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第十六話 カラオケで打ち上げ

 突如決まった、カラオケでの打ち上げ。


 俺たち4人は学校を出て駅の方向へ歩き出した。カラオケまでは歩いて15分ほど。その間に俺は恭介に今のところの状況を伝える。


 と言っても、澪さんが一緒に歩いているので口頭では喋ることができない……


 俺はおもむろにスマホを取り出してフリック入力を開始した。恭介も待ってましたと言わんばかりにスマホを取り出す。


「ちょっとヤバいことになった」

恭介

「何があったん?」

「活動がバレた」


 恭介が驚きの表情を浮かべている。それはそうだろう。当事者の俺でさえこんなに早くバレるとは思っていなかった。


恭介

「なのにカラオケ行くの?」

「断る方が怪しいだろ」

恭介

「でも歌ったら一発だろ」

「そこでお前に頼みがある。詳しくはカラオケのトイレで」


 短いやりとりを終えた俺たち。恭介が小さく親指を立てる。さぁ、あとは計画通りに行くかどうか。



 カラオケに着いた俺たちは受付を済ませる。俺たちの他にも北楼高校の制服が目に入る。皆同じような目的で来ているのだろう。


 カラオケは一人で来ることが圧倒的に多かった。それも歌みたの練習くらいなので、いろんな曲をワイワイと歌うカラオケは経験したことがなかった。もちろん女子と一緒になんて初めてだ。



「よーし、今日は思いっきり歌うぞ!」


 澪さんが先陣を切りますと言わんばかりにマイクを手に取った。


「ごめん、俺ちょっとトイレ行ってきてもいいかな?」


 恭介が上手く切り出す。


「じゃあ、ついでに俺も」


 澪さんの視線が痛いくらいに突き刺さるが、そそくさと個室を出た俺たちはトイレへと駆け込む。


「で? 俺は何をすればいい訳?」


「俺に歌わさないようにしてくれ」


「お前、それはちょっと無理があるだろ」


 やはり現実味が無いか。でも、ここでバレる訳ではいかない。考えた末に辿り着いたのは歌わないという選択肢だった。


「逆に歌うために来たカラオケで一曲も歌わない奴の方が怪しいぞ」


「それは確かに……」


「ていうか、バレたらダメなん?」


 恭介が突拍子もないことを言い出す。


「だって、お前は相楽さんのこと好きなんだろ。もし相楽さんとそういう仲になりたいんだったら、歌い手であるということを隠しておくわけにはいかないだろ?」


「でも、バレたら今みたいに対等に見てもらえるか……」


「お前、相楽さんに対等に見られてると思ってんの?」


 くっ、コイツ痛いとこを突いてきやがる。


「前も言ったけど、歌い手のお前もこの弱気になってるお前もどっちも圭であることに変わりはないだろ。だったら全部晒け出せよ」


 確かに澪さんとの関係を壊したくなくて踏み出せないでいたが、歌い手活動の告白は関係を進展させるには不可欠だろう。澪さんが勘づいているなら尚更だ。


 でも、いいのか? もうバラしてしまっても。


 1ヶ月半前、絶対言わないと決めていたのに?


「……とりあえず、戻るぞ」


 恭介の言うとおり、もう5分以上トイレにいる。そろそろ怪しまれてしまう。



「もう〜遅いよ!」


 部屋に戻るや否や、相良さんがツッコんでくる。小島さんは別に興味なしという感じでスマホをいじっている。


「まあ、最初は盛り上がるヤツがいいよね〜」


 そう言いながら相楽さんが選んだのは、女性アイドルの、かわいいを前面に押し出した曲だった。そっち系はあまり詳しくないのだが、持ち前のリズム感でノることはできた。


 相楽さんの歌声はとても綺麗だった。透き通るような高音が耳に心地よく響いた。表情管理も完璧で、時折見せる恥ずかしそうな表情もとてもかわいく思えた。


 これが普通のカラオケだったら最高の思い出だっただろうが、これから回ってくる試練を考えると逃げ出したくなる。



「ご清聴ありがとうございました」


 相楽さんがわざとらしく一礼する。俺と恭介は拍手で答える。


「さっ、次は利奈!」


「えー、私はいいよ」


「ダーメ。今日はみんな一曲は歌ってもらうんだから。もちろん、圭君もね……」


「何で名指し……」


 理由は痛いほどわかる。やはり、俺が歌い手であるという証拠を掴むためのカラオケなのだろう。


「しゃあねぇなぁ」


 小島さんが嫌々ながらも入れた曲は、女性歌手のバラードだった。リリース自体は前なのだが、みんなが知っているような有名な曲である。


 歌い始めるとさっきまで渋っていたのは嘘みたいに、感情が入った情熱的な歌い方だった。普段の態度からは想像できないほどの歌声に少し驚きつつも、新しい一面を知れた気がして嬉しかった。


「……はい、終わり!」


 恥ずかしそうにこちらを見てくる小島さん。いつもの調子が戻ってきたみたいだ。



「よし、次は男子だね!」


 相楽さんが嬉々としてマイクを渡してくる。


「じゃあ、まずは……」


「俺が行くわ」


 相楽さんからの指名の前に恭介がマイクを持った。


 彼なりに俺の考える時間を増やしてくれたのだろう。やはり頼れる男だ。端末を操作しながら片目を瞑ってくる恭介。あとはお前次第だ。そう言っているような気がした。


 恭介が選んだのも、盛り上がる系の曲。彼と行ったカラオケでは毎回歌ってくれる曲だ。いわゆる十八番というヤツだろう。


 彼は歌い手活動をしている俺から見ても相当うまい。今日もコンディションは良さそうだ。


 聞き慣れた曲だったが、今日だけは恭介からのエールのように感じられた。力強い歌声の中に隠れている優しさが俺のモヤモヤとした心を整えたくれる。



「ふう、ありがとうございました」


「すごーい。恭介君歌上手なんだね!」


「うまいじゃん……」


 女性陣からの評価も上々で恭介も嬉しそうである。



「さあ、トリは――」


 遂に来てしまった俺の番。


 恭介、俺決めたよ。これが俺の選択だ。

最後までお読みいただきありがとうございました!

次回から一日おきの投稿になるかもしれません。2週間後には毎日投稿を再開したいと思います。

次回もお楽しみに!

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