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2話

 俺があのガチャを引いてから早いもので5年の月日が経過した。


 俺はエルヴィア王立学園の3年生になっていた。


 エルヴィア王立学園は、原作ゲーム「幻獣戦記アルカディア」の舞台でもある。

 5年制の教育機関であり、幻獣を使った戦闘やその生態について学ぶ場だ。


 1年生では、幻獣に関する基礎知識を学び、属性の相関や召喚契約の理論を中心に座学が行われる。

 2年生になると、幻獣と共に戦うための基礎体力づくりや、簡単な連携訓練が始まる。


 そして3年生からは、いよいよ幻獣を駆使した対人戦が解禁される。

 ここから先、学内ランキングが公開され、実力によって評価が大きく変わる世界だ。


 学園には2つのランキングが存在する。学年ランキングと総合ランキングである。

 学年ランキングは同学年内での順位を示し、上位10名は総合ランキングにも登録される。総合ランキングは全学年の実力者が競う場であり、学園内の最強を決める指標となっている。


 1、2年の間は、正式なランキングが存在しない。

 その代わり、基礎能力や学力試験、幻獣に関する座学、実技訓練などの評価が蓄積され、3年進級時に学年ランキングが確定する。

 特に幻獣のランクは大きな評価基準であり、強力な幻獣を持つ者は高順位からのスタートとなりやすい。


 だが、3年生からは違う。

 ランキング変動の主な要因となるのは、年に4回行われる学内大会と、正式な手続きを経て行われる決闘だ。

 特に学内大会は大きなイベントであり、ここでの成績が学年ランキングの大半を決めると言っても過言でない。

 

 3年進級時、俺の学年ランキングは100人中80位。

 幻獣のランクは評価基準の中でもかなりのウェイトを占めているため、俺の《ミラナイト》が足を引っ張っているのは間違いない。

 いや、まぁ、召喚獣の歴史とか国家間の関係とか暗記項目が多すぎて苦労していたり、文化も普通に発展しているせいで学力チートが通じていなかったりなども少しは影響しているのかも知れないが……。

 

