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[ 208 ] たこ焼き

「クルトさん、さっきの仮面の女性……。魔法の属性って何です?」

「うーん、人にホイホイと教えていいのかな」

「実は……」


 僕はハイネル村が何者かに襲撃されたこと、村長がいまも意識不明の重体である事を伝えた。


「え? まじ? 何も情報来てないけど……」

「襲われた直後だったようで、まだ僕らしか情報を掴んでないと思います」

「あ、昨日アテルさんが市長のところに挨拶に行くと言ってましたので、市長には伝わってると思います」


 なら今日中にはクルトさんのところにも、市長から情報が降りてくるだろう。


「ハイネル村は、水魔法で押し潰されていました。村人も溺死していたので、間違いないと思います」

「それで、新しくこの街に入った冒険者を疑ってるのか。それなら仕方ないか……。えっとね、ゼクトさんの属性は風で、うるさかったテトラは、雷だよ」


 風に雷か……。なら違う。犯人は水属性だ。押し潰すだけなら重力でも出来るが、村人は溺死していた。


「なら二人は容疑者から外れますね」

「うん、ゼクトさんは寡黙であの見た目だけど、本当に仕事は丁寧だよ。最近街の付近にブラオヴォルフが出るんだけど、迅速に倒してくれたからね」

「S級を鼻にかけてない人……ってことですね」

「うん、そんな感じ」

「テトラさんは?」

「あの子は仕事に意欲的なんだけど、頭が悪いというか……よくやらかすんだよね。こないだもナルリッチさんが新作の試食会として依頼を出したんだけど、感想がおいしい!しかなかったり」


 それは何の役にも立たないな……。

 それにしても新作か……。西側のたこ焼き屋がどうなったのか後で見に行ってみよう。


「まぁ二人とも悪い人じゃないから」

「わかりました。僕らはヘクセライへ向かう途中なんですけど、船の用意などあるので、しばらくナッシュにいると思います」

「そっか。何かあったら言ってくれ力になるよ」

「ありがとうございます」


 とりあえずゼクトとテトラの二人が活躍してくれてるおかげで、いまは緊急の依頼がないらしく、僕らは特に依頼は受けずにギルドを後にした。


「さてどうするか」

「たこ焼き屋ってすぐ近くだよね。お腹空いたから行きたいな」

「そうですわね。すぐそこですわ」


 ギルドがそもそも西側にあるから、ナルリッチさんの展開してるたこ焼き屋は歩いてすぐの場所だった。


「わぁ、良い匂い……」


 良い匂いだけど、僕の知ってるたこ焼きの匂いとはやはり少し違う。店長のソースがあれば絶対美味しくなるのに。


「一つ買いましょう」


 ロゼが屋台の前に立つと、聞いたことのある声が届いた。


「へいらっしゃい! 何個でしょうか?!」

「……店長、何してるんですか」

「あ? 噂のたこ焼きを焼いてんだよ!」


 相変わらずフットワークの軽い人だ……。既にたこ焼き屋でバイトしてるとは……。


「このたこ焼きやべーな! いやぁ来てよかったぜ!」

「よ、喜んで頂いて何よりです」

「今焼いてるから待ってろよー!」


 見るとレストランで試作した時より、味のバリエーションが圧倒的に増えている。その中でも一番の売れ筋が……。


「リッカム味。これはナルリッチさんが強引に入れたな」

「それもなかなか美味いぜ!」

「あの、店長のソースはまだ使ってないんですか?」

「あ? ああ、まだ焼き方を完璧にマスターしてないからな。100%理解してないのに、勝手に手を入れるなんて失礼なこと出来るかよ」


 変なところで律儀なんだな。いつもはハチャメチャなのに……。


「そういえば、ナルリッチさんとは……」

「話は昨日つけた。でな、今日の夕方から試食会を開くから、そこで俺のソースをお披露目ってわけさ」

「僕らも行っていいですか?」

「おう! 試食会は人が多いほど良いしな。ナルリッチさんもロイエに会いたがってたぜ」

「わかりました。Bエリアのレストランですよね?」

「うむ。ほれ、たこ焼き焼けたぞ。三人分な」


 リッカムソースをかけて渡されると、僕らは屋台の側に設置されたベンチに座って頬張った。


 一口食べるだけで、リッカムの酸味が鼻を抜け、出汁の効いた味が味覚を刺激した。コック長のエッセンさんが作った時よりさらに美味しいものになったいる。


「おいしい!」

「美味っ!」

「はふはふ、おいひいです」

「だろー? 俺が焼いてるからな!」


 焼きそばも売っていたのでそっちも頼もうとしたら、店長からそれはまだ極めてないからダメだ!今度にしろと止められた。


 たこ焼きを食べ終えて店長に別れを告げると、僕らはキーゼル採掘場に向かって、階段を登り始めた。

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