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[ 042 ] 中央地区Cエリア

 ロゼと二人で中央地区Cエリアに入ると、僕は驚きのあまり、身動きが取れなくなった。


 それもそのはず……Cエリアの中央には分厚いフェンスの中に、五メートルはある赤い巨石が鎮座していたのだ。


「すごい……。ロゼ、この赤い石は何?」

「フィクスブルート。世界各地にある謎の赤い巨石よ」


 ロゼに聞いたつもりが、右にいるロゼからではなく左側から聞こえてきた。


「エルツ!」

「ロイたん! ぜんぜんお店に来てくれないじゃない! 毎日待ってたんだけどー?!」


 むぎゅっと胸を押し付けながら抱きついてくるエルツを、鬼のような顔をしたロゼが引き離した。


「貴方、わたくしの未来の旦那様に何をしてらっしゃるのかしら?」


 ロ、ロゼが……怖い!


「二人ともおちついて?」

「ロイたん……この女だれ? 未来の旦那様?」

「貴方こそ誰ですか? わたくしのロイエさんの名前を気安く呼ばないでくださいます?」

「はぁー?」


 出会ってはいけない二人が出会ってしまった……。どうしよう……。もうヤケクソだっ!


「い、一度……女の子を二人連れて歩いてみたかったんだよなぁ」


 一瞬二人がキョトンとしたあと、エルツが吹き出した。


「もぉー、ロイたんがやりたいなら仕方ないなー!」

「ロイエさん、わたくしはわかっております。貴方はなんて心が広いのでしょうか」


 こうして、一触即発の自体は回避されたけど、僕を挟んで不毛な論争はなおも繰り広げられている。


「ちょっと! 胸がロイエさんに当たってますわよ?!」

「当ててんのよー。貧相な胸のあんたには出来ないかもしれないけどねぇ」

「ななな、なんですって?!」


 嬉し恥ずかし、両腕に柔らかい天国のような感触を味わったまま、Cエリアの観光は続いた。


「えーと。エルツ、このフィクスブルートってのはどんな巨石なの?」

「んー、さっきも言ったけど謎なのよ。いつからあるのか誰も知らないの」

「あ、わたくし……ひいお爺様から遥か昔は、この巨石を村人全員で触って、平和と無病息災を祈ったと聞いていますわ」

「いまはやってないの?」

「この巨石は、数百年前に国から天然記念物に指定され、接触を禁止されてますの」


 フィクスブルート……。誰がなんのために設置したのか、何の意味があるのか。それは誰にもわからないらしい。ただ、ほぼ同じ物が世界の各地に点在しているという事だけ。


 三人で街を練り歩いたけど、両手に花の状態で求人情報を見るのは流石にカッコ悪く、遠目にちらっと見た感じやはりCエリアに高額バイトの募集は無さそうだ。


 そろそろナルリッチさんと約束した時間も近くなった事もあり、三人でBエリアのレストランの近くまでやってた。


「見て! アクセサリーの露天だー」

「はまってる石はガラスですが、デザインはなかなか良いですわね」


 やはり二人とも女の子だからか、アクセサリーは好きみたい。僕はこっそり二人に似合うイヤリングを買って、それぞれに手渡した。


「わぁ可愛い……ロイたんありがとう。ちゅ」

「なななな! ズルイです! わたくしだって! ちゅ」


 僕は二人から頬へお礼のキス貰うと、二人とも満足そうに帰っていった。


「ロイたんありがとー! 一生大事にするねー!」

「結婚式まで取っでおぎまず!」


 ロゼに至ってはなぜか感極まって泣いていた。


 二人を見送った後、僕は中央広場に向き直りヘクセライ魔法研究所の臨時出張屋の中へと入った。

 

「こんにちは。リュカさんいますか?」


 露店の中には昨日と同じく、金髪を後ろで結った白衣姿のリュカさんが何やら事務処理をしていた。


「リュカは私ですが、どうされました?」

「あれ、僕のこと覚えてませんか?」

「いえ、お会いするのは初めですが……?」


 おや? もしかして、昨日は酔っ払ってて覚えてないのかな?! 淡い期待が胸を過ぎる。


「あのー。知り合いが昨日の夕方にリュカさんに診察してもらったって、聞いて何か覚えてますか?」

「昨日? 夕方? うーん、なんかちょっと珍しい……重力魔法の患者さんがいたような、いなかったような。それがどうかしました?」

「あ、いや覚えてないならいいんです! じゃ!」

「??」


 リュカさんに挨拶をすると、そそくさと露店からでた。


 やったぁ! そうか。重力魔法を覚えたから更新されて一ページ目が重力魔法になってたのかもしれない。回復魔力回路持ちってバレて無かったのか――よかったぁ。心配掛けさせちゃったし、後でフィーアにも言っておかなくちゃ。


 僕は浮かれ気分でスキップすると、ナルリッチさんのレストランへと急いだ。

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