表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
37/51

第三十七話 恭介誕生日パーティー

 楽しい時間は早く過ぎるとよく言われる。


 俺たちの楽しい夏休みももう既に一週間が過ぎようとしていた。


 この一週間、俺と澪はそれぞれの家をずっと行き来していた。俺は相楽家に夏休み開始からもう2回も泊まらせてもらっている。


 澪がウチに泊まるのはまだ実現していないが、二人の仲は確実に深まっていた。


 特に特別なことをすることもなく。ただただ駄弁ったり、ゲームしたり、俺が歌ったり。時には利奈さんや恭介と一緒にちょっと外に出たりと、よくある高校生の休日を送っていた。



 ただ今日だけは、少し特別だった。


 8月3日。そう。恭介の誕生日であった。


 誕生日会は午後からの予定で、当たり前のように両親は仕事なので、会場は富樫家ということで落ち着いていた。


「ねぇ、圭。こっちも飾りつけしちゃうね?」


「あぁ、よろしく」


 という訳で、俺と澪はパーティーの準備をしていた。


 食事はピザを用意していて、後で届くはず。それまでにリビングの飾り付けと、俺と利奈さん共作の誕生日ケーキの準備をこなす。


 澪もケーキ作りに参加したがっていたが、さくらさんの忠告で今回は遠慮してもらった。


 利奈さんは家でも時々料理をするそうで、澪と比べたら数倍料理スキルが高かった。


「よし、飾り付けはOKだね。ちょっと疲れたな」


 俺と利奈さんは朝からケーキを焼いていたので、睡魔が襲ってきていた。


 利奈さんもきっとぐったり……? あれ?


 俺の予想を裏切って、利奈さんはバッキバキに目が覚めていた。


「利奈さん、眠くないの?」


「……眠いけど、これからのこと考えてたら、緊張しちゃって――」


 まぁ、それもそうか……


 利奈さんは今日、恭介に告白しようとしていた。


 ちょっと急すぎやしないかと利奈さんはビビっていたが、それくらいでちょうど良いんじゃないかと思った。


 理由は特にないが、強いて言うなら、幼稚園から彼と一緒に生きてきた俺の勘である。


「ねぇ、恭介君に嫌われないかな」


「大丈夫だって! きっと上手くいくよ!」


 確信はないが、そう言葉をかけるしかない。利奈さんの初めての恋愛。どうか実って欲しかった。



 正午。時間ぴったりに今日の主役が現れた。


「お邪魔しまーす」


 パァン! パァン!


「お誕生日おめでとう!」


 恭介を出迎えたのは、利奈さんと澪のクラッカーだった。


「恭介、おめでとう。さぁ、まずは座って」


 俺の案内にしたがって、恭介が用意された主役席に腰をかける。


「それじゃあ、二人ともよろしくね」


「え? 何が始まるの……?」


「せーのっ」


 二人の準備ができたところで、俺がギターを鳴らす。


「ハッピーバースデートゥーユー」


 あまり気が進まなかったが、二人のたっての希望で、俺の生歌バースデーソングが披露されていた。


 それに合わせて、二人がケーキを運んでくる。


「……ハッピーバースデートゥーユー!」


「「おめでとう!!」」


「ありがとう!」


 恭介がロウソクの火を吹き消す。


 それと同時に大きな拍手が起きる。


「わざわざこんなの用意してくれたんだ!」


「そう、利奈さんが作ってくれたんだよ」


「へぇー! すげぇクオリティ高い! ありがとう!」


「……どういたしまして」


 利奈さんが恥ずかしそうに顔を隠す。それでも、その裏で最大限のニヤニヤをキメているのは間違いないだろう。



「さぁ、後はみんなで食べようか」


 お昼ご飯も兼ねていたので、みんなが一気にピザに手を伸ばす。


「圭、コーラ欲しい!」


「はいはい、分かりましたよ」


 恭介がここぞとばかりにわがままになる。まぁ、今日くらいは許してやるか。


 今日の目的は確かに、利奈さんの告白だったが、俺の中では別の目的もあった。


 恭介の家は、徹さんが離婚してから、ずっと二人きりのバースデーだったそうだ。寂しい気持ちを隠しながら生きてきた彼にとって、少しでも楽しい思い出になれば良いなと思っていた。



 みんなでワイワイと騒いでいると、すぐに時間が過ぎていった。


「よし、そろそろあれやりますか!」


「『あれ』?」


 不思議そうな顔をしている恭介を横目に、俺たちはそれぞれが用意したプレゼントを取り出した。


「じゃあ俺から」


誰がどんなものを用意したのは俺たちも知らなかった。


「はい、これ」


「ありがとう、開けて良い?」


「どうぞどうぞ」


恭介が袋を開けると、中から一本のシャーペンが出てくる。


「お前、これ!」


「欲しいって言ってただろ」


ちょっと前だが、恭介が文房具にハマっていた時期があった。その時に欲しいと言っていたブランドのものを用意していた。


「さすが俺の親友! ありがとな」


「喜んでくれたなら良かったよ。じゃあ、次は……澪」


やっぱり利奈さんが最後の方がいいだろう。


澪が用意していたのは、恭介が好きなアニメのTシャツだった。


「うわー、欲しいと思ってたんだよね! ありがとう」


好みが多い恭介。芯を捉えるのは難しいが、ストライクゾーンは無駄に広い。まぁ、利奈さんはホームランしか狙っていないだろうが……


「じゃあ、ラスト利奈さん!」


「はい、じゃあ、これどうぞ……」


利奈さんは何を用意したのか……。恭介は渡された包みを広げた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