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[ 051 ] ウォームアップ

「揃ったようじゃな」


 肩を貸してもらいながら、最後に親方がやってきた。僕が回復魔法を使えば一瞬で治るのに、マスターの視線はそれを許さなかった。


「まずは情報の確認じゃ」


 マスターの話によると、リーラヴァイパーというのは、小型の蛇のモンスターらしい。小型と言っても子犬くらいのサイズはあるし、とにかく好戦的でなんでも噛み付くとの事。


「毒を飛ばしてくることはありますか?」

「いや、基本的には噛んだ時に牙から出るため、飛ばしてくることはないんじゃ。離れて戦えば問題ないの」

「わかりました。基本的に戦闘は全て砂の兵士に任せて、僕らは後ろからついて行くだけにします」

「うむ」


 僕の装備は、宝剣カルネオールとレッドポーション一つ。もう一つのポーションはクルトさんに持ってもらった。


「リーラヴァイパーの全滅が目的だが、急ぐ必要は無い。危ないと思ったらいつでも帰ってくれば良い」

「俺がここで待機してるから、お前らが戻ってきたらすぐに入り口を封鎖しよう」


 そういえば、毒ってどんな毒なんだろう。

 ゲームでよくある解毒薬は無いのかな。


「あのマスター。リーラヴァイパーの毒を治すような、解毒薬は……」

「解毒薬? そんなものはないのぉ」

「え、無い?!」

「リーラヴァイパーのやっかいなところは、毒だと言ったじゃろ。奴らは体内であらゆる毒を作り出してくる」

「俺が知ってるだけでも、神経毒や麻痺毒、無機物を溶かす酸毒、十種類近い色んな毒を出すから、全ての毒に効く万能な薬なんかないんだ」


 後ろを見ると、ハリルベルとクルトは目が泳いでいる。やべーどうしようと、心の声が聞こえた。


「リーラヴァイパーは知能が低い。ゆえに、俺もさっき噛まれたがすぐに引き剥がせば、毒は喰らわない。砂の兵士に先行させれば、まず攻撃を喰らうことはないだろう」

「わ、わかりました」


 思ってたより危険なクエストだったかもしれない。安易に練度が上げられる、金貨が貰えると喜んでる場合じゃない……。


「もし、毒を喰らったら?」

「毒の抵抗が体内で作られるまで、レッドポーションがぶのみ借金地獄コースじゃな」


 金貨一枚では、割に合わない気がしてきた……。


「リーラヴァイパーは、朝になると活動が活発になるから討伐するなら夜しかない。準備しろ」


「フェルスアルトファーラー」

「ジオグランツ」


 砂の兵士が剣を持ち、二番坑道の入り口で待機する。


「いつでも行けます!」


 クルトさんの声で、親方が魔法を発動させた。


「フェルスアルトファーラー・オルト!」


 親方の土魔法で、入り口を覆っていた無数の岩がどかされると、月明かりに誘われて三匹のリーラヴァイパーが飛び出した。


 見た目は子犬くらいだが、紫色の体に白いラインが引いてあり、異様に発達した大きめの頭に凶悪な牙を持っていた。思ったより動きが素早い。


 やはり知能は低いのか、三匹とも一番前にいた砂の兵士へ襲いかかった。一匹は跳躍中に斬り伏せ、もう二匹が砂の兵士の足に噛み付いたが、もちろんダメージは無い。そのまま上から剣を突き刺すと、呆気なく絶命し三匹は魔石へと変わった。


「ふぅ……なんとかいけそうだね」

「そうですね。いまの感じなら危なげなく倒せそうです」

「うむ、その調子なら夜明けまでには駆除が終わるだろう。決して無理はするんじゃないぞ?」


「「「はいっ!」」」


 マスターは、親方と入り口で見張り番をしてくれるようだ。いつ帰ってきてもすぐに入り口を塞げるようにとの事らしい。


 こうしてクルトさんを筆頭に、ハリルベルと二番坑道をゆっくり歩み始めた。

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