はじめまして、こんばんは
取れてしまったポタンを丁寧に縫直し、針と糸を裁縫セットに片付けてから差し出す。
「はい、ポシェット直ったよ」
「わあ……ありがとう、リコちゃん!」
私の友達、鍵山ももちゃんは嬉しそうに笑った。
「こんなに綺麗に直しちゃうなんてすごいね、なんだかお母さんみたい」
「えー、そうかなぁ?ふふ、ありがとね」
すると、ガラガラと扉が開き、先生が顔を出す。
「ふたりとも。仲良しなのはいいけど、もう帰る時間だよ」
「え?……あ、本当だ!リコちゃん、早く準備しよ!」
「うん!もう帰らなきゃだね」
時計を見ると、もう4時半だった。
急いで真っ赤なランドセルを背負い、先生に挨拶をして教室を飛び出す。
「このは先生、さよーなら!」
「はい、さようなら。廊下は走らないでね〜」
ももちゃんと帰り道を歩く。
公園に、野良猫に、大きなアンズの木。
「……懐かしいな」
「あ、そうだよね!リコちゃん最近忙しそうだったし」
「うん……卒業式の準備とか、色々あって」
突然、夕暮れの空が曇り、雨が降り出した。
「あっ、雨……」
「わたし、ここの道曲がらなきゃ!じゃあね、リコちゃん!」
「うん。ももちゃん、またね」
手を振り、急ぎ足で帰るももちゃん。
「……私も、帰らないと」
キラキラと輝く水滴を目に収めながら、私は帰路についた。
・ ・ ・ ・
太陽は沈み、星が輝きはじめた。
「……お母さん、おやすみ」
「おやすみなさい、いい夢見てね」
ぬいぐるみを抱え、自分の部屋へ向かう。
ああ、寝たくないな。
寝たら明日が来る。卒業式の日も近づく。
大人になる日が、だんだん近づく。
涙を堪えながら、私は眠りについた。
読んでいただきありがとうございます!
この作品は私の処女作で、拙い部分もあるのですが 暖かく見守ってくださると嬉しいです :-)