 だが、そんな評価も今日で変わる。


 今日は3年生1回目の学内大会個人トーナメント戦の開幕日だ。

 予選が1日で、本戦が2日間にかけて行われる。今回の参加者は3年生92名。今日の予選会でまず32名にまで絞られる。


 そして、初めての対人戦に挑む俺たち3年生の緊張をほぐすため、学園は「特別試合」を用意した。


 それは――学内総合ランキング1位 vs 2位の模擬戦。すなわち、学園最強の召喚士同士の戦い。


 学園の狙いは明白だ。

 トップの実力を見せつけ、俺たちの士気を高めること。

 だが、俺にとってはそれ以上の意味があった。


 総合ランキング1位と2位――それがこの学園の「頂点」だというのなら、俺は必ずそこに辿り着く。


 「見せてくれ、この世界のトッププレイヤーの実力を!」


 □■□■


「一人で何言ってんだ? リオ」


 不意に肩を叩かれ、俺はハッとして振り返った。

 そこにいたのは、俺のクラスメイトで数少ない友人のアルグだった。


 アルグ=フルフォード。召喚する幻獣は風属性の《アルミラージ》。ランクはB。

 学内ランキングは俺より少し上の74位。


 原作ストーリーには登場しない、完全なモブキャラだ。

 だが、俺にとってはこの世界に来て以来、一番長く付き合っている友人だった。


 仲良くなったきっかけは――学力試験での落ちこぼれ組。

 お互いに「このままじゃヤバい」と焦りながら、追試験を受けたのも今ではいい思い出だ。


「アルか。驚かせんなよ。今日の試合意気込んでただけさ。」


「おう、そうかい。飲み物無いだろ、やるよ」

 アルグは片手に持っていたジュースを差し出してきた。


「ありがとう」

 俺はそれを受け取り、一口飲む。柑橘の爽やかさが喉を潤し、少しだけ緊張が和らいだ。


「出店がたくさん出てたぜ。まるでお祭りだな」

 アルグが周囲を見渡しながら笑う。

 普段は訓練や授業で真剣な顔をしている連中も、今日ばかりは浮ついた様子だ。


「まあ、どんな奴がいるのか、学外の連中も気になってるんだろ」

 俺も観客席を見上げる。

 学園関係者以外の姿がちらほらと見える。

 貴族の使者らしき者、軍の関係者、さらには商人風の男まで――。

 召喚士の戦闘能力は、軍事やビジネスにおいても価値が高い。

 特に上位の実力者たちは、卒業後に国の戦力として迎えられることも多い。

 当然、こうした連中が有望な生徒に目をつけるため視察に来ているのだろう。


「そうだな。だけど、多くの注目はこれからの特別試合だろ」

 アルグの言葉に、俺は頷く。

 やはり、一番の見どころはこれから始まる戦いだ。


「ああ、総合ランキング1位天地双極竜てんちそうきょくりゅう使いのルシウス=ヴァルデンクと2位のホーリー・シャイン・フェニックスを操るセシリア=フレアの一戦」


 学園最強と名高い二人の激突――これを見に来た者も多いのだろう。俺もまた、原作の知識を持つ者として、この戦いを見逃すわけにはいかない。


 この二人は、原作「幻獣戦記アルカディア」のにも学園最強の召喚士として登場していた。主人公の2学年上ということで序盤から育成を進めなければ挑戦すらできないやり込み要素の1つになっていた。


 ルシウスは、火と水という相反する属性を完全に操ることができる唯一の召喚士。

 彼の幻獣《天地双極竜》は、通常の属性相性を超えた攻撃を仕掛けてくる。ゲームでは俺を含めトッププレイヤーたちでも頭を抱えた存在であった。


 そして、セシリアは、学園で唯一の「不死鳥使い(フェニックスロード)」。

 彼女のホーリー・シャイン・フェニックスは、回復と攻撃を両立する万能型で、長期戦になればなるほど圧倒的な強さを発揮する。特にPvPでは、「時間さえ稼げば負けることはない」とまで言われる耐久性能を持っていた。また、セシリア自身も光属性の防御魔法を得意としていて、召喚士本人を叩く戦法が通じない。


 この二人の戦いは、原作では見られなかった。

 そのバトルが、今まさにこの目の前で繰り広げられようとしている――。トッププレイヤーとしてこれほどまでに胸踊る試合はないだろう。


 「そういえば、ルシウスはイクイップ戦、セシリアはバディ戦が得意だったな……」

 アルグがボソっと呟く。


 そう、「幻獣戦記アルカディア」には召喚士の戦闘スタイルが、2つある。


 【イクイップ戦】

 幻獣を装備のように纏い、その力を直接使うスタイル。

 召喚士自身が戦闘の中心となり、幻獣の力を肉体に宿して戦うため、よりアグレッシブな戦闘が可能。


 【バディ戦】

 幻獣を戦場に召喚し、召喚士と共に挟撃を仕掛けるスタイル。

 召喚士は幻獣を後方から指揮するだけでなく、自身も前線に立ち、幻獣との連携を駆使して戦う。


 そして、この2つのスタイルのどちらが強いのかはゲーム内でもストーリー上でも結論が出ていない。


「だからこそ、この戦いは注目を集めるんだよな」

 俺はアルグに答えた。


 □■□■


 「これより、3年トーナメントの開幕に先立ち、特別試合を行います!」

 魔法増幅装置を通したアナウンスの声が学園内に響き渡る。


 観客席から大きな歓声が上がる。

 生徒たちだけでなく、学外の来賓たちもこの一戦に注目している。


 「対戦するは、総合ランキング1位と2位!」


 「まずは、総合ランキング2位! 不死鳥の加護を受けし光の巫女、セシリア=フレア!」

 純白のローブをまとい、黄金の髪を揺らしながら、少女が静かに舞台へ入場してきた。

 

 「対するは、総合ランキング1位! 火と水の双竜を操る、ルシウス=ヴァルデンク!」

 赤と青、二色の魔力が渦を巻きながら、長い黒髪をなびかせて長身の男がゆっくりと闘技場へと歩み出る。


 「学園最強の称号を争う二人の戦いが今まさに始まろうとしています!」

ブックマーク追加ありがとうございます!

書き溜めをしてから投稿する予定ですので、もうしばらくお待ちください。


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