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第5話 異世界カルチャーショック


「……フハッ?」


 俺が勇者?


 はっはっはっ、またまたご冗談を。


 つーかやっべ、ちょっと鼻で笑っちゃった。


「うーむ……いや、なるほど……よく見ると確かに勇者とは思えんな……」


 なんか不躾(ぶしつけ)にジロジロと眺めてきた。いや待てこの状況。俺、勇者じゃないとわかったら完全に身元不明の不審者じゃね? どうしよう、やっぱり勇者ですとか言っとくか?


「村長、しかしこの者が異界から来たのは間違いなさそうです。王都でも見たことがないような精巧な人形を所持しているのはもちろん、初対面時の受け答えに嘘はないと判断しました」


「ダイアン、お主がそう言うのならば信じよう。となると……お主は一体何者なのじゃ?」


 男2人から『YOUは何しに異世界へ?』みたいな視線を向けられ、戸惑う。いや、俺コミュ障なんです勘弁してください。



『魔法陣らしきものが出現してラブドール共々いきなり異世界転移させられました。ここまでは歩いてきました。あと俺はともかくこのコに服ください』とか自己紹介と共に語る。村長はやはり村長でギエン村長。筋肉モリモリマッチョマンの男性はダイアンさんといい、村長の右腕にして村の顔役といったところらしい。服は気前よく2人分くれた。1人暮らしぽいのになぜ女物の服がすぐに出てきたのかは謎だが。


 そして気になる『勇者』発言に関しては、伝説と化した予言のせいだと判明。


「それは数百年前の建国当時、初代国王の側近だった賢者が死に際に残したと伝わる予言なのじゃ。すなわち 【 世に暗闇訪れし時、異界より勇者が現れる。その者、黒髪(こくはつ)にして四つの目を持ち、摩訶不思議な力を操りて、大いなる災いを退(しりぞ)けん 】 」


「この話は子供でも知ってるぞ? あんた、ホントにこの世界の人間じゃなさそうだな」


 いやいやいや、拡大解釈もいいところだろ!? ただの偶然の一致じゃねーか!! 夕暮れ時に遭遇した黒髪に眼鏡、アルコールスプレーとスマホを持っただけの異世界人にできることなんて精々が手指の殺菌消毒、大いなる災いなんて退けられるわけねーでしょーが!! 


「ああ、それには同感だ。その人形を抱いたまま靴も履かずにここまで歩いてきたという根性は認めるが、俺にはどう見てもあんたが勇者とは思えない」


「そうじゃな。お主が悪意なき者なのはわかるが、同時に覇気もない」


 デスヨネー。つーか異世界にきても初見から俺の評価が低いのは変わらんのな?


「とりあえず、今更だが所持品の確認をさせてもらえるか? 異界の道具に興味もあるしな」



 アルコールスプレー、スマホ、腕時計。一つ一つに新鮮な反応を示してくれるので、説明するのにも力が入る。


 ダイアンさんは太陽電池型腕時計を見て「よくできてるな……数字は異界のものだから使えなさそうだが。これ、その人形が付けてるのとお揃いなんだな?」とニヤリ。ドールとお揃いのアイテムを持つのって、みんなやってることだよね?


 村長は村長でスマホにダウンロードしていたいくつもの曲を随分と気にいったようだ。次から次に再生しては聴きいっている。なお充電器は持ってない。そもそもコンセントなさそうだし。


「俺の好きな曲ばかりだから気に入ってくれたのは嬉しいですけど、あんまり電池残ってないからそのうち聴けなくなりますよ?」


「デンチ? 魔力を流せば聴けるんじゃないのか?」


「え?」


「え?」



 異世界カルチャーショックに戸惑いつつも、所持品の確認作業を通じて俺に対する警戒心はかなり薄れたようだ。所持品は全て返してもらえたし、この世界の基本的な知識も教えてもらえたし、当面の住居も貸してくれることになった。


「お主が異界から来たということは、ここにいる3人だけの秘密じゃぞ?」


 鋭い視線で釘を刺される。『行くアテがないのなら、当分の間この村に住んだらいい』ってのは、その方が監視しやすいって意味もあるんだろうな、やっぱり。


「ところで気になってたんですが、この世界のゴーレムってどんなものなんですか?」


 凛菜を見てゴーレムだと思ったということは、この世界にもリアルな等身大人形が存在している可能性がある。しかも『ゴーレム』だ。もしかしなくても自律可動人形なのでは?


「ああ、ゴーレムってのはまあ……人間を模した魔導機械というか……」


 ダイアンさん、なぜ言い淀む? 続きはよ!!


「それはわしから説明しよう。古き悪しき制度、要するに奴隷制度の撤廃に伴い、その代わりを為すべく作り出された、心のない哀れな労働用魔導機械のことじゃよ」


 ……………


 ………


 …


 話を聞いている最中、ずっとどこか遠い目をして沈黙を保っていたダイアンさんが、思い出したかのように凛菜に目を向け「人形か……」と呟いたのが印象的だった。




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