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[ 089 ] 眠れない夜の始まり

「なんの騒ぎですか?!」


 ルヴィドを問い詰めようとしたところに、受付嬢のプリンとシルフィがギルドに戻ってきた。ハリルベルもルヴィドの雷魔法による麻痺が解けたのか一緒にいる。


「ロイエ! 大丈夫か?!」

「封印教団?! ギルドで何をしていたんですか!」


 臨戦態勢を取るプリンとは対極して、ルヴィドは両手を上げて敵意がないことを示した。


「いえ、たまたまギルドの前を通ったら、ギルドの中でマスターのルーエさんが変な装置を持ってましてね? それを地面に突き立てた瞬間、モンスター前兆の地震が発生したんですよ」


 僕が飛び込んだ時には、既にルヴィドがルーエから謎の装置を奪った後だった。


「私たち封印教団は常日頃から注意喚起してましたよ? 誰かがモンスターを呼んでいると」


 その事実に間違いはなさそうだ。いろんな人の話しを総合すると、モンスター発生の前には謎の地震がある。そしてそれはルーエさんの持っていた装置が原因の可能性が高い。


「私はルーエさんから事情を聞こうとしたところ、あそこの壁をぶち破って怪盗ノワールが現れまして、装置は彼に奪われました」


  あえて彼と言ったのは情報を混乱させる狙いだろうか。プリンが指の刺された壁を確認すると「あんなデカい穴をギルドに……」とワナワナ震えている。


「そして怪盗ノワールとルーエさんが戦った結果がこの水蒸気でして、ルーエさんは床の穴から逃げてしまったようです」


 さらに穴の空いた床を確認して、プリンの顔は悲壮感に染まった。


「ガンツ! あんたも見てたんでしょ?! 本当なの?」

「へい、本当です」

「僕は少し遅れて駆けつけましたが、ルヴィドさんの説明した通り、怪盗ノワールが壁をぶち破ったのと、ルーエさんが床に穴を開けて逃げたのは本当です」


 それを聞いてプリンは頭を抱え、シルフィがポンポンと背中を優しく叩いた。


「市長の睨んだ通りになっちゃいましたね」

「あーもう! 済んだことは仕方ないわ。とりあえずモンスターの処理を優先!」


 なんだって? 市長のアルノマールは、ルーエがモンスターを呼び出した犯人だと見抜いていたのか?!


「監視班によると、正門に向かってきているらしいわ! 封印教団!少しは戦えるんでしょ?! 報酬は出すわ!手伝いなさい! シルフィは避難誘導! 私は市長に連絡を取ってみるわ!」


 プリンが次々と指示を出していく。マスターであるルーエが不在なら彼女らが代わりに動くしかない。


「報酬楽しみにしています。ガンツさん行きましょう」

「ルヴィドさん! 僕との話がまだ終わってません!」

「ふふ、なら付いてきてください。私もロイエ君に話したいことがあります」


 行くしかない……。ルヴィドには聞かなきゃいけないことがたくさんある。


「ハリルベルは、リュカさんと合流して正門へ!」

「わかった!」


 ギルドを出ると、昼間と同じ警告音が大音量で鳴っていた。ルヴィドとガンツは僕を待つことなく走り出している。


 逃げ惑う人達に逆らって見失わないようにルヴィドを追う。この街で一体何が起こっているのか、ルヴィドはその全てを知っている気がした。

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