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[ 076 ] 回復術師ミルトちゃん

「あ、あんなに堂々と回復術師だなんて! ちょっと僕、止めてきます!」

「あ……ロイエ君!」


 呼び止めるリュカさんを振り切って、慌てて馬車を出ると回復術師ミルトの元へ走った。


「き、君! そんな街中で堂々と回復術師なんて名乗っちだめだよ!」

「あら? 封印教団に入信ですか?! ありがとうございます!」

「いやいや! 勝手に入れないで! そうじゃなくて! 回復術師ってバレたら王国騎士団に「一名様ご入信でーす!」

「ちょっとおおおー!」


  だ、ダメだ。この人……全然人の話聞いてくれない。トロイさんといいフォレストの人は我が強いのかもしれない……。


「ミルト、無理矢理はよくないよ」

「はーい」


 ミルトと名乗った女の子と、一緒に教団の勧誘していた男性が彼女を止めてくれた。


 男性はミルトと同じく、白を基調とした神父のような服装で、背中に『モンスター封印』と書かれたド派手な祭服を着ている。背筋がピシッとしており、オールバックに固定した黒髪とメガネ姿から、真面目さが伝わってきた。


「でもさー? そんなに回復術師を否定するなんて、あなたもしかして回復術師?」

「え……」

「なーんてねー。 お? そこのお姉さん封印教団どう?!」


 次のターゲットを見つけたのか、ミルトはどこかへ行ってしまった。


「すみませんね。ミルトが粗相を……」

「いえ、でも本当に回復術師なら名乗らない方が良いと思いますけど……」

「ああ、心配させてしまって申し訳ません。彼女は回復術師ではありませんよ。ああ言った方が注目度が上がるでしょう? と、彼女が勝手に名乗っているだけです」


 なんだ、そういう事か……勧誘するための餌としては、確かに回復術師という単語は、注目度が高い。


「ですよね。回復術師がいたら王国騎士団が確保に来ますし」

「回復術師を求めているのは、我ら封印教団も同じです。世界各地で人々へ被害を与えるモンスターを封印するには、どうしても回復術師の力が必要なのです」

「ど、どうしてモンスターを封印するのに、回復術師の力が必要なんですか?」

「おや、興味を持っていただけました? よろしかったらあちらで入信の手続きをしつつお話を……」

「ロイエ君! ダメですよ!」


 思わず彼の話に耳を傾けてしまっていた。危ない。これがいつのまにか入信していたってやつか、話術が上手すぎる……。


「危なかった……ありがとうリュカさん」

「おや? こんなところで会うとは……」

「封印教団なんて嘘っぱちの集団ですから! ルヴィドなんかの話は聞いちゃダメです」

「それは聞き捨てなりませんね。リっちゃん」

「ちょ! その呼び名をここで……! ほ、本当のことでしょう? 入信させて多額のお金を集めてる詐欺集団じゃないっ」

「布教活動や封印の準備には、多額の費用が必要なのですよ。どこぞの魔法研究所とは違って、適切な金額しか頂いておりません」


 封印教団の神父とリュカさんの間で火花が散ってる……。ルヴィドってのは、神父さんの名前なのかな? 二人は知り合いなのか?


「さ、行きますよ。ロイエ君」

「ロイエさん? もし興味がありましたらここにいますので、いつでもどうぞ」


 封印教団の神父は、ひらひらと手を振ってくれた。その横でちょこまかと勧誘をしているミルト。強烈な二人だ。


「リュカさん、あの人と顔見知りなんですか?」


 馬車に戻りアルベルタ商会へ向けて走り出した馬車の中から、馬を御してるリュカさんに話しかけてみた。りっちゃんと呼んでいたからそれなりに知った仲なのでは。


「うー。そのぉ……。彼はルヴィド・グロースといいまして……。あのー、元彼です……」

「え……」

「まさかフォレストで勧誘活動をしてるとは……誤算でした」


 まさかリュカさんに元彼が居たなんて! なら彼が教団にハマって別れて……みたいな流れ?! あまり触れないであげよう。


「そ、そうですか、踏み込んだ質問をしてしまって申し訳ありません……」

「いえ――。はぁ」


 リュカさんが大きな溜め息を吐いてる……。しばらくはフォレストに滞在する事にはなるから、彼とは顔を合わせる機会もあるだろうし、ハリルベルとの進展も気になる所だ。


 封印教団との出会いを終え、僕らは貿易品を納品するためにアルベルタ商会を目指し馬車を走らせた。

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