第17話 麦わら帽子を被って
舗装こそされていないものの、普段から定期便馬車が通っているせいか、道にはクッキリと轍がついている。これを目印にしつつ、踏まないように気をつけてさえいれば比較的安全な旅と言えそうだ。御者も『道なりに行けば、魔物には滅多に遭遇しない』と言ってたし。……フラグか?
「ノ、ノダ……そろそろ休憩しませんか……?」
「わかった。みんなもいいか?」
真っ先にへばったのはソラだった。他のみんなも、口には出さなかったが結構キツそうだ。体力はありそうだから、これは魔力の消耗かな? そういえば俺も強化屋初日に魔力をぶっ通しで流してたら意識朦朧としてたっけ。
「チャ、チャリってこんなに疲れるものなんですね……」
「魔力を流しっぱなしにしてるからだろうな」
「なんでノダはピンピンしてんだよ!? お前のチャリが一番重いんだろっ!?」
「俺は毎日、魔術の修練を欠かさないからな。多分MPが多いんだろう」
「えむぴー?」
「ああ、魔力の総量、みたいな。魔力が筋肉だとしたら、俺はダイアンさんみたいな身体してるだろうな、ってことだよ」
「えぇ〜……ムキムキのノダとか気持ちわりぃよ……」
「ノダさん! お願いですからそのままでいてくださいっ!!」
ムギちゃんはなぜに必死なのだ? あとリク、軽々しく気持ち悪いゆーな。それ、かなり人を傷つける言葉だからな?
「わ、悪かった。気をつける。……ごめんな、ノダ」
「この分だと、予想以上に時間がかかりそうですね。今日中に村に戻るのは無理ではないですか?」
「そうだな。なんとか日中に街まで行って、安全地帯で野宿するか」
話題を変えてくれたソラに乗っかり、提案する。残念だが、5+1人で宿に泊まれるほどの金はない。当然ムギちゃんと凛菜は別部屋になるわけだし。野宿への覚悟は出発前に全員に確認済みだ。元いた世界では若い頃に何度か野宿したことがあるが、ムシに刺されるわ変な人に声かけられるわ、そもそも気楽に眠れる場所がないわで大変だったのだ。季節によっては夜露でビショビショになるから屋根が必須だし。
しかし、凛菜との初めてのお出かけが大人数で、しかも異世界とはなぁ〜。
「いつまでも休んでたら日が暮れちまうぜ! まぁ正直まだキツいけど、ちょくちょく休みながらでも前進しよーぜー!」
リクが持ち前のリーダーシップを発揮してくれる。ありがたい。この世界に来て1年以上。大分変わったとは思うが、元々俺はチームプレーが苦手だし、人に指示するとなると尚更なのだ。特に今回、俺とみんなでは疲れ具合がかなり違うようなので、休憩のタイミングがよくわからない。リクが『そろそろ休憩だー!』とか言い出してくれれば、ものすごく助かる。一応、俺が引率者で最年長なのだが、そこは適材適所ということで。
そして。
それからも何度となく休憩を挟みつつ、日が落ち始める中、街を目指す俺たちの前に……ソレは現れた。