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[ 226 ] 飛空挺もどき

「ぬぉおおおお! なんじゃぁああー!」


 テトラさんが発射台を生成するタイミングと、シルフィの風魔法を放ったタイミングが完璧すぎた。140メートルほどある船はグングンと加速して、雲を突き抜けた。


 船が空を飛んだことで、船長が腰を抜かし、海の男達も恐怖で顔が引き攣りながら必死に船体へしがみついている。


「しばらく我慢してください!」


 船はグングンと高度を上げて雲の上まで到達すると、船体に突き刺さっていたホルツガルネーレも、ボトボトと海へ落ちていった。


 そろそろ上昇を止めたほうがいい。僕はシルフィへ停止の指示を送った。


「シルフィさん! 風魔法は一度止めてくださーい!」


 声を張ってマストに登ってるシルフィに指示を出すと、なんとか聞こえたのかシルフィが手を上げた。


 次第に速度は弱まり船は空に停泊すると、海の男たちは緊張から解放され、甲板で大の字になって倒れた。


「し、死ぬかと思った……」

「船乗りを空に飛ばすたぁ……」

「俺は死ぬ時は海の中って決めてんだ!」


 船乗りは口々に文句を垂れている。しかし、あのまま海を航海していたら確実に沈没していた。


「ふえー、楽しかったぁ!」

「テトラさんありがとうございます。タイミングバッチリでした」

「ふふん、もっと褒めなさい」

「はぁ、こいつといると色々起きるが、さすがに船で空を飛ぶのはビビったぞ」


 店長はどうやら高いところが苦手らしく、なぜかテトラさんの背中にしがみついている。


「ちょっと! 離れてよ!」

「ば、ばか! やめろ! 落ちるだろ!」


 二人でやり合ってるとロゼが話しかけてきた。ロゼも空は苦手らしく、僕の手を力強く握っている。


「ロイエさん、空に逃げたのはいいですけど、どうします?」


 風魔法を止めた事で船は安定しており、ふわふわと宙を浮いている。いや、風の影響でわ少しばかり流されてはいるか。


「そうだね。このままヘクセライを目指したいところだけど……」

「ったく、まさか俺様の船を浮かすとは……」


 まだ足がガクガクと震えながら店長が、手すりに捕まりながら立ち上がった。


「船長、大丈夫ですか?」

「ああ、問題ねぇ……それよりも、すげぇな」

「船の重力コントロールは、ピラートにも協力してもらってますけどね」


 僕の重力魔法の限界が120メートル程度までだ。この船は恐らく140メートル近くあるため、船首か船尾のどちらか一方が重いままだと、そのまま沈む可能性が高かった。ピラートがいなかったらどうなっていたか。


「いつもホルツガルネーレはあんなに襲ってくるんですか?」

「いや、あんなのは初めてだ。あってもたまたまぶつかる程度なんだがな……」


 各地のフィクスブルートから魔力が抜かれてる影響で自然発生したモンスターも凶暴化しているのかもしれない。


「船長、このまま空を飛んでヘクセライを目指すのはどうでしょうか?」

「そうだな。さっきの襲撃で船底に穴が空いちまったからな、いま海に入るとそのまま沈むな……」

「ですよね。ならこのまま空を飛んで行きましょう」

「ああ、ただ着地方法とか魔力とか大丈夫なのか?」

「それは問題ないと思いますけど……」


 僕の魔力は問題ないからそう言ったが、直後にハリルベルが声をあげて走ってきた。


「ロイエー! ピラートが魔力切れそうって言ってるぞー! どうする?!」


  まずい……。いま船尾だけ重くなると船首が上を向いてそのまま落ちる……。なんとしてもピラートには魔法を継続してもらわないといけない。


 僕はポーチから小瓶に入ったブルーポーションを、取り出した。買うタイミングがなくてこれが最後の一個だ。


「ハリルベル、このブルーポーションをピラートに飲ませてきて、このまま飛んでヘクセライを目指そう」

「わかった!」


 船が安定すれば、後はこのままヘクセライを目指すだけだ。ピラートの魔力が切れる前にさっさと進もう。


「船長! ピラートの魔力が心配です。進む方向の確認と指示をお願いします!」

「任せろ! 海の上だろが空の上だろうが、船の上なら俺様の出番だ!」


 船長は、海図と海を確認して望遠鏡を覗くと、現在地と方向を割り出した。


「西北西へ舵を取れ!」


 船長の指示でマストにいるシルフィへ方向が伝えられると、船は朝日を受けながらヘクセライの方角へ向けて空を飛んだ。

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