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第四十六話 真夏の勉強会

 真夏の海水浴という一大イベントを終えた俺は、夏休みがあと二週間ほどしか残っていないという事実に少し焦りを感じていた。


 それは澪たちも同じようで。


「おはよー! 圭」


「おはよ、澪。恭介と利奈さんも入って」


 今日は富樫家で勉強会が催されていた。朝の10時から夕方18時まで。昼飯の時間とか休憩を抜いても、5,6時間は勉強できる計算だ。


 ちなみに、俺たちの学力は、恭介が学年トップ。俺と利奈さんは時々上位に食い込んで、20位くらいの順位を取ったりもする。俺たちの学年は40人×6クラスなので、結構いい方なんだとは思う。


 ただ澪は…… 大体200位ぐらいが多い感じ。


 まぁ、まだ一年だし、いくらでも取り返せるとは思うが、早めに手を打っといた方がいいのは確かだ。



「じゃあ、まずは宿題片付けちゃおうか」


 恭介の提案に、俺たちは課題を広げる。


 テーブルに真っ白なワークが3つ並ぶ。


「あれ? 恭介君は?」


「あぁ、俺はもう終わらせたよ」


「全部!?」


 恭介の発言に、澪が本当に驚いたような表情を見せる。


 俺からしたら毎年恒例なのだが……。やっぱりコイツは異次元だよなぁ。


「やっぱり学年1位は伊達じゃないな……!」


 狼狽えている澪を横目に、俺たちは勉強をスタートした。


 問題の難易度はそこまで高いわけじゃないので、スラスラ解けるはず……なのだが。


「ねぇ、恭介君。ここの問題どうやって解くの?」


「あぁ、ここはね、まずxに4を代入して――」


 澪は苦手な数学の問題を全て恭介に質問しながらチビチビ進めていた。


「あぁ! そういうことか!」


 澪のペンのスピードが上がる。ここまで真剣な表情で勉強に取り組んでいる澪は久しぶりかもしれない。


「恭介君! これでどうだ!」


「うん、どれどれ? おっ、正解! 澪さんは飲み込みが早いね。さすが!」


 恭介に褒めちぎられた澪は素直に喜んでいる。


「ぐぬぬ……」


 そんな澪とは対照的に、利奈さんはムスッとしながら二人の様子を見つめている。


 まぁ、いくら自分の親友でも、他の女子が彼氏とイチャイチャしてたら、そんな表情にもなるよな……


「恭介! 私も解けたよ!」


 利奈さんが自分がワークを恭介の目の前に突き出す。


「うんうん、利奈も偉い偉い!」


 恭介が利奈さんの頭を撫でると、利奈さんの顔がだんだんとトロけていく。


 何だこの空間……?


 なんか俺だけ置いてけぼりなんですけど?



 午前中はこんな調子が続いていたが、お昼が近づいてくると、澪に疲れの色が見え始めた。


「ねぇー、そろそろご飯にしよ!」


「うーん、まぁ、いいか」


 予定よりは早いが勉強を切り上げ、俺はご飯の準備を始める。


「ねぇ、富樫って本当に料理上手いよね」


 俺の手元を見ながら、利奈さんが褒めてくれる。


「えへへー、それほどでも」


「何で澪が照れてんのよ」


 利奈さんから鋭いツッコミが入り、澪が満足したように笑顔になる。


「圭、手伝おうか?」


「あぁ、ありがと。じゃあ、そっちよろしく」


 恭介が手伝ってくれるらしい。彼も俺と同じくらい料理はできる。徹さんがいない時は一人で作ってるらしいし。


「何だー、恭介君も料理できるんだ!」


「そう、すごいでしょ」


「何で利奈が威張ってるのよ!」


 今度と形勢が逆転し、今度は澪がかわいいツッコミを返す。


 まぁ、二人が楽しいなら何よりです……。



 ちなみに作っているのはチャーハン。一応4人前だけど、足りるかな……?


「よし、完成!」


「やったー! もうお腹ペコペコだよぉ」


 テーブルに運んで、みんなで食べ始める。


「美味しい! さすが自慢の彼氏たちだよ!」


 澪が美味しそうに頬張っている。


「澪、そんなこと言ってないで、あんたも少しは料理できるようにならないと」


「そんなこと言ったって、利奈も私と同じくらいでしょ!」


「いいえ。少なくともあなたよりはできます!」


 女子二人の間でバチバチな雰囲気だが、二人とも、しっかりと目の前のチャーハンは減っていっていた。


「ふぅ、お腹いっぱい。圭、眠くなって来ちゃったよぉ」


「ほら、午後も勉強あるでしょ?」


 ソファに横になっている澪を起こしながら、片付けをしてくれている利奈さんと恭介を見る。


 恭介の隣で明らかに恥ずかしそうにしている利奈さん。それを澪が見逃すはずもなく……


「えー、なんか二人とも夫婦みたいだね」


「えっ、ちょっ、夫婦とか……! 何言ってんのよ、澪!」


 口では怒りながらも、顔を真っ赤にしている利奈さん。それもどこ吹く風と、黙々と皿洗いを続ける恭介。


 うん。俺も二人がいい夫婦に見えてきたぞ……



 片付けも終わり、午後の勉強をスタートする。駄々を捏ねていた澪も、俺たちによって包囲され、早々に降伏した。


 一度始めてしまえば、何とか最後までできるものだ。


 俺と利奈さんはほとんど夏休みの宿題を終え、あとは国語の作文くらいだ。


 澪も今日は頑張って、課題の三分の一くらいは終わったようだ。これも全て恭介のお陰。


「よし。じゃあそろそろ解散しようか」


 時刻も予定通り18時を過ぎ、みんながウチを後にする。


「来週もやろうか、これ」


「そうだね。それまでには、俺と利奈さんも宿題終わってるだろうから、三人で澪に教えられるね!」


「ひぇぇ……」


 澪が怯えたような声を出す。これも全てあなたのためなんですよ?


「そうだねー。じゃあまた、富樫ん家集合で」


「分かった。圭、ありがとな」


「ううん。みんなこそわざわざきてくれてありがとう。澪、来週もちゃんときてね」


「はい……」


 真夏の勉強会は、無事来週の開催も決まり、幕を閉じた。

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