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第十九話 初めてのお泊まり①

 時刻は夜11時。俺は澪さんの服を着て、部屋の中で小さくなっていた。


「澪さん、俺やっぱり帰ろうかな……」


 いくら友達になったといっても、高校生の男女が同じ部屋で一夜を明かすなんて。恋人同士でもないのに。


「まだそんなこと言ってんの? もしウチの親にバレたら、君だけじゃなくて私まで怒られちゃう。今日は大人しく泊まっていきなよ」


 元々は澪さんが俺を連れ込んだからこんなことになってるんだけどな……


「さっ、早く親に連絡しちゃいな。心配してるでしょ」


「それが……」


 親には一報入れておかなければと、さっきメッセージを送ったのだが……


「ごめん、俺今日友達の家に泊まるわ」

お父さん

「了解」

お母さん

「分かった〜」


「これ以降連絡が来てなくて」


「相当自由なお家なんだね」


 自由というか、大雑把というか。両親の仕事の都合上、家に家族全員揃う方が珍しい富樫家にとっては、俺のお泊まりもその程度のイベントなのだろう。


「ていうか、服、ありがとね」


「うん、ちょうどオーバーサイズのがあったから」


 澪さんが貸してくれた服は俺でさえ少し大きいくらいのサイズだった。それでも制服で寝るよりは断然マシだろう。それに……少し澪さんの香りに包まれてドキッとする。


 油断して少し口元が緩む。


「あー、今エッチなこと考えたでしょ!」


 何故分かる……?


「そんなこと考えてないよ」


「嘘だー!」


「澪さん、声が大きいよ」


「あっ」


 リラックスし過ぎて忘れそうになるが、俺は今相手の親に無断で同級生の女子の家に泊まろうとしているクズ男子である。もし澪さんのご両親にバレたら……


「じゃあ、俺はもう寝るから」


「えー、もうちょっとお話しようよー!」


 床に寝転がる俺に無理矢理目を合わせてくる。今までにはない距離感に少したじろぐ。


「ていうか、床で寝るの?」


「だって、ベッドは澪さんが使うでしょ?」


「うん、当たり前」


 じゃあわざわざ聞くなよと思いつつ、俺は目を瞑って視界を遮断する。


「君もベッドで寝たら」


 突拍子もない発言に俺の瞼が開かれる。


「あのー、冗談はほどほどにお願いします」


「冗談じゃないよ?」


 この人は本当に何を言っているのでしょう?


 同じ部屋で一夜を明かすだけでもギリギリっていうか余裕でアウトなのに、同じベッド?


 俺は生きて帰れないですよ。ミンチにされて明日の相楽家の食卓に並びますよ。マジで。


 あぁ、美味しくない。すみません。



「ベッドでは寝ません。諦めてください」


 澪さんが残念がっている。そりゃ、俺だって許されるなら一緒に寝たいですよ。でも、それはまだまだまだまだ早すぎる。


 澪さんは少し考えてからニヤリと微笑む。


「じゃあ私も床で寝ようかな〜」


「へ?」


 澪さんも俺と向かい合う形で床に寝転がった。


「あー寒いなー、君のせいで風邪ひいちゃうかもー」


 くっ、この人、思ったより手強い。


「別にあなたが風邪ひいても俺は困りません」


「えぇー、ひどーい」


 口ではそう言いながらも口元はピクピクと動いていた。


 遊ばれてるな、これ。


「もし一緒に寝てくれないなら……」


「ないなら……?」


「君が『ケイ』だってみんなにバラしちゃおうかなー?」


「ベッド行きましょう。すぐに」



 結局、澪さんとの駆け引きに完敗した俺は、澪さんのベッドの上で横になっていた。


「ねぇ、女の子と一緒に寝たことある?」


 澪さんの息が首にかかってむず痒い。


「ある訳ないでしょ? あなたには俺がどう見えてるんですか?」


「うーん、どう見えてるか、かー」


 少し沈黙が続いた。そんな真剣に考えなくてもいいのに……


 俺が段々と眠りに落ちそうになっていると、急に肩を引っ張られてひっくり返された。澪さんと向かい合う形になる。


「えっ? 急にどうしたの」


「君がどう見えてるのって聞いたから、実際に見てみようと思って」


 そう言って澪さんはニッコリと笑う。やばい、それは破壊力が強すぎる。


 互いの鼻が当たりそうな距離感。それぞれの息遣いが聞こえてくる。


「私は君のことかっこいいと思うよ」


「かっこいい? 俺なんかより恭介の方が――」


「確かに恭介君は人気あるよねー。でも、私が言いたいのは外見の話じゃない。君の優しくて真面目で不器用な所」


「不器用は余計です」


「そこも含めて、でしょ!」


 そんな断言されましても。でも、好きな人からかっこいいと言われて悪い気はしない。


「うーん、かっこいいってよりかわいいの方がいいかな?」


 あれ?


「君が『ケイ』だってことが知って、もちろん驚きが強かったけど、ちょっとだけ安心したの」


「安心?」


「うん、解釈一致っていうか、私の『ケイ』像と富樫圭っていう人間像がピッタリハマったの」


 澪さんは言葉を紡ぎながらさらに体を寄せてくる。俺はもう話の内容は半分も入ってきてない。


「だからよかったな。君が『ケイ』で。優しくて真面目で不器用でかわいい君で」


「ありがとう」


 自然と出た言葉はありがとうだった。ケイに出会ってくれて、ケイのことをそんなに思ってくれて、そして、俺のことを受け入れてくれて。


「なんかしんみりしちゃったね、そろそろ寝ようか」


「そうだね、ところでちょっと離れる気は……」


「ない!」


 あぁー、そうですか。


 俺は今日は寝れない気がします。明日無事に帰れるといいな……

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