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第四十一話 ずっと訊きたかったこと

 澪の部屋は居心地が良かった。ただ……


「澪、なんか今日近すぎない……?」


「えぇー、そうかな?」


 明らかにいつもよりベタベタしてくる。お陰でとても漫画が読みづらいのですが……


「何? 私、邪魔……?」


 なんか最近さらにあざとさが上がってきてる気がする。俺、心臓持たないよ……


「邪魔なわけないでしょ。ズルい」


 俺の胸に寄りかかっている澪が嬉しそうに微笑む。この笑顔が見られるなら、どんなことも耐えられそうだ。


「ねぇ、澪、一つ聞いていい?」


「うん?」


「何で俺のこと好きになったの?」


 ずっと訊きたかったけど、勇気が出なかった。でも、今なら聞ける気がした。


「えー、何でそんなこと聞くの?」


 澪が恥ずかしそうに俺を見つめる。


「ずっと気になってたからさ」


 俺の真剣な表情を見て、澪は俺に体を向けて座り直した。


「しょうがないなぁ、じゃあ教えてあげる」


「はい、お願いします」


「まず、圭のことを認知したのは、4月。入学した時。まぁ、同じクラスだから当たり前だけどね」


 いえ、俺のような陰キャを認知するのは、至難の業です。中学では、同じクラスなのに半年くらい経ってから『誰、コイツ?』って言ってきたやつもいた。


「最初は、女子の間で恭介君が話題になってさ。それで、恭介君といつも一緒にいた君も気になってきて。その後、席替えで隣の席になった」


「俺が知ってるのはこっからか」


「そう、最初に意識し始めたのは、ウチに初めてきた時。ほら、恭介君が用事あって二人きりになったじゃん。正直気まずくなるかなって思ったんだけど、圭が頑張って喋ってくれてさ」


「いや、別に頑張ってはないけど」


 嘘です。相当無理してた。


「それで、私、自分のことこんなに話したの初めてだなって。好きな歌い手さんとかね」


 澪が揶揄うように笑いかけてくる。


「最近活動が少なくて不満ですけどね」


「すみません……、でも、もうちょっと待ってくれれば……」


「えっ! そろそろ動かすの?」


「まぁ、予定だと来週中には――」


「やったー! 楽しみにしてるね」


「ほら、脱線してるよ」


 俺の歌い手活動を喜んでくれるのは嬉しいが、俺が今知りたいのは普通の高校生の俺のイメージである。



「あっ、ごめん。それでさ、文化祭一緒に回ろうって勇気出して話しかけてみたわけですよ。もうその時点でちょっと気になってたけどね」


「そんなに早くから?」


「当たり前じゃん。まぁ、まだ君が本当に『ケイ』なのかってことの方が興味あったけどね」


「それにまんまと引っかかったと……」


「そう、で、あのカラオケの後は君を連れ込んで。お母さんにバレて。せっかくだから恋人ってことにしちゃおうかなって」


 あれは作戦だったのか……


「まあ、君が私のこと好きなの、ちょっと気付いてたしね……」


 やっぱりバレてたか……。澪の観察眼なら当たり前かもしれないが……


「それで、もう後は勢いで行こうかなって」


「だいぶ強引でしたけどね……」


「でも、圭からちゃんと告白してくれたのは嬉しかったよ?」


「……うぅ、恥ずかしい」


 まぁ、俺の早とちりがいい方向に転んだから良かったが……


「それで、君の好きになったところだけどね――」


 遂に本題。俺も少し背筋を伸ばす。


「まずは、誰に対しても優しいところ。いつもの学校でもそうだし、文化祭でも伝わってきた。それと、手先が器用なところ。私が苦手なことスイスイやってて、ちょっと羨ましかった」


「何か恥ずかしいな……」


「聞いてきたのは君なんだから、ちゃんと最後まで聞いてね!」


 その通りです。


「ふぅ、それで一番は、いつも自然体なところかな」


「自然体?」


「そう、無理してないっていうか。私は他の人の目が気になっちゃって、学校だと自分を演じちゃうことがあってさ。でも、君は家でも学校でも変わらなくてさ。そんな君の前だと、本当の私を出せるというか……」


 確かに、学校での相楽澪と家での相楽澪はとてつもないギャップがあった。


「だから、圭はずっとそのままでいてね。君がいなかったら、本当の私は生きていけないんだからね」


「うん、もちろん。言われなくてもずっと俺は澪のことが好きだよ」


「……私も」


 そう呟いた澪の唇が近づいてくる。


 恋人になってからは当たり前になったはずのキスも、俺はまだ、恥ずかしい。


「ふふ、恥ずかしいね」


 澪もわかりやすく顔が赤い。そんな彼女が俺は大好きだ。



「二人ともー! ご飯の準備できたよ!」


 一階からさくらさんの声が聞こえてきた。


「じゃ、行こっか」


「うん、続きは後でね……」


 食事前からドキドキさせてくる澪に、俺はますます沼っていく。


 でも、それでいい。それがいい。


 こんなにかわいい彼女になら、一生を捧げてもいい。


 なんか俺、すごい恥ずかしいこと考えてる?


「圭、顔赤いよ……?」


 澪がいつもの調子でからかってくる。ただ、今はそれも心地よかった。


「あぁ、後でな」


 澪の顔もポッと赤くなる。何で俺たちは互いに照れさせてるんだろう……。


 まぁ、いいか。



 結局この日の夕食はさくらさんと春樹さんの話には全く集中できなかった。何を考えていたのかは、言葉にするには恥ずかしすぎるけど……


 まぁ、ご想像にお任せします。

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