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[ 020 ] 体力測定試験の結果

 困った。冒険者試験、不合格……。明日食べるご飯もお金もないのにどうしよう。 ハリルベルも貸せるお金がないと言ってたし。エルツに借りるしか……。


 明日からの事を考えてどん底な気持ちになっていると、ヒゲモジャマスターから「待った」がかかった。


「これこれ。フィーアちゃん。ロイエ君は合格じゃよ?」

「はい? ついにボケましたか? マスター」

「いやいやいや。フィーアちゃんには見えんかね。ほれ、これで見てみい。キーゼル採掘所のチョークはどうなっとるかね?」


 マスターから双眼鏡を奪い取るとフィーアは、あああああ!と奇声を発した。


「私の赤のチョークが付いてない……」

「言ったじゃろ。チョークをつけないで戻ってきたら失格と。つまり、フィーアちゃんの失格で、ロイエ君の繰り上がり勝利じゃ」


 おめでとう、と言いながらマスターが僕の手を握って握手してくれた。く、繰り上がり合格……?!


「くぅうう! せっかくお金をむしり取れるチャンスだったのに! マスターも言わなきゃいいじゃ無いですか!」

「不正はいかんよ。不正は」

「はぁ……仕方ないですね。ロイエ君の風魔法もなかなかでしたよ」


 え、風魔法なんて使ってない……。けど、それを言うとならなんの属性持ちなんですか? と言われてしまう……。どうしよう、それに次の属性適正試験もどうやって乗り切れば……。

 

 素直に喜んで良いのか悩んでいると、目の前に二つの丸い柔らかいものが押し付けられた。


「さすがロイたん! カッコよかったよ! さすが私の彼氏!」


 むぎゅむぎゅと巻き締められて身動きが取れない。エルツは見た目よりも力が強く、本気で息ができない……。


「や、やりすぎです!」


 ぐいっとエルツを引き剥がしたところに。


「何ふがふがしてるんですかこの変態! 姉様から離れてください!」


 フィーアの容赦ない蹴りが僕の脇腹に炸裂し、僕はギルドの外に出してあった空箱置き場まで、ぶっ飛ばされた。


「姉様どういうことですの? 彼氏だなんて、親方は知ってらっしゃるんですか?」

「あー、ごめんごめん。冗談だよジョーダン」

「なんだー、ビックリしてしまいました」


 バレないように回復魔法を施して、なんとか箱から抜け出そうと格闘していると、誰かの声が遠くから届いた。


「エルツさん!」


 顔を上げると頭に鉢巻を巻いて、紫色の髪をした背の高い好青年が、息を切らせて走ってきた。


「ああ、リーベ。どした?」

「どした? じゃないですよ! 買い出しに行かせておいて店に戻ったらいないんですもん! 仕込み手伝ってくださいよ!」

「いっけねー。忘れてた。あはは」

「あはは。じゃないっすよ! 早く!」

「わかったわかった。ごめん、ロイたんそういうわけだから、また今度ねぇ」


 散らかした箱を片付けていると、さよならの挨拶をする間もなく、エルツは走って行ってしまった。


「ああ、お姉様……しくしく」


 フィーアが悲しみにくれる中、マスターが何か小型の装置のようなものを持ってギルドから出てきた。


「それじゃあ、落ち着いたところで属性適正試験を始めようかね」

「むー、私はエル姉様に抱きついた事、まだ許してないんですが……?」

「ご、ごめんなさい、もうしません……」


 僕からやったんじゃないのに……。フィーアは納得してない顔をしているが、これ以上攻めても仕方ないとおもったらしく試験を続けてくれた。


「では説明しますね。属性適正試験は、マスターの持ってる属性測定器を使った測定となります。測るだけなのですぐに終わります」


 あ、あれは見たことがある。産まれた時に父さんが僕の額に当てた物だ。属性測定器だったのか……。


「そ、それでどうやって測って、どうなれば合格なんですか?」

「それは、わしが説明しようかね」


 マスターが属性測定器のスイッチを入れると、フィーアのおでこに当てがった。


「ほれ、これを見てみい」


 見せてもらった測定器には、いくつかの文字が並んでいた。


『風属性、短距離系、練度★三、適正★三』


 なるほど。こうやって調べる事が出来るのか。この距離に関しては ハリルベルに聞いたからわかるけど、その他の単語は初めて見た。


「あの、練度というのは?」

「それは魔法を使い込んだ回数みたいなものじゃな。イメージとしては魔力回路は最初はデコボコしておるんじゃが、使えば使うほど魔力回路は滑らかに太くなっていき、効率が格段に良くなるんじゃよ」


 なるほど。捕まっている間、一日に回復出来る人数がどんどん増えていったのは練度が上がっていったからなのか……。


「では、この適性というのは?」

「なんも知らんのぉ? まぁよかろう。適性はその者の持つ壁というか、成長限界じゃな」

「ということは……フィーアは成長限界?」


 背後に殺気を感じた……。慌てて右へ体を捻ったのと同時に、僕がいた場所に強烈な蹴りが振り下ろされる。


「誰の胸が成長限界ですって?!」

「言ってない! 言ってません!」


 フィーアから邪悪なオーラが立ち上る……。


「ちなみに合格基準は、練度★三じゃ。回復術師が世の中にいなくなってから、低練度の冒険者の死亡率が上がったんでな、年々基準が高くなってるんじゃよ」


 確かにフィーアくらいの体術や魔法力が無いとブラオヴォルフから逃げることも出来ないだろう。


「さっさと計りましょ」


 ど、どうしよう。回復術師だとバレちゃう……。

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