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[ 237 ] 不可避の決意

「なるほどな。つまり調査班が王を裏切り、護衛班や監査班はこの地でドンパチする予定なのか、まったく身勝手な……。王都でやれ王都で」


 確かにヘクセライの所長であるカノーネからしたら、知ったこっちゃない話だ。騎士団同士の内紛に巻き込まれると聞いて黙ってはいられないだろう。


「で、冒険者ギルドも、これを機に王を討とうとこっそり王都へ潜入ってわけか。確かに、これはボク達にとっても好機ではあるな」


 彼らヘクセライの研究者は「自由な研究」を掲げ、回復魔法の研究を禁止されたことに対抗して、回復解放軍なる裏の組織を作ったほどだ。王を討ちこの政権が崩壊するのは、願ってもない事だろう。


「回復解放軍も協力してもらえると助かるのですけど」

「そうだな。協力することには問題ない」


 やった。彼らの協力があればここを拠点にして王都へ攻めることが出来る。食糧などの補給拠点として最高の立地だ。


「ただし、分が悪い」

「と、言うと……?」

「戦力としては五分五分といったところだろうが、向こうは回復術師を多数確保している。しかし、こちらはロイエとマローネ、二人だけだ。長期戦になったら我らに勝ち目はないだろう」

「レッドポーションを多数用意するとか……」

「人数分揃える金銭的余力はないし、集めたとしても有限だ。もう一度言うが、奴らは多数の回復術師がいて、かつ練度が高いのだぞ。高練度の回復術師一人がレッドポーション何人分になるかなど、貴様ならわかるだろう」


 確かに僕が一人いれば、レッドポーション100個や200個分の働きは楽に出来る。輸送などを考えても、レッドポーションを用意することはあまり意味がない。


「どうすれば協力していただけますか?」

「簡単な話だ。貴様が練度をあげ、味方を不死のごとく回復させることが出来るなら、我らも参戦しようじゃないか」


 そういうことか。カノーネとリュカさんの考案した僕の強制練度上げ作戦、それを僕にやれということか。僕が断るだろうことは彼も承知だったということだ。


「良いか? 王族は不老不死を得るため、500年近く実験を繰り返しているが、いまだに成功していない」


 ハリルベルから聞いた話でも、500年ほど前から回復術師狩りをしていると聞いていたが、本当にそんな前からそんなことをしていたのか。当時の王だって死んでいるだろうに。


「そして一説によると、回復術師が練度★10になると不老不死になるらしいが、現状を見る限り、奴らは練度★10の回復術師の確保には至っていないことになる」

「え……回復術師が練度★10になると不老不死に、なるんですか?」

「あくまで噂だ、なった者はいないからわからぬが、可能性としては高い」


 なら王族は回復術師を捕まえて練度★10にして、ミルトやピヨのように魔力回路の移植をしようしているのか?


「ならばロイエ、君が先に練度★10になれば話は早い、奴らに何人の回復術師がいようが不老不死になった君がいれば絶対に負けることはない」


 確かに理屈ではそうだけど、そんな簡単な話ではない気がする。しかし彼らの協力がなければロートやグロッサのような王冠クラスが出た場合、僕らは全滅しかねない。なぜなら回復魔法は万能では無いからだ。このまま黙って皆殺しにされるか、覚悟を決めて王を討つか……。


「忘れるな、こうしている間にも君の両親は死と隣り合わせで頑張っていることを」

「僕に選択肢はない、ということですね」

「察しが良くて助かるよ。準備は我々が行う、君は弱ったボスモンスターにとどめを刺して白い魔石を飲んでくれればよい、簡単な話だ。深く考えるな」


 この作戦の唯一の欠点は、この星にダメージを与えてしまうということだ。それが今後どういう結果をもたらすか誰にもわからない。


 しかし、もたもたしていたらここが戦場になり、奴らにヘクセライのフィクスブルートから星の魔力を奪われるのは容易に想像できる。ならば先に手を打った方が良いのも確かだ。


 救うべきはみんなであって、手助けができるのが僕しかいないなら、やるしかない。僕はもう誰も見捨てないと決めたんだ。僕は、僕のやるべきことをやる。


「……わかりました。練度上げの準備をお願いします」

「よし、すぐに準備にかかれ!」


こうして僕の練度をあげるため、大規模な作戦が開始された。

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