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[ 043 ] 試食会・前半

 リュカさんのところで時間を使うと思い配分していたが、思ったより早く終わった為、レストランには一時間前に着いてしまった。


 この世界の住人は結構アバウトなので、基本的に数十分の遅刻は何も気にしないが、一応相手は商社マンなので早めにレストランを訪ねる事にした。


「申し訳ありません。本日は臨時休業となっております」


 ドアをノックしてしばらくすると、やや疲れの見える高齢男性の声が返ってきた。


「ロイエと申します。ナルリッチさんのご紹介で試作品の確認に来ました」


 カチャと心地よい音を出して、レストランのドアが開かれた。ドアの先には、背の高いコック帽を乗せた白髭の男性が顔を覗かせる。


「おお、お待ちしておりました。私、コック長のエッセンと申します」

「予定より早いですが大丈夫でしょうか?」

「逆に助かりました! 迷走しておりまして助言が欲しかったのです!」


 まさか昨日から寝ていないのだろうか、シェフの目には酷い隈が出来ており、疲労の度合いが見て取れる。握手をされた後、僕は厨房へと案内された。


「現在の状況を見てください」


 巨大なテーブルには、いろんな色や形の様々なたこ焼きが並べられている。


「オーナーも時間の無い方ですから、お出しする試作品は最大三つまでと執事の方に言われておりまして」


「二十個くらいありますね……」

「はい、二十三種類あります。どれが理想に近いのかロイエ殿に先に試食して頂けると……」


「わかりました。オーナーが来るまで時間がありますし、絞りましょうか」


「是非っ!」


 番号順にたこ焼きを食べて採点していく。なるほど、味を言葉で伝えるのが一番難しかったみたいだ。それぞれ全く違う味になっている。


「ちなみに、タコヤキは形を丸くするのが難しいのなんの……とてもではありませんが、屋台という限られたスペースと道具の中で素人が作るのは難しいかと思われます」


 しまった……。たこ焼き機の事を言うの忘れてた。


「ごめんなさい。僕が伝え忘れておりました。鉄板に凹みを作り、そこへ材料を乗せるだけで丸くするのです」

「なんと……! 逆の発想ですな。器具の方を凹ますとは……なるほど」


 もしかして無駄な努力させちゃったかなと、申し訳なさで一杯になった。


「丸くさせる方法は、然程重要ではないかと思い、味や食感に時間を割きましたのでご心配無用です」


 長年シェフをやってると、人の気持ちが見えるようだ。シェフのその一言に少し気が軽くなった。


「味はこちらの八番、十四番、二十番。食感は二番と八番が近いですね」

「なるほど……組み合わせたものを作り直しますので、少々お待ちください」


 何度かの試作を作り、これだと思う二品まで絞り、オリジナルのソースも何種類か作った。なおタコがこの世界に居ないのか伝わらなかったので、予算的に安くてタンパク質の取れる低品質のニクを入れてある。


「たこ焼きはこの辺で良さそうですね」

「ええ、本当に助かりました」


 うぷ。もう結構お腹いっぱいだぞ……。僕の思いが通じたのか運ばれてきた焼きそばは、二種類だけだった。


「ヤキソバに関しては、ヌーデルンが近いと思いましたので、当初指示して頂いた通りこねる際に卵を抜く事で、コストを下げ雑な感じの味を表現しました」


 見た目は結構焼きそばしてる。どうしても前世とはソースの味が違うがこれはこれで……。


「おいしいですね! 特に二番が」

「一応こちらはオーナーに二種類出してみたいと思いますが、二番がオススメとのこと、承りました」


 こうして試食会の前半戦が終了した。あとはナルリッチさんの判定を待つばかりだ。


 オーナーが来るまでは、エッセンさんが昔は孤児でナルリッチさんに拾ってもらった話を聞いた。今回の露店作りで貧困層に助けの手が出せると聞き、嬉しくて頑張ったとの事だった。

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