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[ 032 ] 雷

 死んだ……そう覚悟していた。


 しかし、地面へ向かって落下する僕を、突如……柔らかい水が優しく包み込んだ。


「こ、これは……」


 目を開けると僕は、どこからか現れた水の中にいた。


「おーい、ロイエ君。大丈夫かね?」


 聞き慣れたその声の方を向くと、ギルドマスターが水を蛇のように操り、僕の元へ飛ばしてくれていた。


「ほっほっ、なかなか無茶をしよるわい。その様子だと重力魔法の解放に成功したようじゃな」


 マスターから僕に対して伸びている水の蛇が、テトにも伸びている。テトが水の蛇で回収されたのを確認すると、僕はウォータースライダーのようにマスターの元へ滑り降りた。


 すぐにテトも、マスターの元に流されてきたので僕が受け止めた。テトはお腹を攻撃された時に気絶したらしく、眠っているが怪我はしていないようだ。


「テト……よかった」


「すまんな。服はビチャビチャになってしまうのが、わしの魔法の欠点じゃ」

「いえ、助かりました……本当に死ぬところだったので」


 テトをギルドの軒下に寝かせると、ハリルベルとフィーアがギルドへ来てくれた。


「ロイエー! 大丈夫かー!」

「私のせいじゃないですよね? どうなっても知らないって言いましたよねー?!」

「二人ともありがとう。お陰様であの子を救えたよ」


 お礼を言うと、二人は照れくさそうに笑ってくれた。


「ギャーォオオオオンッ!」

「ギュルルルルゥオオッ!」


 リンドブルム達が街の上空を旋回して警戒している。僕が宝剣で腹を刺したリンドブルムが落ちた方を見ると、キーゼル採掘所の近くで動かないようだ。


「まだ七匹もいます! 早く倒さないと!」

「大丈夫じゃ、そろそろ来る頃じゃろう」

「誰が来るんですか?」

「ほれ、噂をすれば」


 パシン!と落雷が落ちたのかと思ったら、いつの間にか黒いマントに黒いフードを被った男が立っていた。


「おい、ここはどこだ」

「ミアさん!」

「む? あの時の少年か」

「ミア、早いとこ頼む。うるさくてかなわん」

「あいつらか……わかった」


 ミアは信じがたい身体能力で、ぴょんギルドの屋根へ飛び乗ると、腕を空に伸ばして魔力を練る。パリパリとミアを中心に放電現象が起き始めた。


「アダサーベン・オルト・ヴェルト」


 瞬間……雷が落ちたかと思うほどの無数の閃光が、上空を旋回するリンドブルムの群れを襲った。


 空が稲妻のように光り、遅れて爆音と振動が到着。その場にいた全員が反射的に頭を下げて衝撃が通り過ぎるのをただ耐えるしか無かった。


「標的を倒した。任務完了」


 いつのまにかギルドの屋根から降りてきてミアが、何食わぬ顔で立っていた。


 空を見上げると、鳴き声を発するまもなく丸焦げになり空から落ちてくる七匹のリンドブルムが視界に入った。


「すごすぎる……」

「ミアは、数人しかいないSランク冒険者じゃからの」

「え! ミアさんSランクだったんですか?」

「うむ。Sランクになると各国から依頼が来るから常に移動しなきゃいけないのが、少しめんどいがな」

「ミアの場合すぐに迷子になるからじゃろ」

「なぜ、道を間違えるのか俺にもわからん……」


 リンドブルムの討伐完了にホッと胸を撫で下ろしていると、後ろでハリルベルとフィーアがまだガタガタと震えて涙目になっている。様子がおかしいのでよく見ると、二人のすぐ近くの地面に焦げた後があった。


「ふむ。一発ミスったか、すまん」

「死ぬかと思いましたよ!」

「殺す気ですか!」

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