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[ 235 ] 家族の行方

 リュカさんと部屋を出ると、僕らは階段を登って5階の大きな扉の前に来た。本当はエレベーターみたいな装置があったけど、重い荷物の為の装置らしい。


「ちなみに、先ほどの作戦を考えたのは私と所長なので、所長にも中止の意思をロイエさんの口から伝えてもらえますか?」

「わかりました」


 ヘクセライの魔法研究所をまとめる所長か。実質このヘクセライの市長的な立場にいる人物となると、どんな人なのだろうか。


「所長、ロイエさんをお連れしました」


 コンコンとノックすると部屋の中から「どうぞ」と返事が返ってきた。これだけの技術力を持つ街を統括しているなら、きっとマスターみたいな初老の男性だろうか。


 ガコン


 見た目よりもドアは薄く、女性でも軽く開けられるような作りだ。そういえば、この魔法研究所の中はやたらと女性が多い気がする。そういう土地柄なのだろうか。


 やや薄暗い室内に入ると、2人の人物がいた。手前にいるのは頬に小ジワが目立ってきている40代くらいの女性で、薄い水色のロングヘアーに白いワンピースをベージュのカーディガンを羽織っている。研究者という感じではないが秘書というわけでもなさそう。


 もう1人は、書類が山のように積まれた机の中で何やら忙しそうにハンコを押してる。一歩進むよりも早く、僕は中年の女性の次の一言で凍りついた。


「ふふ、本当リリアにそっくりね」

「え……。ど、どうしてその名を」

「リリアから話は聞いているわ。さぁいらっしゃい」


 僕はしばらく足がすくんで動けなくなった。なぜ彼女は、母の名前を知っているのだ。僕は母の名前について誰にも言ってない。それこそハリルベルにすら言ってないのだ。この女性どこで母の名を……。


 一歩また一歩と、はやる気持ちを押さながら、僕は言われるままに部屋の中へと入った。


「やぁ、ロイエ君。ようこそ魔法研究所へ」


 パッと部屋の明かりが灯ると、書類の山から顔を出したのはメガネをかけた若い青年だった。彼は黒い髪に切れ長の青い瞳、白衣という研究者のような出立だった。


「ボクはこの魔法研究所の所長を務めるカノーネだ。よろしく」


 驚いた。ヘクセライを統括する人物だから絶対年配の方だと思ったのに、実際にはハリルベルくらいの歳の青年だった。


「ロイエです。初めまして」

「話は聞いている。さぁ、そこに座ってくれ」

「まず、君が今疑問に思ってることについて回答しよう」


 そういうと、カノーネは隣にいた中年の女性に向いて合図を送った。


「初めましてロイエちゃん。私はマローネといいます。王都の研究所で捕まっているところを、カノーネさんの配下の部隊に助けていただいたの。回復術師よ」

「やはり、あなたがマローネさんでしたが、それでなぜ母の名を?」

「リリアとは、ずっと同じ独房に閉じ込められていました」


 母が……王都の研究所に?! やっと掴んだ情報に僕は思わず立ち上がった。ずっと痕跡を探していた家族の情報がやっと……。思わず涙がこぼれた。


「結論から言いますと、ロイエ君の父ファーターさんと、母リリアは2人とも王都の研究所にいます」

「え? 父も……ですか?」


 2人とも行方不明だとは聞いていたが、まさか2人揃って王都にいるとは……、これで僕が王都へ向かう最大の理由ができた。


「2人は無事なんですか?!」

「私が脱出した時点では、2人とも生きていたけど……もう2年ほど前のことだから」


 確かアクアリウムで父の消息が確認されたのが今から4年前って話だったな。その頃アクアリウムで騎士団に捕まって、王都に連れてこられてマローネさんと王都の研究所で会ったのか……。流れが見えてきた。


「母とは同じ独房と言いましたが、父とは一緒じゃなかったんですか?」

「それには順を追って説明するわ。ロイエ、あなたの母も回復術師なのよ」

「え、母が?」


 驚いた。僕も回復術師だから、可能性はあるけどまさかそれが原因で母まで捕まったのか……。


 マローネから明かされる真実に僕は只々感謝した。

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