ヘロー管理者、ヘローゴミステータス。
「これが今日泊まる宿です」
「・・・これが?」
目の前に立つツタまみれで庭に雑草が生えまくって、窓に手形らしきものがある、この宿に?
巨大市場。
開店前から客の集まる、『アマガキ』と書かれた提灯を置く屋台。
「よっしゃー!2日目オープン!」
開店を俺が告げると、ミコトさんの元へ沢山の客が競うように並びに行く。
ミコトさんが美人だから・・・ってのもあるからな。
「はいは~い。皆落ち着いて~。商品なら無限にありますので!」
ナイスミコトさん。
ん?あのお爺さんこの前の・・・
お爺さんは列の一番前割り込んだ。
「あの、列の最後尾に・・・」
「儂は帝国宮廷スキル使いのファラエン」
周囲の雰囲気が固まる。
え、帝国宮廷・・・何て?
「……お貴族様がこの屋台に何か、法には違反していないはずですが」
「大臣はこの店が気に入ったと仰せだ。よって、この店に国から多額の資金を授ける」
沈黙。
つまり、国から支援金が出て、それこそ会社経営できるって事?
経済学部に通っていたこともあり、実際に経営者になるのは非常に興味がある。
というか、なる計画。
だがしかし・・・
「お断りします」
俺の発言に並んでいた客、帝国宮廷なんたらの爺さんも目を見開き、信じられない様子だ。
「確かに大臣に気に入られたという事実は嬉しいです。ですが、この事業は自分とミコトさんで大きくしたい」
気付けばこの屋台の周りに沢山の客が集まっている。
「絶対にこの事業は大きくしてみせます。その時に是非、見てもらいたい」
沈黙の後、ファラエンが口を開いた。
「了解した」
客たちは何が起きたのか分からないような顔をしていた。
だが、リピーターであり最初の客の若い男の拍手をきっかけに、市場の一角が拍手で包まれた。
その日の宮廷大臣執務室。
「ほう・・・断られたか」
大臣は蓄えた顎髭をいじり、窓の外に広がる帝都リーテルの景色を眺めながら言った。
「はい、申し訳な・・・」
「良い良い」
ファラエンの言葉を遮る大臣。
「立派な心掛けじゃ・・・我が都市にはそんな人材はなかなかおらぬ。感心じゃ」
その夜。
Wi-Fiは文房具、Wi-Fiは文房具・・・
ボムン。
凄い。出た。
次はパソコンを出して、え~と・・・
翌日早朝。あのぼろっぼろの宿にて。
今日はパソコンの取り扱いも始めるつもりだ。
「見て!この朝刊!」
ミコトさんが新聞を抱えて俺の部屋にやってきた。
「ん?どれどれ?『市場のある屋台。事業の心得で一躍時の者』・・・これってもしかして、俺たちの事か?」
「そうですよ!この勢いで会社を・・・」
『ピンポ~ン!【知名度Lv1】を獲得しました!』
「へ?」
ミコトさんの言葉を遮った俺の疑問符は狭い部屋に響く。
「いや、今天の声が・・・」
「それは、管理者です」
管理者?
「管理者は称号を与えてくれる謎の何かですね」
すごい漠然としてるな。
存在というよりかは概念って感じか。
あとピンポ~ン!って、ネタなんだろうか?
『ピンポ~ン!【遅刻魔Lv1】を獲得しました!』
「遅刻魔・・・?」
「あ!もう開店時間ですよ!」
「マジすか!急げ!」
『ピンポ~ン!【爆速Lv1】を獲得しました!』
屋台の出店時間に遅れたのにも関わらず、多くの客が待ってくれていた。
屋台にパソコンとWi-Fiを並べる。
「それは?」
リピーターのナイスガイが尋ねる。
いい質問だ。
「これは、メッセージのやり取りが手紙を使わずにこの者同士でできるものです。いずれ、ゲームなどの機能を追加しようと思っているので、是非ともお買い上げ頂きたい!機種名はamagaki1です!今なら大特価!たった10000G!」
ミコトさんから聞いたのだが、馬を買うのにかかる金は40000Gらしい。
つまり、馬の四分の一でこんな便利なものが買えるというのだ!!!!
どう?お得じゃない?
お得だと思ったよね!
案の定売り上げは凄かった。
◇ ◇ ◇
そしてその夜。
俺はミコトさんの部屋に呼ばれた。
「ステータスを見てください」
開口一番、知らない言葉。
「ステータス?」
あ、あれか、主人公の攻撃力とかだろ?
俺が読んでたWEB小説の主人公の攻撃力最終的に1000桁行ってたからな。
ステータスよ!開け!
出てきた数字に絶望。
何?攻撃0って。
防御だけ2で草。
「ちなみに、ミコトさんのは・・・」
ミコトさんの頭上に展開されるステータス画面。
オゥ。すげぇ。
「えっと、HP198、MP109、STR328・・・まぁ、平均ですね」
これが平均だったら俺は何なんだよ。
「えっと、それで今後の経営について・・・」
待って待ってツッコませて。
「これで合計100000G以上の売り上げとなりました。会社設立の資本金としては充分ですね」
「と、言う事は・・・?」
「はい!帝国国民事業部に申請して会社を立ち上げることができます!」
帝国・・・何て?
「帝国国民部の内の一部署ですね。帝国国民部は、事業部、福祉部、労働管理部に分類されます。事業部は国民の事業の手助けをしたりします」
「おい!労働管理部!不法労働場はどうした!」
「・・・労働管理部の部長、ナマケダイスキ・グウタラサイコウは、殆ど仕事をしません。だから、不法労働場が生まれるのです」
その部長の名前は、ネタなんだろうか・・・
「とにかく、申請しましょう!」
アマガキ・クロシ 年齢 21才
固有スキル【文房具】
獲得拡張スキル【 】
ステータス
HP 4/4
MP 0
STR 0
INT 2
獲得称号
【知名度Lv1】
【遅刻魔Lv1】
【爆速Lv1】
全体評価
ℱ