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第16話 普通の朝と、少しの幸せ【ミィナ視点】

 朝の光が、カーテンの隙間からすこしずつ部屋に落ちてくる。

 ぬるくて、きらきらしていて、ミィナはそれがすきだった。


「んー……」


 ふわっと伸びをして、おふとんから抜け出す。

 まだ、おにいちゃんたちの布団からは寝息が聞こえてる。

 でも、ミィナはこっそり台所に向かった。

 今日は、おてつだいの日なのだ。

 

   ▽

 

「……あれ?」


 いつもよりちょっと早く起きたはずなのに、台所にはもう人の気配があった。

 のぞいてみると――


「……ん……」


 カイおとうさんが、寝ぐせをつけたまま、たまごを割っていた。


「おはよう、ミィナ」

「おとうさん、おきるのはやい!」

「……パンが、こげる前に目を覚ましただけだ」

「ふふ、こないだ、まっくろだったもんね」

「……言うな」


 でも、おとうさんはちょっとだけ笑っていた。

 ミィナも笑った。

 

「ミィナも、なにかする!」

「……じゃあ、これ。ハムを、並べるだけ」

「できる!」


 椅子にのぼって、お皿にくるくるとハムを並べていく。

 ちょっとだけバラの形になるようにしてみた。


「……うまいな」

「へへー。おはな、だよ。おとうさんのおかお、ちょっとおこってるみたいだから、おはなあげるの」

「……怒ってない」

「でも、すぐ『むっ』てするよ?」

「……そうか」


 おとうさんはちょっとだけ眉をしかめたけど、

 ミィナはそれが「うん、やっぱり怒ってないな」ってわかるから平気だった。

 

 食卓が整って、ティノとリゼルも眠そうな顔でやってきた。


「おはよー……ミィナ、なんでこんな元気なの」

「おはよ!きょうのハムは、おはなだよ!」

「おお!ほんとだ!うめーな、ミィナ!」

「えへへ〜」


 おとうさんは、無言でコップに水を注ぎ、全員の席を見てから自分も座った。


「……いただきます」

「「「いただきます!」」」

 

 こうやって、みんなでごはんを食べてると、ミィナは、たまにふしぎな気持ちになる。

 おかあさんがいた頃、朝ごはんはいつもにぎやかだったけど――今もちゃんと、にぎやかで、あたたかい。

 さみしくない。

 さみしかったけど、今はもう大丈夫。

 

 食べ終わったあと、ミィナはそっと、おとうさんのそばに座った。


「ねえ、おとうさん」

「……ん」

「おかあさんがいたときも、たぶんこんな朝だったよ」

「……そうか」

「うん。でも、ミィナ、いまの朝も、だいすき」

「……ありがとう」


 おとうさんの手が、そっとミィナの頭に乗った。

 大きくて、すこしだけざらざらしてて、でも、あたたかい。

 ミィナはその手に、そっと額をくっつけた。

 それは、なにも言わなくても「だいすき」が伝わるやりかただった。

 

   ▽

 

 後でリゼルが言っていた。


「今日のおとうさん、ちょっとだけ柔らかい顔してたよ」


 ティノは


「それはミィナのおかげかも、だな!」と得意げに言っていた。


 でも、ミィナは知っている。

 おとうさんの顔が柔らかかったのは――きっと、おとうさんがいまを守っているって、ちゃんと感じているから。

 それが、ミィナにはわかったのだ。


読んでいただきまして、本当にありがとうございます。

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