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第三十八話 告白の行方

「うわー、おしゃれ!」


 包の中から姿を見せたのは、シックなデザインのマグカップだった。


「恭介君、こういうの好きかなって……」


 恐らく、こないだのショッピングモール内の雑貨屋で買ったんだろう。利奈さんらしいチョイスだった。


 恭介も喜んでるみたいだし、後は利奈さんがどう仕掛けるかだが……。



「恭介君、実は、もう一個用意してて――」


 そう言って利奈さんは、もう一つのプレゼントを取り出した。


 あっ!


 彼女の手に握られていたのは、あの雑貨店に売っていた例のぬいぐるみだった。特に捉えどころのない不思議なぬいぐるみ。ただ恭介に刺さりそうという俺の勘だけでおすすめした代物。


「あの、もし気に入らなかったら捨てていいから……」


 利奈さんが自信なさげに手渡した。


 正直、さっきのマグカップの感触も良かったので、蛇足にもなりかねないが……


 恭介が隅々までぬいぐるみを観察している。


「どう……かな……?」


「うん、めちゃくちゃ気に入った!」


 恭介の言葉に、利奈さんがそっと胸を撫で下ろす。


「俺こういう面白いの好きなんだよね! ありがとう!」


「気に入ってくれたなら良かった……」


 利奈さんが俺たちに向かって小さく親指を立てた。


 上手くいって良かった。後は本題を残すのみか。


「ねぇ、恭介君……」


「うん? どうした?」


 利奈さんが大きく息を吸い込む。


「私、ずっと恭介君のことが好きでした!」


 利奈さんが意を決して放った言葉は、真っ直ぐ恭介へと飛んでった。


「私、こんなに人のこと好きになるの初めてで、私なんかが……って今でも思ってる。どうしても伝えたくて」


 恭介は静かに利奈さんを見つめている。


「それで、もし良かったら私と付き合ってください!」


 しっかりと最後まで言い切った利奈さん。後は恭介次第か……


 正直、彼がどういう選択をするかは彼にしか分からない。断る可能性も全然ある。


 ただ、利奈さんの気持ちは確実に伝わったはずだ。


 頼む! 恭介!


「ありがとう。利奈さんの気持ち、すっごく嬉しい」


 俺たちの緊張をよそに、恭介の表情は柔らかかった。でも、その顔もすぐに真剣なものに変わった。


「でも、利奈さん。君はひとつだけ間違ってるよ」


「へ?」


 予想していたかった恭介の言葉に、場の空気が少し固まる。


 これ、ダメなやつ……?


「俺は、君が思ってるほどいい人間じゃない。それに、利奈さんは俺なんかにはもったいない。だから、利奈さん。君が『私なんかが』って思うのは間違ってる」


 恭介らしい言葉だった。


「だから、もし君がいいのであれば……」


 これは!


「こちらこそ、俺と付き合ってください!」



 恭介の言葉に、利奈さんが顔を赤くする。まぁ、告白したら告白で帰ってきた展開。恥ずかしいのは当然だ。


「よろしく、お願いします……」


 利奈さんが恭介が差し出した手を握る。


 なんか、上手くいったみたい。


「利奈ー! おめでとう!」


 ずっと黙って見守っていた澪が利奈さんに飛びつく。


「澪! ありがとう!」


 女子二人が盛り上がっている中、恭介は一人恥ずかしそうに笑っていた。


 なかなか見ない恭介の照れた表情に俺も少し恥ずかしくなってきた。



「それじゃあ、新カップルの誕生を祝して! 乾杯!」


 澪が乾杯の音頭を取る。


「乾杯〜」


 二人は恥ずかしそうに自分の飲み物をコツンとぶつけていた。


「よっ、初イチャイチャ頂きました!」


「ちょっと、澪。やめてよ……」


 いつもの利奈さんとは打って変わって、完全に力が抜けた返答だった。


「恭介、おめでとう」


「おう、さんきゅ」


 こっちはもういつもの調子だ。これから利奈さんと上手くやっていけるのか……


 まぁ、こいつなら大丈夫か――



 その後もパーティーは続き、気がつくと17時を回っていた。


「じゃあ、そろそろお開きかな」


「みんな、今日はありがとう。今までで一番楽しい誕生日になりました。プレゼントも、すっごく嬉しかった。それから……」


 恭介が利奈さんの耳元で何かを囁いた。


 それと同時に利奈さんの顔がポッと赤くなる。


 何言ったんだコイツ……


「じゃあ、後片付けは俺と圭でやるから、後は任せといて」


 うん?


「えっ、でも恭介君は今日の主役でしょ」


「でも、みんな準備頑張ってくれたみたいだしさ、後は俺たちに任せて。なぁ、圭」


 まぁ、しゃあねぇか。


「そうだよ。それに、一人もうダウン寸前みたいな人もいるし……」


 利奈さんはさっきの恭介の攻撃(?)で心ここに在らずという感じだった。


「あちゃー、じゃあお言葉に甘えて」



 澪と利奈さんがひと足先に帰ると、部屋の中には俺たち二人になった。


「じゃあ、片付けますか」


「なぁ、圭、今日はありがとな」


「まぁ、俺は利奈さんに頼まれて企画しただけだから」


「それでも、やっぱり嬉しかった」


 寂しい思いをしてきた恭介。その心の隙間をちょっとでも埋められたなら、それで良かった。


「ていうか、利奈さんの告白、どう思ってた?」


「まぁ、予想はしてたけどね」


 え?


「予想してたって……、利奈さんがお前のこと好きって気づいてってこと?」


「まぁ、そうだな」


「でも、お前、昔からこう言うの鈍感だった……」


「あぁ、わざとだよ。面と向かって告白されたら断れない性格だったから、だったら気づかないふりしといた方が楽かなって」


 コイツ、さすがだ。


「でも、利奈さんの気持ちは嬉しかった。あそこまでストレートに言ってくれて、ちょっと驚いたけどね」


「俺は、お前の策士っぷりに驚きだよ……」


 恭介が弾けるように笑う。まぁ、楽しそうでなによりですけど。


「ていうか、最後利奈さんになんて言ったんだよ」


「えぇー、秘密!」


 あぁ、なんか、利奈さんがどんどん沼っていく未来が見える気がする……

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