


 余計なお世話だと言いながらも、余計な口を開いてしまった。


 果たして、どちらが本当に要らぬのだろうか。


 と、考えた時に。


「辛かったんだね…」


「…!」


 頭を撫でられ、安心してしまい、何かが内から込み上げてきた。


 抱き締められ、流す涙が止まらなくとも、頭を撫でる手を止めずにいてくれた。


 人の為にと思った行動で人を傷付け、信用を得ようとしても得られる信用は消えた。


 親にも見捨てられた自分には、見知らぬ誰かの体温と優しさが全部を出してしまう程に嬉しい。


 報われないことよりも、失敗してしまうことよりも、誰かを傷付けてしまった後悔よりも、この一時の優しさが大事なのだ。


 もう二度と会わないであろう両親、先生、クラスメイト達のことなど考えていない。


 今はただ、この温かさに浸っていたのだ。


「行く…?」


「……」


 仕向けられるように、連れられるようにベッドに連れ込まれる。


 好きだからなのか、甘えたかっただけなのかは分からない。


 事実としてあるのが、自分がこの人と交わったことだけ。


 今日出会ったばかりの人と、こういう関係になるのは危険だ。


 帰る場所も無いのに、両親にまた怒られてしまうのではないかと危惧する。


「大丈夫、大丈夫だからね」


 その言葉に安らぎを求めてしまっている自分は、されるがままに果て朝日を拝んだ。


 一泊させて貰っただけに非ず、あんなこともしてしまい罪悪感から必死に謝るも、「好きでしたことだから」と受け入れてくれた。


 ひとしきり謝った自分は、何故ここまでしてくれるのかを聞いた。


 すると、少し恥ずかしそうにしながら「一目惚れだったんだ…」と、答えた。


 出会ったばかりの筈なのに、自分はその言葉が嬉しかった。


 どれだけ裏切られようとも、どれだけ人を信じられなくなろうと、人は誰かを好きになり、誰かを信じたくなるものだと、どん底に落ちて初めて理解した。


「ここに、居ても良いですか…?」


「…!勿論だよ!」


 こうして、自分達の同居生活が始まったのであった。

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