構造を理解せよ
『称号【魔王Lv1】を獲得しました』
『【魔王Lv1】の効果により、《ステータス完全理解》が可能になりました』
目が覚めると、唐突に管理者に告げられた。
なんでもらったのかも分からない。
不思議な事もあるもんだわ。
まぁ、ステータス開くか。
『アマガキ・クロシ 年齢21才
固有スキル【文房具】
獲得拡張スキル【サイズ指定S,A,B】
ステータス
攻撃 12
防御 8
スキル10
獲得スキル
【爆速LV2】
【絶望LV1】
【移動距離Lv2】
【殺戮LV1】
【魔王Lv1】
【RC物質Lv100(C)】>』
ぬぁ、ぬぁにぃ!?
なんか【RC物質】とかいう謎称号があって、さ、更にそれがLv100!?
横に書いてある(C)ってのは『カンスト』のcか?
それと【魔王Lv1】・・・意味が分からない。
魔王とかこの世界にいんのか?いたらアツすぎんだろ!
アマガキ本社前。
ナターシャとミコトさんが社宅から出てきて伸びをしていた。
「あ、アマガキさん、よろしくです」
ナターシャがペコリとおじぎをする。
「僕、アマガキの今後の予定について考えてきました」
俺がそういうと二人共俺を見る。
「ナターシャの【構造理解】で僕の出す文房具の構造を理解してもらう。それに必要な材料を集め、僕が生成しなくても製造できるようにする。求人も市場に出し、社員を増やす。出来た文房具は市場で売る。これでどうだ?」
「いいと思います」
ナターシャは元気にうなずく。
この子すごい元気。謎称号二つ追加で戸惑ってる俺よりだいぶ元気。
本社の天井から蜘蛛のような魔物がぶら下がってきた。
管理者は告げた。
『《ステータス完全理解》発動!』
『アンダンテスパイダー ♀
固有スキル【邪糸】
ステータス
攻撃 24
防御 22
スキル 16』
なんか出てきたけど今は戦闘!
「【拡張スキル[サイズ指定S]】」
鉛筆で容赦なく蜘蛛をぶっさす。
飛び散る体液。
グロっ。
そう思った矢先、俺の記憶が揺さぶられた。
何かを思い出すような感じではなく、こう、なんというか。
記憶を思い出す事を阻止してるみたいな・・・?
まぁ、いいか。
こうやって何でも『後で考えるリスト』に入れ、後で結局考えないのが俺だ。
「これを【構造理解】してくれ」
ナターシャに体液まみれの巨大な鉛筆を差し出す俺。
あ、ミスった。これ、引かれる。
「う゛ヴ、グェ、は、はい~」
引き方がえげつないね、ナターシャ。
「はい、これ・・・」
小さめの綺麗な鉛筆をナターシャに差し出す。
「はい。【構造理解】します。RC物質操作。ノードル解析許可取得。解析開始」
ナターシャの周りに0と1が大量に表れる。そしてその数字は舞う。
「・・・黒鉛、粘土、木材で構成されていますね。この木材はこの世界には存在しませんね・・・もしかしてアマガキさんこの世界の人間ではない?」
ナターシャ、鋭いね。
「ま、まぁ、そうだよ?」
「えぇっ!どういう事!?」
ミコトさん。なぜそんなに驚くのだ。
「かくかくしかじかで前住んでた世界で死んで・・・」
「死んで!」
ナターシャが復唱する。
「目が覚めたら不法労働場で掘っていて・・・」
「掘っていて!」
復唱しなくていい!
「ミコトさんと一緒に気付いたら文房具売ってた」
「売ってた!」
そこ驚くところじゃない。
◇ ◇ ◇
こうして俺たちは、元素鉱物のグラファイト―――黒鉛と、代用できる木を探す旅に出た。
資金は今まで稼いだ金だ!
馬車を借りた。馬ごと。
馬を操るのはミコトさんだ。
【乗馬Lv8】を持っているらしい。
俺とナターシャは貨物を載せる場所に座り、振動を身で感じる。
あこがれてたんだよね。こんな旅。
「ナターシャ、使えそうな木材をリストアップしてくれたんだよね?」
「はい。まず、アメージンググレイス。略してアメグレ」
あの名曲を略すな。
「直訳、『すごい草』」
すごい草て。
「この植物は草自体もすごいのですが、その草が付く木自体もすごいです。この前実際にアマガキさんのエンピツを使ってみたのですが、ある程度力を筆より入れる必要がありました。それなので、もしかすると、力を入れすぎて鉛筆を折ってしまう人もいるかもしれません」
長文セリフありがとう。
鉛筆は芯は折ったことあるけど丸ごと折ったことは無いけどな・・・
「つまり、丈夫な枝を持つアメグレがいいと思います!」
それには俺も賛成だ。
◇ ◇ ◇
世界最大のダンジョン、ライケン・ラビリンス。
称号がカンストしている魔物がうようよいる。
そこに生息する魔物の一つであるヴァルキリーインベィディア。
所有称号は、【殺戮Lv100(C)】、【炎の力Lv93】、【爆速Lv100(C)】。
このダンジョンの中でもトップクラスの実力を持っている。
今のアマガキが戦ったら・・・想像しないでおこう。
アレ?もう完成しちゃった。早いけど投稿だ!